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『一億円の低カロリー』(#ショートショートnote杯応募作品)
かれこれ小一時間。樫山は部長の机の前で直立不動を強いられている。
部長は怒り出すと、ねちねちネチネチねちねちと長い。加えて、瞬間湯沸かし器とあだ名されるくらい、すぐに怒声が飛ぶ。
「一億円の低カロリーだって!いったい誰が、そんな高額な健康食品を買うと思ってるんだ!」から、延々と説教が続いている。こうなると何を言っても聞く耳もたずだ。
――部長の頭頂部、ヤバいことになってんじゃね?
――口をぱくぱくさせてるカメみたいだな。
そろそろかな。
部長の熱気がようやく冷却してきた。
樫山はやっと口をはさむ。
「イチオクエンは、お金の一億円ではなくて‥」
樫山が紙に書きなぐる。
『市オーク園』
「オーク材を扱う材木商です。オークのタンニンからポリフェノールの抽出に成功しました。これを使って、うちと共同で美容に効果のある低カロリー食品を開発する計画が‥」
「ばっかも――ん!」
「それを早く言わんか」
はぁぁ。部長に効く高血圧防止食品でも開発すっかな。
The End(本文410字)
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