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テクノロジーには「向き」がある。

先日参加したトークセッションで、面白い話が飛び出した。

テーマは「人間らしさを引きだす空間づくりとWell-being」

あつまったのは、極地建築家:村上 祐資さん、永山祐子建築設計:永山祐子さん、パナソニック Aug Lab リーダー:安藤 健さんと私。

あっという間の60分、いろんな話題が飛び交った。これをまとめるのは結構大変なので、詳細はアーカイブ動画にゆだねるとして、個人的に気になった「向き」の話をメモしておきたい。

すべてがテクノロジーに御膳立てされて「不」がなくなった超快適空間に人間らしさはあるのか?

私がここ数年、仲間と実験を続けている"UN_"というプロジェクトでは、こんな問いを立てている。

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そんな背景からAug Labとして実験開発したのが、外吹く風に反応してゆらぐ「ゆらぎかべ:TOU」。どんな室内にもある"壁"が風に反応してランダムにゆらぐ。人やマシンには制御できない不規則な現象が生活空間に同居すると、感覚がやわらいでWaell-beingな状態に貢献するのではないかという仮説をもってつくったものだ。

私は空間づくりのプロではないので、いろんな建築家の方とこのテーマでお話がしたかったのだが、この場で出たのが「テクノロジーには向きがある」という話。教えてくれたのは永山祐子さん。

ぜんぶが自分に向いていると怖い

たとえばライトも、椅子も、机も、スピーカーも、スマホも、PCも冷蔵庫やトイレまで、すべてのテクノロジーが自分に向いている未来を想像してみる。常に自分に提案やレコメンドを続けてきたら窮屈に感じないだろうか。まるで機械に主導権を握られるような気がしてくる。便利が得られているはずなのに、なぜかつらそうだ。

だからといってテクノロジー全般の進歩を即否定するのは違うと思う。その点、永山さんはすでに多く実験と実践をかさねられていた。

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↑イベントで紹介されたスライドより「ドバイ万博・日本館」のイメージ。日本の伝統的な幾何学模様とアラベスク模様を立体的に重ねた格子に膜を張る構造。壁としての機能を果たすだけでなく、光や風に反応して室内にゆらぎをもたらす「現象的な効果」を生み出している。これも歴としたテクノロジーだが、想像するだけで心地よい。きっと、生み出されるゆらぎは自分に向かっているものではなく、ただそこに存在しているもの。

ようはバランスが大事。

こんな例え話も出た。「室内の空気が濁ってしまったら人間と同じように”くしゃみ”をするような家があったら?」

ストレスとは別の、なにかの感情が生まれそう。これはすごい発想だなぁと膝を打ってしまった。

チャーミングなテクノロジー

「空気が濁った」ということを知らせる点では、アラーム機能と変わらないはず。でもアラームは自分に向かってきていて「家のくしゃみ」は全然こちらに向かってこない。なんてチャーミング。共感が深かった。

わたしが「テクノロジーは不を殺すのか」という語調の強い問いを立てていたのは技術の進化を否定したかったからじゃなくて「テクノロジーは使いようだ」ということが言いたかったんだなと、あらためて気づかせてもらえました。

技術やテクノロジーは、とても機械的で無機質なものかもしれませんが、キャラクターや愛らしさがあってもいいはず。不便を取り除くテクノロジーだけでなく、世話をやかせる弱いロボットや、しっぽをふってくれるだけのQooboのような存在も受け入れられてきている現代。

個々のデバイスだけでなく、テクノロジーの「向きの調和」を空間全体で考えて、そして人が感情を抱いてしまうような空間をつくりたいなと、創作意欲がわいてしまいました。未来はもっと進化するけれど、一人ひとりが自分の空間を意識してテクノロジーを組み合わせられるよう、選択肢があることが重要だと思う。自動化や便利に一辺倒なテクノロジーだけでなく、チャーミングな選択肢を増やしていきたいな。


以上、今回は永山さんのお話しでまとまってしまいましたが、極地建築家の村上さんが語られた「極地生活におけるアイボ」のお話も、超面白いのでまたどこかで書けるといいな。なにしろ楽しい時間でした、感謝。

▼アーカイブ動画(Full)


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主なトークテーマ
- 極限の環境での生活について
- 現代~未来の“空間”
- 人間らしくあるための空間づくり

【登壇者:左から】
安藤 健(パナソニック株式会社 「Aug Lab」リーダー)
永山 祐子 氏(永山祐子建築設計 主宰)
村上 祐資 氏(極地建築家)
出村 光世 氏(Konel Inc. プロデューサー / ファウンダー)

▼イベントの概要はこちら

▼Aug Lab安藤さんのまとめ記事



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