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【12/6】第2章「機能」に突入&読み終わりました(戸田山和久『哲学入門』を読む⑤)《基礎ゼミレポート》

今回は、第1章「意味」に引き続き、第二章を読んでいきました。本章のテーマは、「ありそでなさそでやっぱりあるもの」の代表格である「機能」について論じられます。

モノと因果関係だけの世界にあっては、本来の機能と副次的な機能を区別がありません。では、いくつかある機能のうち、本来の機能たらしめているものは何なのかということが問われます。

一般に、意味、目的、機能は、現にいまあるもの、いま現実化していることによって理解することはできません。なぜなら、たとえば、心臓は、その心肺機能が停止したら「心臓」ではなくなってしまうわけでなく、「心臓」であることに変わりはありません。そこで、意味、目的、機能は、〈いまそこにないもの〉あるいは〈いまそこで現実化されていないことがら〉にかかわるという共通点があると著者は述べます。
したがって、いまそこにないものへのかかわりが、自然界の中でどう湧いて出てくる/きうるのかを説明することは、従来の「いまやっていること」や「いまできること」による定義とは異なり、進化の歴史という視点から機能を説明することになります。そこで、ミリカンの「起源的説明(etiological explanation)」と呼ばれる説明の意義が論じられます。

概念分析や概念の定義は、哲学理論の一部分であり、哲学は理論の包括性、整合性、唯物論性、その帰結の豊かさといった基準で検証されると戸田山氏は述べます。具体的には、あたらしい概念を使った理論が、認知行動学との調和、情報的世界観への展開可能性、よりよい知識データベースを作るのに役立つかという観点から評価される。この意味で、哲学の作業は「新しい概念をつくる作業に従事する」(124)ことがふさわしいとされます。機能カテゴリーを作ること、機能カテゴリーを統一的に説明する理論を作ることが科学理論の役割となります。

本章全体として、ミリカンの起源論的説明と、そのライバルとされるカミンズの因果役割説明が紹介され、ミリカンはカミンズを批判するものの、両者の理論的目標が異なっているにすぎないと戸田山氏は指摘します。すなわち、アイテムがある機能や目的をもっていることと、アイテムがシステムの中で現に何かとして機能していることは両立するのであり、後者のメカニズムを説明するのに、カミンズの定義はよく出来ている。これに対して、正常と異常の区別といった規範性や、機能といった存在もどきをモノだけ世界観にできるだけ書き込むという目標のためには、ミリカンの概念が有益であると指摘されます。

第2章「機能」はこの日で読み終えました。本書はまだ理論的な箇所が続くのですが、ここで、もう少し私たちの生活に沿った議論が論じられる、第6章「自由」を次回は読むことにしました。

次回は、12月13日(火)22時からです。


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