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毎日が「はじまりの日」

ブームは去ってもしっかり固定客を獲得した「アンチエイジング」。ごく希にBSの民放を観ていて、CMにこいつが出てきたときの不快感といったらない。よっぽど魅力的なコンテンツでもない限り「日本百低山」あたりに移動して吉田類とともに頂をめざす。

初対面で「何歳に見えますか」なんて聞いてくる人がいるが、何を期待しているのか。見ず知らずの人間にこういう質問をしてくるのはよほど意地が悪いか想像力に欠けるかだとは思うが、いずれにしても抜き足差し足で遠ざかるに限る。「何歳って言われたいですか」と聞き返せばいいのだろうか。

そんなことはどうでもよくて「Forever Young」なのだ。息子のためにディランが作った1974年の作品。この歌をベースに「はじまりの日」と題されたアーサー・ビナード訳の絵本がある。絵はポール・ロジャースというジャズのポスターなどを多く手がけた人。10年以上前に買ったこの絵本の存在をすっかり忘れて、何年か前に妻が買い求めてきた。だから我が家には2冊の「はじまりの日」が存在する。ディランがニューヨークで出会っただろう風景・人々を背景に、ごくごく短い歌詞の「キモ」が載っている。絵の中には「ウォーリーを探せ」じゃないがウディ・ガスリーやビートルズの4人、アレン・ギンズバーグなど様々な面々がそっと顔を見せている。ところどころにディランの歌を思い出させる「隠し味」があるのも楽しい(巻末で種明かしがされている)。「いつまでも若く」なんてワードはどこにも出てこない。そこにあるのは愛する息子への切なる願いであり・祈りだ。おそらく普遍的で、だからこそ困難な。

May  you  stay  forever  young,  forever  young,  forever  young,  may you  stay… forever  young.
毎日が きみの はじまりの日 
きょうもあしたも 
あたらしい きみの

入り口はここから
DON'T  LOOK  BACK

ずいぶん前、友人に文章中で自分のことを「ジジイ」と呼ぶのはいかがなモノかと疑問を呈されたことがあって、それ以来なるべく使用を控えている。確かに今日日たかだか六十歳を越えた位でそんなに自分を貶めることはないのだ。自分が誰だかわかるうち(哲学的な意味はない)は、みんな「はじまりの日」がある。どんな日にせよ。







  



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