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国立歴史民俗博物館・企画展示「色尽くし」

歴博でゴールデンウィークまで開催している企画展示の「色尽くし」。色と人間とのかかわりについて様々な角度から考えてみよう、というもの。「いろ・つや・かたちのアンソロジィ」とサブタイトルにある。

見出しの写真は京都・醍醐寺五重塔初層の彩色復元模型(実物大)の天井部。会場の入口に設置されていたものを下から仰ぐ。建築当時の絢爛豪華な彩色が復原されている。中に入ると彩色のもとになった下絵(文様復原原稿)と色絵具見本というのがある。原稿をつぶさに見ていると「コノワルノ始末は如何致シマセウカ」とか「宜しく御指導下サイ」とかあって面白い。ちなみにともに昭和30年頃のもの。色見本と格闘していた20代の編集稼業を思い出す。にわかにこの作業をした方々に親しみを覚える。何度ダメだしをされたことやら。

醍醐寺五重塔の文様復原原稿(左)と宝相華彩色絵具見本(右)
会場正面には平等院鳳凰堂の天井を支える組物を部分的に復元した模型が鎮座する。

興味を惹かれたのは「疱瘡絵」と呼ばれるもの。疱瘡神がもたらすと言われ恐れられた天然痘にかかった子どもにおくられた。疱瘡神が嫌うという赤い色に魔除け・厄除けの願いを込めたという。

富士山、だるま、源為朝、鍾馗、鯛車の疱瘡退治隊。
「開化絵」と呼ばれる文明開化の風俗を描いた錦絵。祝祭ムードを盛り上げるのにも赤い色は欠かせない。
染織物の制作に使用した色見本(明治時代)
友禅染の見本(明治時代)。女性の着物の見本は付箋に色だけでなく模様の名称も記されている。男物は純粋に色見本になっている。男はつまらない。突然だが友禅染のアロハ着てみたいな。
花鳥螺鈿大型円卓。螺鈿に色をさす伏彩色螺鈿という技法を用いている。

漆工芸による印籠や古墳の壁面模写(ここは撮影禁止)など、個々では「ふむふむ」と見られるのだが、企画全体としては総花的で企画意図は伝わりにくい。「アンソロジィ」ですと言われればそれまでなのだが「色と人間のかかかわり」はそこですか?という感が否めない。人々は色にどういう想いを込めてきたのか、そんな名もなき人の暮らしの中の「色」をもう少し見たかった。




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