Blankey Jet City 「vanishing point」

ブランキージェットシティが解散したのは2000年、その13年後に最後のツアーのドキュメンタリー映画「vanishing point」を自分は映画では観ていないが、DVDが出たその日買って直ぐに観た覚えがある。

彼らの目標はとにかく「かっこいい音楽がやりたい」それだけだが、「かっこいい音楽」といっても人によって様々だが、ブランキーの音楽性は主にダークで退廃的な世界観とギター、ベース、ドラムが剥き出しのストレートなサウンドだが、他のバンドとの大きな違いはやはり浅井健一の独特な詩であることは何度か書いた。

ブランキーの解散話はメンバー間でしばしばあったらしく、「skunk」リリース後にもあったみたいだが、しかし「解散してどうするんだ」という話になり、結局は10年の活動となる、こういった音楽性だとメンバーが直ぐにぶつかり解散してしまうような気がするが、意外と長く続いたような気がする。

3人の見た目はかなり強面だが、ステージのパフォーマンスとは違い普段は穏やかな人達だったりする。

「herlem jets」リリース後解散が決まり、最後のツアーが始まる。

しばらくはツアーは順調で上手く進行するのだが、ツアーの中盤あたりから演奏の歯車が合わなくなる。

ライブバンドとしては最強の彼らのはずだが、解散が決まったからといって手を抜くようなことはあるわけがないにしても、どうも3人の呼吸が合わない。

楽屋に帰ったメンバーだが、明らかに空気が悪い。

照井「ベースどんな位置にある?それすらも分からんのだわ」

浅井「言ってることは分かるよ、達也のドラムが前に出ると、ベースの音が消えちゃうんだわ」

照井「悔いのないライブがやりたいんだわ、毎回」

浅井「達也の調子も悪いんだと思う、しゃーない」

こんなやりとりがあり、3人の呼吸を合わせようとし、次のライブを行うが、やはり彼らの調子は戻らない。

照井「たまにはがっちり固まろう」

中村「俺は気持ちいいと思ったけど」

浅井「あまり全体的に合ってない」

照井「セッション辞めようか?」

浅井「やる気分じゃないでしょ」

照井「恥さらすようなもんだ」

メンバーの演奏力の高さは誰も疑いの余地はないと思うし、今までずっとそうだったはずだが…何故演奏が合わなくなってしまったのだろう?そしてまた次のライブ終了後、やりとりは続く。

浅井「考えても答えがない、思いっきりやるしかない」

照井「分かるけど、3人が一つの方向に動かすことはできると思うんだわ、今までやってきたブランキーのノリってあるじゃん?走り出したら止まらないっていうのが俺らのビートだと思うんだわ、だけどそれをやってないと思うんだわ」

中村「俺は今日ニュアンスを意識した演奏をしていると思ってるんだわ」

浅井「そうじゃない方が良かったと思う」

照井「別に完璧な演奏なんか求めてないんだわ、俺たち自身弾けてれば、客もそれで納得してくれると思うんだわ、俺たちが弾けてなければ「ブランキーどうしちゃたんだよ」ってなると思う」

浅井「みんなストレスは同じだけある、皆んなでゴキゲンに行ってない限りは同じじゃん、頑張ってやろうよ」

今までこういった感じに調子が悪い時があったのだろうか?やはり解散が決まりメンバー各々ブランキーより別の所に意識が向いてしまったのだろうか?

…しかし何故か彼らはこの会話を境に調子をとり戻す。

演奏がガッチリ合いメンバーにも笑顔が戻る(良かった)

やはり調子が良い時の彼らは素晴らしいし、かっこいい、自分も映像を観ていて「これだよ、これ!」と1人で勝手に思ってしまった(笑)

そして本来の調子を取り戻したまま、横浜アリーナでツアーを終える、最後の曲は「baby baby」だった、最終日の横浜アリーナのライブは確実にライブアルバムの名盤だと思う(本当の最後はフジロックだが)

このドキュメンタリーで印象に残ったのは照井利行だった、多分、彼の言葉でメンバーは覚醒して本来の調子を取り戻したのだと思う。

ベースもドラムを凄いに決まっているが、やはり1番凄いのは浅井健一だと思う、浅井健一のギターリフ、ソロはかなり難しい、しかも歌と同士にあの難しいギタープレイをするのは殆ど超人だと思う、実際彼のプレイをコピーしようとした人は分かると思うが、なかなか歌と指の動きがシンクロできないのだ。

自分のように簡単なコードを弾き語っているのとはわけが違うのである(笑)

自分はブランキー解散後のメンバーの曲をしばらくは聴いていたが、今は全く聴いていない、悪いとは言わないが、ブランキーほどの曲があるとは思えないからだ。

バンド解散後、メンバーあまりブランキーのことを話さない。例えば照井利行の現在たまに更新しているブログを読むとブランキーのメンバーだったことやその音楽性について否定的に捉えているようにすら思える。 

しかし自分はブランキージェットシティの音楽は一生聴き続けると思う。

年齢とともに聴かなくなった音楽や「なんで昔あんなに聴いていたのだろう?」と思うようなバンドや音楽ももちろんある。

彼らの曲にミリオンセラーになるような曲はない、歌が上手いわけでも、特別ルックスが良いわけでもない、東京ドームを満員にできるわけでもない。

しかしなぜかは上手く説明できないが、その音楽を聞き返すと「なぜ自分は音楽を好きになったのか?」必ずその理由を思い出させてくれる、特別なバンドなのである。

バンドが解散して24年、このドキュメンタリー映画からもう13年が経つが、日本で大きなインパクトを受けたバンドは自分は彼らが最後になるかもしれない。

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