Kamasi washington 「heaven and earth」

マイルスデイヴィスの本の中でジャズ評論家の3人中山康樹氏、後藤雅洋氏、村井康司氏の対話の中で

「例えば寺島さんなんかが最近のジャズを紹介するのは良いことだと思うけど、中身は新しくもなんともないわけじゃない」

「ただ若いだけとかね」

「結局マイルスがいなくなっていいことは何一つない、結論は」

と言っていたが、その中の1人ジャズ喫茶いーぐるの店主後藤氏がライナーノーツの中でこのアルバムを絶賛している。

しかし寺島靖国氏だったらこういった革新版は拒否するだろう(笑)基本オーソドックスなハードバップを好んでいる様な気がするからだ。

寺島氏は当時リアルタイムでマイルスの「bitches blew」やコルトレーンの「ascension 」オーネットコールマンの「ジャズ来るべきもの」を聴いていたみたいだが、結果否定することになる。

ジャズ喫茶のいーぐるの入り口に向かう階段に、マイルスやコルトレーンのような「ジャズの巨人」と同様にこのジャケットも貼られていた、そしてこのアルバムは後藤氏が絶賛しているので実際聴いてみたが…

確かにコルトレーンのような「スピリチュアル」な要素も感じるが、「重さ」はないような気がする、自分はこの「重さ」がポイントなのだが、しかしその「重さ」がないのでその分多くの人に聴かれる可能性はある。

ライナーノーツを読むとコルトレーンの名前が頻繁に出てくるが、そもそもコルトレーンと比べる対象ではない気がする。

自分にとってコルトレーンには「ちょっと危ないロックの匂い」がするところが良いのだ、自分がコルトレーンを推す理由はそこの部分にある、そしてそこに「スピリチュアル」の要素が加わるからある意味「最強」なのである。

エレキ化したマイルスやインパルス時代のコルトレーンのような「危うさ」は殆どない、と言っていい。

むしろ女性ヴォーカルが入ったりするところは「爽やか」ですらある、リターントゥフォーエバーのような「フュージョン」や最近よく聞く「コンテンポラリージャズ」というジャンルかもしれない。

このアルバムは二枚組で「earth」と「heaven」に分かれている、どちらも確かに「スピリチュア感」はあるが、「危うさ」や「泥臭さ」はない。

勿論それが悪いわけではない、「heaven」では「天国」という名の通り壮大な曲で始まる、「the space travelers〜」はまるで「2001年宇宙の旅」のテーマ曲にもなりそうだ。

しかし多くの曲は意外にも「爽やか」な印象を受けた、「ゴスペル」の要素もあると思うが、「ヴォーカル入り」の曲をそもそもジャズに求めていないし、この「ゴスペル的なヴォーカル」で「スピリチュアル感」や「壮大感」を出しているのだが、ちょっとやり過ぎな感じもある、あまりそこは評価できない。

「新世代の新しいジャズ」のような言われ方をしているが、今までこういった「ジャズ」はなかったのだろうかはちょっと分かりません。

アルバム全体を聴いて「ガツンと来るような衝撃」はありませんでした、悪くはないですが。

とりあえず「earth」の「one of one」と「heaven」の「the space〜」は必聴。

そして後藤氏が

「この作品はコルトレーンの「至上の愛」より「創造性」や「想像性」においては上」

と書いてあったが、確かに「アルバムの完成度」は上かもしれないが、後期に前衛化したコルトレーンやエレキ化したマイルスの「訳の分からないかっこよさ」にはやはり敵わない気がする。

ちょっと期待して聴いてみましたが、自分が求めるジャズとはちょっと違いました。

しかしそれとは別にアルバム自体は完成度が高く何度も聴く価値のあるものであることは確かだと思う。

とりあえず感想は自分の勝手な感想なので気になった人は各々聴いて判断して下さい。

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