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書評

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ヨミタイモノ、ココニアリマス。
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2023年3月の記事一覧

阿部 昭『新編 散文の基本』を読む。noteで酷評する人もいるが、私は楽しめた。前半は文章作法。「自分を表現する」とは何か、全身短篇小説家の指南に後頭部をガツンと殴られる。後半は短篇小説の作家論。小説の神様・志賀直哉が実は荒々しいという分析は見事。詩人・荒川洋治との対談も面白い。

既視の海
1年前
8

倉橋由美子『あたりまえのこと』を読む。もう何度目か分からない。40代と60代にそれぞれ書いた小説論。小説をおもしろくするのは「何を書くか」よりも「いかに書くか」。彼女の二人称小説『暗い旅』はその極み。強く薦める。あの村上春樹作品のラストを「ありえない」とばっさり斬るのも一理あり。

既視の海
1年前
11

【書評】永田希『再読だけが創造的な読書術である』

永田希『再読だけが創造的な読書術である』を読む。 noteの「つぶやき」用に140字の書評に挑…

既視の海
1年前
26

永田希『積読こそが完全な読書術である』を読む。古今東西の文献を渉猟し積読のうしろめたさを払拭しようとする試み。投資のポートフォリオにたとえた「ビオトープ的積読環境」の提言は秀逸。ショーペンハウアーの半生は冗長で、第三章以降は無理に積読へこじつけのような印象もある。次は『再読』本。

既視の海
1年前
7

【書評】青山美智子『お探し物は図書室まで』

つながる。おどろく。おもしろい。 この三つが、子どもの頃からの読書を支えてきた。 本を読…

既視の海
1年前
20

寺地はるな『みちづれはいても、ひとり』 #読了 。夫と別居中の弓子と、アパートの隣人で無職になったばかりの楓という不惑どきの女2人が、失踪した弓子の夫が目撃されたという島へ旅をするロード・ノベル。前向きな結末のはずが逆に、人間は本来どうしようもなく孤独なのだと痛感。再読必須。

既視の海
1年前
5

宮下奈都『太陽のパスタ、豆のスープ』を読む。婚約破棄されたOLの明日羽が叔母ロッカのすすめで「やりたいことリスト」を書き、実践し、自分を見つめ直していく。やりたいこと探しよりも、できることを増やす。毎日の暮らしを整えていく大切さを再確認。いい本というのは、勇気を与え、行動を促す。

【書評】李 琴峰『五つ数えれば三日月が』

来日後たった3年の台湾出身作家が詩情あふれる日本語で書いた小説。 そういう見方が、好きじ…

既視の海
1年前
2

【書評】エリック・ファーユ『プラハのショパン』

チェコやプラハときくと、訪れたこともないのに、懐かしくて、胸騒ぎがする。 まっさきに思い…

既視の海
1年前
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【書評】ドン・デリーロ『ボディ・アーティスト』

静かな物語。そして切ない。登場人物は少なく、情景を描くのも最低限に絞られているが、心理描…

既視の海
1年前
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