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SEC(米証券取引委員会)がBinanceとCoinbaseを提訴、背景には?

今月初旬、アメリカの規制当局SEC(米証券取引委員会)が立て続けに大手暗号資産取引所BinanceとCoinbaseを提訴しました。この発表を受けて暗号資産市場は軒並み大きく下落し、業界全体に余波が及んでいます。

SECは去年、同じく大手暗号資産取引所FTXおよびCEOのサム・バンクマン・フリード氏を提訴しており、BinanceとCoinbaseは米国内での営業を続けるならばSECとの正面衝突を避けられない状況に立たされています。

提訴内容

それでは、具体的な提訴内容を見ていきましょう。2社に対するSECの提訴内容の中身を比べると、Binanceの方がCoinbaseよりも重大であることが一目瞭然となります。

Binanceは

  • 無登録有価証券販売

  • 無許可に顧客の暗号資産・法定通貨を分割管理せずに恣意的に移動させた

  • 意図的な取引量釣り上げ(ウォッシュトレード)を行なった

という主に3つの疑いに問われています。CEOのチャンポン・ジャオ(CZ)氏は別会社とされていたBinance USの顧客資産を無断で流用し、Sigma Chainという自身の会社で利用していたという極めて深刻な疑惑をかけられています。

BinanceはFTX事件以来顧客の資産管理に関する外部監査が十分なレベルに達していないとの批判にさらされることが多く、もしこれらの疑いが事実であるならば世界最大手の取引所の運営に支障が出る可能性も出てきます。

一方でCoinbaseは、無登録業者として米国居住者にブローカー、証券取引所、清算機関のサービスを提供しているとの提訴内容です。SECからは、顧客から得る取引手数料によって自社の収益を高めるために計画的に暗号資産をトレーディングできるようにし、投資家保護につとめなかったことが問題点として指摘されています。

共通しているのは「取引している暗号資産に証券性が認められ、それを無登録で取り扱っている」という点です。

Binanceに止まらず、BIG4コンサルの一つであるDeloitteに監査を受けていてコンプライアンス(規制遵守)に細心の注意を払っているCoinbaseにまで提訴が及んでいることを考慮すると、SECが本格的に暗号資産を取り締まる姿勢を明らかにした印象です。

web3業界からは「暗号資産の取引そのものに問題性を見出している」との批判が噴出し、今回の提訴がクリプト界への宣戦布告であるとしてSECとの対決姿勢をあらわにする人が少なくありません。

SEC提訴の背景は?指摘されている疑問点

今回の騒動には「暗号資産には本質的な価値がなく、詐欺同様取り締まりの対象にすべきである」というSECの本音が見え隠れします。

委員長のゲンスラー氏は今回の提訴に際して「新しいデジタル通貨は必要ない、なぜならデジタル通貨はすでに存在しているからだ。米ドル、ユーロ、円は今やすべてデジタルだ。」と発言しており、明らかに暗号資産自体の存在価値に懐疑的な見方をしています。

Coinbase CEOのブライアン・アームストロング氏はツイッターで今回の提訴に対する疑問点を挙げ、SECの主張に異議を唱えています。

  1. 2021年に弊社はSECに事業内容審査を受け、公開企業となることを許可された。

  2. 「暗号資産を証券として登録する」という機会はなかった、何度も試したが全て失敗に終わっている。そのため、私たちは証券を上場していないし、審査した資産の大半を却下している。

  3. SECとCFTC(米商品先物取引委員会)は相反する声明を出しており、何が証券で何が商品なのかについての合意さえない。

  4. 米国議会は事態を収拾するための新たな法案を提出していて、他の国々も明確なルールを整備しようと動き出している。

暗号資産を「商品」とするCFTC(米商品先物取引委員会)と暗号資産を「証券」と解釈するSECの間で規制合意がとれず、アメリカ政府内の暗号資産政策に対する一貫性のなさが露呈しています。

暗号資産業界内では、FTX崩壊によって恥をかかされたSECが(FTXはクリプト規制考案に非常に協力的であり、破綻後にSECはなぜFTXが詐欺組織だった事実を見破れなかったのかを米議会から追及されました)強硬的な規制に踏み切ることによって過去の誤ちを払拭しようとしているのではないか、という憶測も飛び交っています。

証券関連法に適合する方向での事業体制の見直しが中央集権型取引所(CEX)に求められ、その枠組みの外に存在する分散型取引所(DEX)やDeFiサービスの存在意義がさらに増していくことも考えられます。

しかし上記のサービスにもSECの手が及ばない保証はなく、Krakenやその他の暗号資産取引所にも提訴が差し迫っている可能性があります。どちらにしても、web3の脱アメリカ化が今後一層進んでいくことは間違いなさそうです。

ブロックチェーンや、その他web3事業についてお悩みのある方はぜひDeFimansへご相談下さい!

(勉強会:北野、文:山田)



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