プレゼンティーイズムの深層　〜治療・介護・育児が引き起こす現場の課題と具体的な事例を考える〜

プレゼンティーイズムの問題を深く掘り下げるために、治療、介護、育児に関連する具体的なケースを紹介しながら、各課題について考えてみました。

1. 治療とプレゼンティーイズムの課題

◇病気の影響とパフォーマンス低下
（具体的なケース）
 ある従業員が慢性的な腰痛を抱えており、定期的な治療とリハビリが必要です。しかし、この従業員はプロジェクトの納期が迫っているため、休むことができず、痛みを堪えながら仕事を続けています。その結果、集中力が低下し、細かいミスが頻発するようになり、業務の進行が遅れるという悪循環に陥っています。

◇長期的な健康悪化のリスク
（具体的なケース）
高血圧と診断された従業員が、仕事の忙しさから医師の指示を無視し、薬の服用や食事制限を怠っています。彼は「仕事を休むわけにはいかない」と感じているため、治療に専念することができません。その結果、病状が悪化し、最終的には重篤な状態に陥り、長期の療養が必要となりました。

◇職場でのスティグマ
（具体的なケース）
精神的な不調を抱えている従業員が、うつ病と診断されました。しかし、職場の同僚や上司が精神疾患に対して偏見を持っているため、従業員は自分の状態を隠して仕事を続けています。彼は必要なサポートを受けられず、ストレスが増大し、症状が悪化する中でプレゼンティーイズムが慢性化しています。

2. 介護とプレゼンティーイズムの課題

◇慢性的なストレスと疲労
（具体的なケース）
ある従業員は、認知症の親の介護を一人で行っています。夜間に親が徘徊することが多いため、従業員は十分な睡眠を取ることができず、常に疲労感を抱えたまま出勤しています。日中の業務中も、親のことが気がかりで集中できず、仕事の効率が著しく低下しています。それでも介護の負担を軽減する手段が見つからず、無理して働き続ける状況が続いています。

◇経済的プレッシャーによる無理な出勤
（具体的なケース）
 介護施設に入所している親の費用を賄うため、ある従業員は二つの仕事を掛け持ちしています。彼はすでに体力的にも精神的にも限界に近い状態ですが、経済的な理由から仕事を辞めることができません。この状況が彼の健康をさらに悪化させ、プレゼンティーイズムが深刻化しています。

◇介護と職場の間での板挟み
（具体的なケース）
親の介護が急に必要となった従業員が、仕事の責任と介護の責任との間で板挟みになっています。彼はプロジェクトのリーダーを務めており、職場での期待が高いため、介護のために仕事を休むことに強い罪悪感を感じています。その結果、介護の負担を抱えながら無理をして出勤し、仕事のパフォーマンスが低下しています。

3. 育児とプレゼンティーイズムの課題

◇育児による断続的な中断と集中力の低下
（具体的なケース）
小さな子どもを育てている従業員が、保育園からの呼び出しが頻繁にあり、仕事を中断せざるを得ない状況に直面しています。彼は業務を再開しても、育児のことが頭から離れず、集中力を欠いたまま仕事を進めています。これが彼のプレゼンティーイズムを引き起こし、業務の質や効率に影響を与えています。

◇育児の負担と職場での期待の不一致
（具体的なケース）
子どもの送り迎えや家庭での世話が必要な従業員が、職場での昇進を期待されています。しかし、彼女は育児の負担から残業や追加の業務を引き受けることができず、キャリアが停滞することへの不安を抱えています。この不安が彼女のストレスを増大させ、プレゼンティーイズムを助長しています。

◇社会的期待による心理的圧力
（具体的なケース）
 男性従業員が育児休暇を取得したいと考えているが、職場では「男性が育児休暇を取るのはあり得ない」という風潮があり、プレッシャーを感じています。彼は「仕事を休んではいけない」という社会的期待に押しつぶされ、結局無理をして出勤し続けていますが、その結果、心身のバランスを崩しつつあります。

まとめ

上記の具体的なケースは、プレゼンティーイズムが個々の状況に深く結びついていることを示しています。治療、介護、育児に伴う課題が従業員に多大な心理的・身体的負担を強いることで、プレゼンティーイズムが発生しやすくなります。

そして、これらの課題を無視することは、従業員の健康や職場全体のパフォーマンスに対するリスクを高める結果となります。