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CASE#1-3 サマリーポケット - サプライヤーの交渉力による影響

他社のプラットフォームへ乗ることによるビジネス影響

これまで株式会社サマリーの提供するサマリーポケットのビジネスモデルについて2本記事を書いてきた。
1本目の記事ではサービスのビジネスモデルを単純なロスリーダー型として捉えて分析し、2本目の記事ではその内側に隠れた協業企業のプラットフォームによって強固な参入障壁が築かれていることを見てきた。

今回は前回の記事で書き残した、協業企業との関係性がサマリーポケットのビジネスに与える影響について考えてみたいと思う。
協業企業である寺田倉庫のMINIKURAプラットフォームに乗っていることで自社単体では獲得できなかった競合優位性を得たサマリーポケットだが、その協業に代償はないのだろうか。

サマリーポケットのLogiTechベースビジネスモデル

ここまでの情報を踏まえると、サマリーポケットのビジネスモデルは単純なロスリーダー型ではないと捉え直すことができる。
倉庫管理や荷物登録のコスト負担もその後の保管料による費用回収もサマリーポケット自体ではなく、母体プラットフォームであるMINIKURAのコスト構造と収益源であったからだ。

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前回記事で紹介したキャンバスと比較すると、提供価値から右 (キャンバス上青色の文字の要素) には変化がないが、それ以外の要素が大きく簡略化されている。
Key ActivitiesとKey Resourcesにあった複数の項目が「特許保持事業者との契約」に束ねられており、コスト構造と収益源についてもパートナーである寺田倉庫が間に1枚噛む形に変わっているため、その事業活動の中心がよりパートナー側へ寄ったことが見て取れる。

パートナーへの依存による影響

ロスリーダー型のビジネスモデルは最初にコストを掛けてでも安く手軽にサービスを使ってもらい、その利用をきっかけにロックインさせて利益を生む仕掛けであるため、当然ロックインしたあとに継続してサービスを使い続けてもらうほどより多くの利益を生み出せる。

しかし、収益源が特許技術とシステムのサプライヤーであるMINIKURAに依存しているこのモデルではサプライヤーの交渉力が非常に強く、継続ユーザーが増えて費用対効果が改善されるとサプライヤーがそれに合わせてシステム利用料の値上げを行う可能性がある。
そうなると、本来得られたはずの非線形的な利益の伸びを線形に抑えられてしまうのである。

もちろん寺田倉庫との具体的な契約内容次第ではあるが、サマリーが今後非連続的な利益成長を達成するためには、新しい収益源を持つ別のビジネスモデルを作り上げるなどして、単一の企業としての競争力を得る必要が出てくるように思う。

今後のサービス成長における制約

こうした議論を経ると、サマリーポケットや寺田倉庫が今後事業の垂直統合ではなく、水平分業を保ってシェアリングプラットフォームや売買プラットフォームへの発展を目指している点もうなずけるのではないだろうか。

また、サマリーポケットの今後の展開として気になる点の一つに株式会社サマリーが提供するもう一つのサービスであるSumallyとのシナジーがあるが、ここにも協業の影響が見られる。
2020年10月現在においてサマリーポケットとSumallyの物品データが完全に分離されており、互いに行き来できないのだ。

これも想像に過ぎないが、おそらくMINIKURAプラットフォームでは基盤の仕組みとAPIまでをMINIKURAが提供するため、その中で扱われる物品データのID体系とSumallyでユーザーが投稿する物品データのID体系は全く異なり、統合することができていないのではないか。

もちろん物品データの統合もやってやれないことはないだろうが、イチからその前提でシステムを作っていた場合と比較すると確実に統合のコストは高く付く。
このチャレンジに対するコストの増加は、特許技術という明確な仕組みに裏打ちされているからこそ生まれてしまった数少ないデメリットの一つだといえるだろう。

サマリーポケットのビジネスモデルによる学び

サマリーポケットのビジネスモデルにおいては、協業する寺田倉庫の持つ特許技術がやはり大きな影響力を持っているようであった。

同じ仕組みでサービスを展開しようとする場合はMINIKURAプラットフォームに参画するか、まだ特許の取得されていない国 (筆者の調べた限り、寺田倉庫は当該特許を日本国内でしか取得していないようである) でビジネスを展開する以外の選択肢がなくなるため、競合他社にとって間違いなく大きな壁となる。

しかし、特許技術のような明確な拠り所があると、その技術に固執しピボットの判断が遅れてしまうのではないかとも同時に不安になる。
オープンイノベーションを促してビジネスモデルを進化させようとするMINIKURAの取り組みがその不安に対する特効薬となりうるのかどうか。
今後のサマリーと寺田倉庫の取り組みに期待が高まる。

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