見出し画像

ただいまの場所

私は自分の生まれ育った京都という街が嫌いだった。
東京や大阪は、どんどん街が発達し、面白い施設やお店ができるのに、京都はいつまで経っても、お寺や、抹茶、「和」というイメージが強く、変わらない。
そんな変わらない街がつまらなくて、嫌いだった。

だから学生の頃から京都を出ることしか考えていなくて、大学時代はほとんど大阪で過ごし、社会人になったと同時に東京へ上京した。

でも、不思議なもので、東京で住む場所を決めるときは地元に雰囲気が似ている街にしたし、長期休暇のたびに、必ず京都に帰ってきた。
そして必ず帰ってきて、まず行く場所が鴨川だった。

鴨川自体に実はそんな思い出が詰まっているわけではない。
だけどこのなんともいえない、穏やかな雰囲気に魅了されてしまう。
鴨川沿いを歩いていると、どうしてだか泣きそうになる。

タスクに追われて、他人の評価ばかり気にして、自分を追い詰め生き急いでいた私を優しく包み込んでくれるような、「そんなに生き急いでどこにいくのさ、ちょっとここらで寝っ転がっていきなよ」と言われているような感じがする。

鴨川にはいろんな人たちがいる。
友人とワイワイしている人、楽器を演奏している人、お昼寝している人、ボーッとしている人。
みんな人の目なんか気にせず、やりたいことを好きなようにやっている。

京都に帰ってきて、1年ほどフルリモートで会社員をした後に、会社を退職をした。
物理的にも精神的にも孤独を感じながら働いていたので、人との関わりを強く求めて、コワーキングスペースでスタッフとして働き始めたのだけど、そこで出会う人はみんなユニークで、その人らしい生き方をしていて、素敵だなと思った。

人に出会い、その人の生き方や考え方を知っていくと、自分がいかに狭い世界で生きてきたのかがわかる。
次の就職先を探すときも、これまでの経験の延長で、できること、やりたいことを考えていたけど、ほんとにそれでいいんだっけ?と何度も思った。

何度も思い、考える中で、少しずつ本当はこういう生き方がしたいだ…!という本心が出てきた。

京都は私にとって、本当はどう生きたいのか気づかせてくれる場所なのかもしれない。

この記事が参加している募集

この街がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?