意識高い系会社に低い系が入社したはなし⑦

遅刻したら恥晒し

入社してしばらく経ったある日の朝会で、
上司が「ちょっとA(社員の名前)から共有しなきゃいけないことがあります」
と言い出した。

おいおい退職か？と思いAさんの方を見ると、

「昨日の朝、遅刻してしまいました。理由といたしましては、目覚ましをかけ忘れたことです。
今後の対策としましては、目覚ましの量を増やします。社会人としての自覚にかけていて本当に申し訳ありませんでした。」

と言った。

え？遅刻したらこんな晒されんの？
理由と対策まで話さなあかんの？
てか目覚ましの量を増やしますってなに？おもろすぎん？

と戦慄したことを覚えている。

幸い元々遅刻はしないタイプだったが、
何があってもするまいと心に誓った。

それからというもの
遅刻者が出るたびにこの奇妙な報告は続いた。

大体が目覚ましのかけ忘れや聞こえなかったのが原因。
まぁそやろなという感想しかなかった。
人が寝坊するのは得てしてこの理由だ。
そして対策は目覚ましの量を増やすか音をでかくする。
人の寝坊対策は得てしてこうなる。

この報告を聞く時間が果てしなく無駄に感じられた。

ところがある日、Bさんから忘れられない報告があった。

「昨日遅刻をしてしまいました。理由といたしましては、昨日遅くまで飲んでいて、終電には間に合ったのですが電車で寝てしまい、起きたら終点の駅になってしまっていました。そこからタクシーで帰って寝ずに行こうと思ってたのですが、寝てしまいました。
対策といたしましては、しばらくお酒は飲みません。そして、目覚ましの量を増やします。」　

耐えられなかった。
朝会で配られるA3の紙で顔を覆いつくし、肩を震わせた。

そしてまさかの真剣に腕を組みながらその報告を聞いていた上司がそれを受け、
「Bは1ヶ月勤務終わりは禁酒令を出しました。みんな誘わないように！」
と言い出して、
余計耐えられなかった。

飲み過ぎて寝坊をしたまではまだしも、
電車に乗ってどうなったのか詳細な報告いる？
しばらくお酒は飲みませんて何？
目覚ましの量はもうええて。
ほんでなんで上司は真剣に聞けんねん。
笑えよ。

1人心の中でツッコミ倒した。

そしてBさんは、
こんな恥を晒したにも関わらず
何度も遅刻を繰り返して、
その都度わたしの肩を震わせた。

無駄にしか感じられなかった報告の時間に笑いを提供してくれた。
彼こそがエンターテイナーだ。