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黒姫童話館といわさきちひろ山荘

妙高戸隠への道すがら、黒姫高原の童話館に立ち寄る。ナビがないと途端に不安になってしまうようなワインディングロードを登っていくとにわかに視界が開け、童話館の建物が姿を見せる。
入口で動物たちに迎えられ中へ入る。松谷みよ子の常設コーナーや本人寄贈の作品資料が多数展示されたミヒャエル・エンデのコーナーがある。エンデの常設展示は世界で唯一ここだけらしいのだが「モモ」の頃はすでにギターと青春の悶々だったのでほとんど親しんでいない。

「動物たち」に迎えられる。いたってクールなのだ。

イギリスの州立図書館長エドガー・オズボーンが夫妻で集めたという絵本創世期の復刻本が展示されている。展示によると1777年の「世界図絵」というのが初の子ども向け絵本といわれているらしい。世界の様々な事柄と知識を説明したいわば教科書のようなもの。ショーグンというものが君臨していたこの国はどう説明されているのだろうか。

創世期の絵本たち。

民話や長野県に伝わる昔話などのコーナーもあるが、ぐるっと見て回りつくづくこの手には興味をもたない子どもだったことを再認識する。もちろん一通り読んではいるのだが「あああったね」以上の感慨がわいてこない。妻は松谷みよ子のコーナーで「食べられたやまんば」をしきりに懐かしがっていた。

みるなの座敷。ふすまをあけてもそこには何もない。
ふすまをもう一度あけてみるとそこには物の怪の姿が。何てことのないカラクリが素朴に楽しい。
だいだらぼっち。ここ信州では「でいたらぼっち」で諏訪湖や八ヶ岳、千曲川を作ったお方。

童話館の裏手にはいわさきちひろがアトリエを兼ねて建てた山荘が保存されている。親しんでいた小林一茶の故郷であること、野尻湖が見えるところで絵を描きたいとこの地を選んだ。「ああこんなところで自分の世界に入れたら」と一瞬思うのだが、寒い所はほとほと苦手なヘタレなのだ。中を観覧できるので彼女の創作の源をほんの少し垣間見させてもらう。

いわさきちひろ黒姫山荘。春夏秋は「野花(やか)亭」冬は「雪雫(せっか)亭」と呼んでこよなく愛した。
1階の画室。窓外はカラマツと白樺の木立の眺め。
居間。冬は薪ストーブの音に耳を傾ける。
増築された2階の画室。一日中小鳥の声に包まれる。
ある日ちひろが風呂につかっていると夕立と雷が。すると窓越しに子兎が軒先で雨宿りをしている。それからちひろはこの風呂を「兎ぶろ」と呼ぶようになった。

玄関に置かれたスキー板。左の帽子が60年代だ。

自然の中で暮らす云々は関係なく、こんな「生活の柄」を持つというのはやはりどこかで羨ましがっている自分がいる。自分の生活は自分でデザインするしかないのだけれど。

山荘から本館に戻るとカメが。
実は駐車場からカメが案内してくれていたのだ。

ミュージアムショップで「ちいさいおうち」を目にして思わず購入。子どもの頃に親しんだ絵本ベストテンがあったら必ず選ぶ永遠のお気に入りだ。

岩波の子どもの本。福音館とともにずいぶん親しんだ。この頃は訳といえば石井桃子さんなのだ。

雲は多いが、前方に黒姫山、その先に妙高山を望むロケーションは素晴らしい。それにしてもすがすがしい涼しさだ(標高は825m)。うだるような千葉の暑さ、あれは一体なんだったのかとひと時ここにいるシアワセを感じて宿に向かう。

童話館正面に見える黒姫山。
やや遠く妙高山を望む。


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