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詩と暮らす(#シロクマ文芸部)

詩と暮らす
朝露に硝子の首飾りをかける蜘蛛の巣は
まがきの茂みで、東雲しののめのうすくめざめる時を待つ
疎水べりに野蒜のびるを摘み、菜園に種を蒔き、穀雨を待つ
風に雨の匂いをかぎ、セーターのほつれを繕い
うだる熱気に緑陰を求め
軒の氷柱つららの滴を聴き
ことばのおりをときほぐし
去年こぞも 昨日も 詩と暮らす

詩と暮らす
曇天のした蓮のうてなでかわずはうたい、
角の青果店の軒先から、つばくろの雛はとうに飛び立った
書棚の埃を払い、ヴェルレーヌの詩集に、消印のかすれた絵葉書を見つける
風鈴がそよぎ、鍋の焦げをこする
天蓋に十六夜いざよいの月を求め
海鳴りに記憶をさら
ことばの欠片かけらを拾い
昨日も 今日も 詩と暮らす

詩と暮らす
ことばの林を逍遥し、月の海に掉さす
光と影の戯れを金の鳥籠につかまえ、
銀の砂漠をさまよってみようか
人はみな誰もがいっかいのまどろむ詩人
息をするようにことばは胎内に宿る
躰のうちにしたたかな熱量をもち
ことばが孵るのを待ちわび 
あすも あさっても 詩と暮らす

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「詩と暮らす」という課題でしたので、
「詩」のようなものを書いてみました。

小牧部長様、今週もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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