2020/09/12

起きた。今朝はコッフィー。昨晩はぐっすり寝て、起きたのは12時過ぎだった。ゼミで発表を行う時間が迫っていたので、食べなかった。とても感覚的なものなのだが、ゼミの直前には固形物を食べないほうが調子がよいので、この慣習に従った。

たびたび当日記(デフノート)でも話題にしているので、ご承知の方も多いと思うものの、あらためて説明すると。原則毎週土曜にやっているこのゼミは、参加者それぞれがお好みで発表の話題を持ち寄り、聞く方は聞く方でお好みのことを質問・コメントとして申し上げるというタイプの、(そういう意味では)ゆるいゼミである。

この一連のゼミにおいて僕は、オンライン会議システムの部屋のURLを参加者に通知するといった庶務をしつつ、参加者としてお話を聞かせてもらう、という役回りをこれまで果たしてきた。そして、今年の春ころから約半年間参加させていただいているものの、発表するのは実は今回が初めてであった。と、いうのも、ゼミに集まる方々が数学でも数学基礎論を専門とする研究者であるので、自分が発表するその分野のネタがなかったからである。

「もしいつか本当に誰も発表する機会がない回ができてしまったら、僕がCollatz予想の話でもします(笑)」と冗談のようにいっていたのだけれども、半年経って、たまたま本当にそのような機会ができたので、頭を捻って、これならこのゼミの参加者にも関心をもっていただけるのでは、と考えて一席設けさせていただいた。

今日の発表テーマは「Collatz予想と計算理論の関わり」である。特にJ.H.Conwayによる「一般化Collatz予想の決定不能性」に関する解説(概説)を行った。ちょうど3年前、修士2年の初秋頃に、修士論文のネタを探しつつ読んでいた諸々の論文の中の1つで、研究室のゼミでも発表した内容である。

すごく大雑把に言うと、Collatz予想という未解決問題があって、この問題の難しさが一般的に認知されてから、かれこれ50年ほど証明が果たされていないのだけど……。この問題をずっと広く拡張してしまうと「決して証明をつくることができない」ことが、Conwayの示したことである。なんだか不思議な感じがするけど、世の中にはそういう問題がある。

コンピュータにできないこととは何か?」と素朴に聞かれたとき、何を想像するだろうか。「人間の心の機微は理解できないだろう」とか「おふくろの味は再現できまい」とか「恋と愛の違いを理解できない」とか、なんかそういう情緒的な方向に、話を持っていきたくないだろうか。

ところが実際には、至極お硬く「数学上の問題で、コンピュータに解けない問題がある」ことがはっきりと分かっていて、むしろ上で挙げた例のような情緒的な問題の方が、テクノロジーの進歩と人間の心の受容次第で肯定的に解決される余地がある……解ける希望のある問題であったりするのだ。

コンピュータに解けない問題として、最も有名なのは「停止性判定問題」だろう。これは大雑把に言うと「どんなコンピュータプログラムに対しても、それが(無限ループに陥らずに)停止するかを、コンピュータは判定できるか? (=そういうプログラムをつくれるか?)」という問題である。

結論から言うと、それはできない。もし、そういうプログラムがあったなら、「判定対象のプログラムが停止するなら無限ループに陥り、無限ループに陥るなら停止するプログラム」をつくれる。このプログラムにこのプログラムを判定させると、矛盾が起こる。

以上の例は、なんというか、コンピュータのためにつくった恣意的な反例のように思えるのだけど、この問題を帰着点にすることで、全くもっと自然な数学の問題に見える問題であって、コンピュータに解けない問題を無数につくることができるのである。

「一般化Collatz予想」もそういう解けない問題の一員である、と決定不能問題のリストに加わえたのが、J.H.Conway氏である。この方はみなさんがきっと人生のどこかで一度はみているだろう「ライフゲーム」の作者でもある。残念ながらConway氏は今年2020年に亡くなった。自分の修士論文は、彼の考えた計算モデルの拡張によって、Collatz予想にまつわる諸性質に別証明を与えるというものであった。それが後に再度拡張され、より広い問題で通用することがわかり、それが今の自分の研究の主要なテーマとなっている。

そのようなことであるから、Conway氏には個人的に恩義を感じており、人生のどこかでお会いしたいと思っていたのだが、ついに叶わなかった。自分ひとりの気持ちとして、追悼Conwayの意味も込めて、今日のゼミを行った。

当初、1時間くらいでさらっと……などと予告していたが全然そんなことはなかったぜ。いつものことである。Collatz予想について話したいことは山ほどあり、読者が希望するなら3日3晩お聞かせすることも可能である。確実に夢に出るだろう。Collatz予想が未解決問題のうちは、それは出口のない悪夢でもある。

なんとか真実に近づきたい。そうおもって与えられた機会で数学をやっている。やっていくんだぜ。

- 睡眠時間 3-11 (8h)
- 筋トレ:下半身コース+レッグレイズ

明日こそ本当に休みする。たまにはゲームとかアニメの話もしたいですね。

(2020/09/13 へ続く)

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