十二月屋(#シロクマ文芸部)
「十二月屋はまだじゃろか」
ちりん。
片付け忘れた軒先の風鈴が鳴った。
文机にひじをつき、ぼおっと出格子越しに路地を眺めていた橙子は、耳の後ろでかすかに鈴のような声がふるえた気がして、
「十二月屋って、なあに?」と振り返った。
黒髪を肩で切り揃え、梔子色の縦縞のきものに、黒地に椿柄の被布をはおった六歳ぐらいの少女が、橙子の肩越しに窓の外をうかがっている。
「あなた、どこの子? かってに人の家にあがったら、あかんよ」
少女は、しまった、という顔をする。
「あなたのおう