Miles Davis 「1958マイルス」

自分が最初のほうに聴いたジャズだったと思う。

何せジャズを聴き始めた頃はマイルスやビルエヴァンスぐらいしか名前を知らなかったかったからだ。

最初マイルスのトランペットを聴いた時、素人の感想としては「何だが迫力のない音色だな」と単純に思ったのだが、マイルスのミュートされたトランペットの音色は当時ポップス界の人気歌手だったフナンクシナトラの歌い方に影響されたものである。

マイルスは敢えてそういった奏法を行っていたのだった。

どちらかと言うと参加ミュージシャンであったキャノンボールアダレイやジョンコルトレーンのほうが(当時は)「らしい」音色に聴こえたものだが。

このアルバムでは「kind of blue」誕生前夜でメンバーも後に「ジャズ界の巨人」と言われる大物たちが集まっている。

一曲目の「on green dolphin street」はジャズのナンバーとして演奏されるのは殆どなかったらしいが素晴らしい曲でこのアルバムで1番聴いて欲しいのはこの曲だったりする。

「kind of blue」に収録されても違和感がない、というかそれらの曲以上に素晴らしい出来で今聴くとマイルスのミュートトランペットは音数の少ないマイルスの音楽性とよくマッチしているようだ。

「love for sale」も良い感じで、「something else」の枯葉よりテンポアップしているがかっこいい。「something else 」はキャノンボールアダレイがリーダーとなっているが、マイルスがいなかったらああいった出来にはならなかっただろうし。

というか全ての曲が緻密で繊細な演奏である。

「kind of blue」は民族楽器の「カリンバ」をヒントに作られ、「モード」という限られた音階で表現するものだった目まぐるしくコードチェンジするビバップとは対照的なものである。

チャーリーパーカーが師であったマイルスだがその「師」が生み出したビバップに「うまく乗れなかった」が、その後師とは全く別の手法でジャズ界に革命を起こし「帝王」と呼ばれるようになる。

マイルスが亡くなってからかなりの年月が経つが今現在ジャズというジャンルはどのくらい人々に関心を持たれているのだろう?

少し前「blue giants」という映画が公開され、原作はかなり売れているみたいだが、自分は正直ジャズというジャンルは厳しい状況だと思う。

とはいえジャズ自体が盛り上がろうが、盛り上がらなかろうが自分には関係ないが、なんとなく一部のマニア向けのジャンルになっているような。

やはりその原因は

「マイルスデイヴィスのようなカリスマ性のあるアイコンがいないから」

だと勝手に思っている。

…とりあえず「1958マイルス」は良いです、一曲目の「on green dolphin street」だけでも。

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