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がん と 生きること

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#間質性肺炎

病歴58:アピアランスのこと

病歴58:アピアランスのこと

数日前、髪を染めた。
昨年の7月に抗がん剤を終えて、髪が再び生えるようになってから半年。
G.I.ジェーン状態を通り過ぎて、ベリーショートぐらいにはなった。
以前もこれぐらいの長さになった時、美容師さんに色で遊ぶことを教えてもらった。
その時は、ぱっと見は目立たないけれども、光の当たり具合によって、気づく人は気づくぐらいに、赤に染めてもらった。

私は、美容室迷子になっている。
昨年の抗がん剤治療

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病歴54:酸素ボンベと旅に出る

病歴54:酸素ボンベと旅に出る

漂泊の思いがやまない季節がある。
春と秋。
渡り鳥の移動が始まる頃には、私も一緒に落ち着かなくなるのだ。
退院後、ステロイドや強めの抗うつ薬の効果が加わって、じっとしていられなくなっていたところに、かねてからの友人からの招待が届いた。
場所はとあるねずみの国である。

肺炎はまだ治っていない。
ステロイドを服用していることで、感染症には弱い状態である。
負荷は少なくするようにも言われている。
コロ

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病歴52:頭上のチンアナゴ

病歴52:頭上のチンアナゴ

鏡を見る。
これまでで最も重たく膨れ上がった体と顔のぞっとする姿の自分の頭上。
はげた頭の上に3−4本。白髪が1cmを超えている。
つんと立った白髪の先が少しだけ曲がっていて、まるでチンアナゴのように見えた。
頭上に、真っ白なチンアナゴが4匹。

病歴として書くほどのことではないような気もして迷ったが、自分の身体の変化を少し、書き残しておこうと思う。

例によって、抗がん剤投与から一ヶ月は、効果が

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病歴51:酸素ボンベとPET検査

病歴51:酸素ボンベとPET検査

在宅酸素療法を利用した生活が始まると同時に、飼い猫が出奔し、怒涛のうちに退院後最初の一週間が過ぎていった。幸い、猫は帰宅してくれ、私もこそっと職場復帰。
午前中だけの短時間だけの出勤と言いながら、午後も少し居残りしていたりする。
とはいえ、酸素ボンベの残り具合と相談しながら生活することになった。
個人の感覚としては、ボンベのほうが、10mをこえる長いチューブに繋げられるよりも、なんとなく動きやすい

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病歴47:薬剤性肺炎2週目

病歴47:薬剤性肺炎2週目

世間ではお盆だ。
台風一過の空がとても美しい。
空が青いと海も青い。
これまで湾内に停泊していたタンカーやフェリーの姿が消えた。
窓越しに、いつもとは違うルートで空港へ進入する飛行機を見上げる。
病院の中はとても静かだ。

入院2週目も後半になり、ここでの過ごし方もだいたいと決まってきた。
午前中にステロイドの点滴を受ける。だいたい60分以内なので、これまでのBEP療法の8-10時間耐久レースのよ

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病歴46:薬剤性肺炎1週目

病歴46:薬剤性肺炎1週目

入院して一週間が経った。
今日には退院しているはずだったのに。
そう思うと、少し、気持ちの切り替えが揺らぐ。
我が家の方を眺められる窓を見つけて、ちょっとばかり、ホームシックになっている。

先週月曜日から入院した。
BEP療法の4クール目として、入院の予定だった。
ブレオが使える最後の一回。これで一区切りと思って、入院の準備をした。
直前の一週間の体調はひどいものだった。
仕事の合間合間に咳き込

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