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ピアノの発表会で片手で弾いてみた

ピアノの発表会と聞くと、小さなお子さんたちがかわいらしいドレスやワンピースでおめかしして、おじいちゃん、おばあちゃんが花束を持って足を運ぶ家族総出の一大イベントというイメージが浮かぶ。

昨日、私が参加させてもらった発表会は、そんな私のイメージを覆すちょっとした演奏会であった。友人の師事する先生の主催する発表会で、音大ピアノ科で教鞭をとられていたころの門下生の出演が中心となるかなりレベルの高いものであった。

そんなレベルの高い発表会になんで私がお誘いいただいたかというと、その友人と3年前から連弾を楽しんでおり、せっかくだから発表の場をということでいただいたありがたいお話だった。そしてさらに、、、せっかくだからソロもどうぞということになり、さんざん悩んだ。

なぜってそれは私はピアノが下手だからである。フリルのついたワンピースで愛らしく、足置き台を使ってたどたどしい曲を弾くならばそれもご愛敬だけれど、50代の私が錚々たる楽曲が並ぶ中、きらきら星を弾いてもリアクションに困るだけであろう。ここで友人の顔に泥を塗るわけにもいかないし、惨めな思いの上塗りもつらい。

私もショパンやらベートーベンってものを弾いてみたいな~とぼやいたところで、劣等感ループにはまるだけで、先が開けるものでもない。仕方なしに選んだ曲は片手だけで弾くノクターン。これはスクリャービンが右手を痛めてしまったときに作曲された左手一本で弾く曲。これを右手で弾いてみた。

思いがけなく上々の感想をいただくことができた。「感動した」「両手で弾いてるみたい」、恐れ多くも「館野泉さんを思い出した」。先生のご主人からは「聴衆賞だ」なんて言葉も。もちろんそんな賞があるわけではないけれど、思ってもみなかった有難い言葉をかけていただいた。

私の演奏自体が人を感動させるようなものだったという要素がわずかでもあってほしいと願うけれど、実際は、片手曲の珍しさであったり、リハビリ中なのに頑張ってることや、スクリャービンの曲が片手用によく練られている点が感動ポイントであることは、十分にわかっている。それでも、ずっとかかえている劣等感の薄皮が一枚はがれた瞬間であった。

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