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人工呼吸管理の基本は肺を悪くしないこと≒「コンプライアンスに応じた一回換気量制限」

題名の内容が全てだと思います。
これを忘れ、正常な血液ガスを求めても予後改善は得られません。

それでは、急性期を脱するまで肺を保護するにはどのように管理すれば良いのか?
これは一言で言うなら、「コンプライアンスに応じた一回換気量に制限すること」と言いきれます。

大事なのは圧ではなく、絶対に一回換気量です。
肺はバネの法則に従います。バネがバカになって伸びきってしまうのは、一定の伸びを超えて引き延ばされた時ですね?理科で習ったと思います。バネの伸びとは肺で言うところの一回換気量です。これを厳守しなければ肺は壊れます。(スライドの絵を参照していただくと分かりやすいです。)

それでは次にコンプライアンスとは何かを考えてみましょう。
それは「一定の圧でどのくらい換気量が得られるか」です。
それでは、PCVで圧管理中の患者が片肺挿管になったらどのような変化が起きるでしょうか?
10cmH2Oで管理中に500mlの換気量が得られていたとすると、
片肺挿管後は250mlに換気量が減少すると思います。(肺の容量が右と左で全く同じと仮定した場合)
一定の圧で管理中に得られる換気量が半分に減りました。これはコンプライアンスが低下したのでしょうか?
コンプライアンスを肺の硬さとイメージしている人は、「コンプライアンスは変わるはずない!」と言うでしょう。しかしこれは紛れもなくコンプライアンス低下です。
実は、コンプライアンスとは「使える肺胞がどれほど残っているか?」を意味します。ARDSが発症した時、肺が硬くなるのではありません。非心原性肺水腫で一部の肺胞が虚脱し、使える正常な肺胞が減少するのです。
残された肺胞が少なくなることからARDSの肺をbaby lung(赤ちゃんくらいの肺容量)と言うのも納得がいくのではないでしょうか?
片肺挿管の時に通常通りに換気量を入れてしまったら悪いことは理解できますよね?それではコンプライアンスが低下した肺障害の患者でも同様に換気量を制限することが重要と言うことが分かっていただけたのではないでしょうか?

これらのことから、肺保護で重要なのは、「肺のコンプライアンスに応じた一回換気量に制限して管理すること」と言えるのです。

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