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救われるうたについて。

「涙の数だけ強くなれるよ」で始まる歌が苦手だ。発売からこの方一度もいいと思ったためしがない。聴かなければいいのだが、大ヒット曲である故に今でも不意に耳に入ってくる。国民的応援歌などという表現も目にした。そんなものがあったら怖いじゃないか。サザンオールスターズは誰が「国民的ロックバンド」などと言い出したのか。そんな貧しい言葉の中に彼らを閉じ込めないでほしい。

話を戻す。「涙の数だけ~」の何が苦手か。それは「強くなれるよ」(2番は「強くなろうよ」)という表現の通り「強くなることは良い事」を当然の前提として「だからみんな!さあ!」という押し出してくる事なのだ。強さの解釈は人それぞれだとしても。応援ソングと考えればそれでいいのだろうし、この歌に勇気をもらったという人は数多くいるようなので、その「効能」を否定する気は毛頭ない。ただ、あまりやさしくはないな、と思う。

ずっと心の中にいる歌がある。西岡恭蔵(象さん)の「プカプカ」。

おれのあん娘はタバコが好きで
いつもプカプカプカ
体に悪いからやめなって言っても
いつもプカプカプカ

遠い空から降ってくるって言う
「幸せ」ってやつがあたいにわかるまで
あたいタバコやめないわ
プカプカプカプカ プカ

おれのあん娘はスウィングが好きで
いつもドゥビドゥビドゥ
下手くそなスウィングやめなって言っても
いつもドゥビドゥビドゥ

あんたがあたいのどうでもいいうたを
涙流すまでわかってくれるまで
あたいスウィングやめないわ
ドゥビドゥビドゥビドゥビドゥ

Ah おれのあん娘は男が好きで
いつもウフウフウフ
おいらのことなんかほったらかして
いつもウフウフウフ

あんたがあたいの寝た男達と
夜が明けるまでお酒のめるまで
あたい男やめないわ
ウフウフウフウフ ウフ

おれのあん娘はうらないが好きで
トランプ スタスタ スタ
よしなって言うのにおいらをうらなう
おいら 明日死ぬそうな

あたいのうらないがピタリと当るまで
あんたとあたいの死ぬ時わかるまで
あたいトランプやめないわ
スタスタスタスタ スタ

「プカプカ」西岡恭蔵作詞

この歌のせいで煙草の本数が1%くらい増えてしまったかも知れない大変罪な歌である。ふと思うのだが、ほんとに死にたくなるようなツライ時には、どんなに力強く「明日は来るよ」と言われるより、リアルでもまぼろしでもいい、「おれのあん娘」がいる事ほど救われることはないんじゃなかろうか。

そうれはそうと「涙の数だけ~」と甲本ヒロトが歌ったら、うたの景色はどう変わるのだろう?憂歌団が歌ったら?


見出しのイラストは、光治(みつおさむ)さんの作品をお借りしました。



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