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長野・飯山で過ごした田舎の夏休み

鷹取愛さんのプロジェクト「一日遅れの日記」に声をかけていただきました。毎日違う人の日記を一日ずつ読めるというもの。私は8月19日に参加しました。

久々にオフの遠出の初日だったこともあり、書いてたら楽しくなっちゃった。せっかく濃厚な2日間だったので、続きをこっちに書いちゃおうかなと思います。


最高の朝ごはん

朝、宿というかお借りしているおうちで目が覚めて、着替えたり化粧したり出かける準備。そういえば冷蔵庫に、昨夜みんなで酔っ払って書いすぎた缶ビールやワンカップが残っている。2本ずつ持ち帰るとして、それでも余るから(どれだけ買ったんだ!)朝8時から乾杯。

外に出れば夏の空。青々とした山と、入道雲が見ていて気持ち良い。日差しは暑いけれど、風がすっと涼しくて、東京の暑さとは違う。

昨日の木材屋さんにまた出かけて、事務所に着くと、朝ごはんが用意されていた。

お味噌汁に入っているなめこはジャンボサイズ。飯山の人たちと話していると、きのこ狩りのシーズンに来るのも良いとみんな口を揃えて言う。82歳のようこさんが作る舞茸の天ぷらが特に絶品だそうで、そんなの絶対にまた来なくちゃいけない!という気持ちになった。

何気なく出ている生卵は烏骨鶏で、濃厚。今はじゃがいもの小芋が採れるシーズンだから、近所の人もみんなこんな風にして食べているそうだ。一緒に炒めてあるのはベーコンかと思ったけど、なんだか違う。聞いてみると、大豆とこんにゃくで作ったベーコン風のものなんだとか。台湾から取り寄せているらしい。

焼きなすには、昨日覚えたばかりの「ボタンコショウ」をつけてみた。味噌のように見えるけど、ボタンコショウを刻んで、麹で発酵させるのだそう。なすにも合うし、白いご飯にも合う。

97歳のスーパーおばあちゃん、現る

食べていたら、木材屋さんに野菜を買いに来たおばあちゃんがいた。ハキハキとしながら野菜を選んでパッと買い物を終える。その後、駅前のスーパーにも行くとのことだけど、開店までまだ30分あるから、と一緒にお茶することになった。

この暑いのに歩いてお買い物だなんてすごいなぁ。と思っていたら、なんと御年97歳というから驚くどころじゃない。毎日しっかり歩き続けていて、足の筋肉がすごいんだと82歳のようこさんが言う。ここでは60代後半でも「若い」とされるのだから、私なんてまだまだまだまだ未熟者だ。97歳のおばあちゃんは、サッとスーパーに出かけて行った。

さすがに腹ごなしが必要と思い、散歩がてら「高橋まゆみ人形館」へ。ずっと車移動だったから、ようやく歩いて飯山を散策できる。

飯山線の線路がずっと近くにあるけれど、電車は本数が少ないのか全然見かけない。踏切の手前の木陰で、休んでいる人の姿が見えた。あれ?さっきの97歳のおばあちゃんだ!

我々がのーんびり朝ごはんを食べておしゃべりしているあいだに、スーパーで買い物して、さらにここまで歩いて、涼んでいる。どれだけ歩くのが速いんだ。「木陰は風もすーっと通って気持ち良いでしょう」と教えてくれた。たしかにこうして涼みながら歩けば、長い散歩も苦痛にはならない。

たくさんのお寺と、たくさんの仏壇屋さんがならぶ商店街を進むと、「高橋まゆみ人形館」に到着。飯山在住の人形作家さんで、おじいちゃんおばあちゃんたちを題材にすることが多いらしい。

いきいきとした表情がすごく印象的で、一人一人眺めて順路を進んでいく。不思議と、飯山で出会ったいろんなかっこいいおじいちゃんおばあちゃんの顔が頭に浮かぶ。製作工程がビデオで紹介されていたけど、きっと高橋さんは人形づくりだけじゃなく、街中でいろんな人たちと交流しながら、飯山の風景を切り取って人形にしているんだろうなと想像した。

来た道を戻って行くと、路肩に車を停めてしみじみしているおじいさんがいる。姿勢もシャンとしてかっこいい職人風の方。私たちが通りかかると「この辺の人?」と聞かれた。残念ながら違うんです、と答えたら「いやぁ、このあたりに昔、駅があったはずだと思って来てみたんだけどね。ずいぶん変わっちゃったから本当にここだったっけなぁと思いながら懐かしんでいたんだよ」とのこと。

後にわかったことだけど、おじいさんの言うとおり、昔は駅があった場所が、新幹線の駅ができて今はがらりと変わっていた。その方も80代半ば。なんだか本当にみんな若くて元気だ。

土砂降り、小降り、快晴の鏡池

今日はお昼に蕎麦を食べたら、戸隠へ。神社へ行くのかと思っていたら、鏡池というところに連れて行ってもらった。池の向こうに戸隠の山が見えて素敵なのだとか。

ちょうど車で到着して駐車場に向かう時、波のない完璧な鏡のような池が見えた。車を降りていざ写真を撮ろう!と向かったら、ぽつぽつと雨。あわててレストハウスに入って、テラスの屋根の下、小雨の音を聴きながら景色の移り変わりを眺めた。

さっきまでくっきり見えていた戸隠連峰が、あっという間に真っ白な雲で覆われてしまう。通り雨だったのか、少し晴れ間が覗いてきたら、徐々に雲が晴れて山がうっすらと見えてきた。幕開けの主役登場!かっこいい!と眺めてたら、今度は雷に暴風に土砂降りの雨。屋内に避難してもまだ濡れるほど。ようやく晴れあがったので写真を撮って移動した。短時間でいろんな表情をいっぺんに見れて大満足。

別腹とうもろこし

さすがにまだお腹すいてないよ〜と言いながら、山を下る途中にこれでもかというほどテントが出ていたとうもろこし屋さんのひとつへ。この時期だけ、採れたてのとうもろこしを焼いて食べさせてくれるんだそうだ。

でも、半分とかでは売ってない。買うなら一人一本。仕方ない、買うか。と決意して香ばしいお醤油の匂いを片手にかぶりつく。

ジューシー!!甘い!!これは別腹だ!さっきまでおしゃべりしていた全員が、夢中で食べる。縦に食べる人、根元から食べる人、螺旋状に食べる人。とうもろこしの食べ方も十人十色なんだな、なんて初めて考えた。お腹いっぱいだったことも忘れて完食。

本当はさらに進んだ道の駅でブルーベリーのソフトクリームも食べたかったのだけど、それはたぶんまた来年だな。気づけば自然に来年の夏も絶対に飯山へ来るつもりになっていた。

さらにとっておきの絶景というところに連れて行ってもらい、雄大とはこのことだな、と思う。と同時に、私たちがいるこの土地はにんじん畑なんだけど、全面で作っても廃棄になってしまうので畑の面積を縮小しているらしい。道中にあった人工湖はいつもひたひたなのに、今日は干上がっていた。東京の家でごろごろしながらSDGsがどうのという記事を読んで知った気になってしまうよりも、こういう現場でいろんな物事を目の当たりににした方が、私にとってはいろんな課題をずっしりと感じられるな、と思う。

「帰りの汽車で食べなさい」と差し出された謙信すし

最後に荷物を取りにもう一度木材屋さんへ。採れたてのズッキーニやりんご、桃もお土産にいただいて、身軽で来たはずの私の荷物はずっしり重い。

さらに、「これお土産、よかったら汽車の中で食べなさい」と謙信すしというのを持たせてくれた。帰りの新幹線に乗る頃にはまたお腹いっぱいで食べられそうもなかったけど、せっかくだからありがたくいただく。

飯山から乗る新幹線「はくたか」は、指定席もグリーン車も満席だった。そうか、長めに夏休みを取っている人たちにとって、今日は最終日なのか。ダメ元で自由席に乗ったら、案外空いていてすぐに座れた。そう思ったのも束の間、長野や軽井沢からどんどん人が押し寄せて、あっという間に満席になった。

東京駅の混雑をすり抜けて帰宅。もう食べれないって言葉がまだ口をついて出る。

それでも早めに食べたいから、翌日の遅めの朝ごはんというか早めのお昼ご飯に、謙信すしを。

笹に乗った酢飯はしっかりお酢が効いている。こういう酢飯を待ってた!おいしい。そして寿司という名を聞けば魚を想像しちゃうけど、卵や山菜、くるみなど山の幸でいっぱい。これは立派な山の寿司だ、と納得した。

私の実家は神奈川だし、むしろ夏休みにみんながうちへ来るからもてなす側。田舎へ帰る、というのに憧れていたことをいつしか忘れかけていたけれど、ちょうどしっかり思い出した。

はじめましてと思えないほど、どこに行ってもみんなが優しく迎え入れてくれて、食べろ食べろ、余ってもしょうがないから、と甘やかしてくれる。映画『おもひでぽろぽろ』のような、田舎に帰るという憧れが叶った夏の日だった。

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