Miles Davis「cookin」

大概マイルスに関する本を読むとエレクトロニックマイルスを取り上げるので、アコースティック期のマイルスの存在を忘れていたが。

自分が一番最初に聴いたアコースティック期のマイルスのアルバムが「cookin」だった。

そして再度「cookin」を聴いてみる。

「cookin」はマラソンセッションの中のアルバムで他は「workin」「steamin」「relaxin」だが、全て純粋なジャズのアルバムである。

一曲目の「my funny valentine 」を聴くと、「アコースティック期のマイルスは良かったが、エレキ化したマイルスは受け付けない」というジャズリスナーがいるのも頷ける。

例えば今までピアノでラブソング系のバラードを歌っていた人が急にエレキギターを歪ませ酒やドラッグ、死や破壊を歌い始めたら誰だって拒否反応を示して当然といえば当然かもしれない。

とはいえこのアルバムでは、フィリージョージョーンズという人のドラムがかなり全面に出ていて、ソロを取る時間も多い、かなり「ロックらしい」アルバムでもある。

マラソンセッションというのはプレステッジにレコード契約が4枚分残っていた為にマイルスが「一気に録音してしまえ」的なアルバム群なのだが、しかしどれもかなり良い。マイルスのアコースティック期の純粋なジャズを聴きたい人だけでなく、ジャズ初心者にも勧められるような気がする。

実はこのアルバムにはジョンコルトレーンも参加している、コルトレーンはマイルスに見出されたが、彼を観た客は「何故あんな下手なやつを入れたのか?」などと言われたのは有名な話である。

その後コルトレーンは開眼し、「ジャズ界の巨人」となるわけだが、ビルエヴァンスやチックコリア、キースジャレットもそうだが、マイルスが他のミュージシャンの才能を観る眼にハズレはないのかもしれない。

自分が現時点でマイルスを聴いたのはエレキ化したマイルスが殆どだった、しかしマラソンセッションやアコースティック期のマイルスも当然良い。

マラソンセッションの3年後に「kind of blue」を作りその10年後にロックがジャズに変わって音楽シーンの中心になり、その風を感じたマイルスは「bitches blew」を作るわけだが。

自分がアコースティック期のマイルスとエレキ化したマイルス両方聴いて思ったことがある、マイルスが音楽を作る際に常に意識していることは…

「音楽そのものが常にクールであることとヒップであること」

要はそれだけであったりするのだが、自分がマラソンセッションの作品とエレキ化したマイルス両方を聴いていると確かにそれを感じたりする。

エレキ化したマイルスとアコースティック期のマイルスは180度音楽性が変わったように聴こえるが、実際マイルスのやっていることの根底は変わっていないのかもしれない。

…ということが「cookin」やマラソンセッションを聴いて分かったことでもある。

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