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小さな積み重ねで医療×AIによる大きな革新を。医療現場に技術で貢献する「メドメイン」

DEEPCOREの出資先であるメドメインは、「テクノロジーでいつでもどこでも必要な医療が受けられる世界をつくる」をミッションに掲げ、画像解析AIによって癌の検出を支援する「PidPort」を提供しています。当初医師を志していた代表の飯塚統さんは、なぜこの領域に取り組むことにしたのか。また、今後の展望についてもインタビューしました。

<プロフィール>
メドメイン株式会社 代表取締役 
飯塚 統(Osamu Iizuka)
九州大学医学部医学科在学中に、機械学習や深層学習、Webを中心とした多くのソフトウェア開発を行う。ソフトウェアエンジニアとしてベンチャー企業勤務、シリコンバレーのピッチコンテスト優勝を経て、2018年にメドメイン株式会社を創業。Forbes 30 Under 30 Asia、九州大学総長賞等受賞。

医療を新しい技術で支えたい

——医師を目指していたところから、起業の道を選ぶに至った経緯を教えてください

飯塚:宇宙や物理学に興味があり、素粒子物理学者になることが幼少期の夢だったのですが、18歳の時に持病で長期入院をしたことがきっかけで医学の道に進む事を決意し、医学部に入学しました。入学当初は、新しい技術で医療に貢献し、根底から医療を支えたいという思いで研究医を目指し、データ解析でプログラミングを積極的に行うようになりました。

また、その延長でソフトウェア開発にも関心を持つようになり、勉強しているうちに医療現場の課題を解決するようなアプリやシステムを自分で作れたらいいなと考えるようになりました。

そうして、医療アプリやシステム開発を自身で行なっていたのですが、作ったものを多くの人に継続的に使ってもらうには、きちんと保守管理と改善がされていく状況が必要なので、会社として取り組むのがいいのではないか、と徐々に起業が視野に入ってきたんです。
大学2年生の頃、機械学習の技術を用いてつくった細胞のトラッキングシステムをみた教授に「病理診断に応用できそうだ」と教えてもらったのが、この領域で事業を立ち上げるきっかけになっていますね。

——そこからすぐに起業したのですか?

飯塚:いえ、どの段階で会社を作るのか、かなり悩んでいました。

2017年11月に、現在の事業である画像解析AIや医療のデジタル化に貢献するアイデアと初期的なプロトタイプを持ってシリコンバレーに行きました。そこでたまたま開催していたピッチコンテストに飛び入り参加をさせてもらったんです。そしたらなんと優勝することができて、VCの方からも投資のお話をいただくようになりました。それがきっかけで、「メディカルテックの企業を経営しよう」と心が決まりました。

——DEEPCOREとの出会いはいつ頃だったのでしょうか

飯塚:DEEPCOREさんには2018年1月の起業後、すぐのタイミングで初めてお会いしました。知人の紹介で、福岡にある自宅兼オフィスへ仁木さんが訪問してくれたのです。

ファンドが立ち上がる前か立ち上がった直後かといったタイミングで、事業にとても興味を持っていただけました。そこから話が進んで実際に投資いただいたのですが、たしかDEEPCOREさんの4社目の出資先だったと記憶しています。

——お互い初期フェーズでの出会いだったのですね

飯塚:はい、DEEPCOREさんは一番最初の投資家として長く応援してくれています。今は仁木さんには社外取締役として参加いただいていますが、まだまだ組織が小さかった頃は採用や広報活動についてもDEEPCOREさんからご支援いただきました。

非常に優しく温かいコミュニケーションを取ってくださる方ですが、大事な場面ではこれまでのご経験も踏まえて的確なアドバイスをしてくれる大切で心強い存在です。

医療×AI。メディカルテックのスタートアップ

——改めてメドメインのサービスについて教えてもらえますか

飯塚:「PidPort」というデジタル病理支援AI搭載クラウドシステムを提供しています。病理とは病気で異常になった細胞や組織を観察して、どのような状態なのか、原因は何なのかを読み解くことを指します。例えば、患者さんの腫瘍が良性なのか悪性なのか判断したいとき、組織や細胞を顕微鏡で観察して診断を行うといったものです。癌の診断をイメージしてもらえるとよいかもしれません。

この診断は「病理医」という専門の医師が行うとても重要なものなのですが、この病理医が日本国内では顕著に、また世界的に見てもかなり不足しているんです。それゆえに医療機関は労働負荷の高い状況にあり、患者さんにとっては診断結果が出るまでに時間がかかり、その間に癌が進行してしまうこともあります。また、国や地域によって診断水準に差がある状況もあるんです。このような課題を解決するために「PidPort」を開発しました。

——検査結果が出るのに何週間もかかるのは何故だろうと思っていましたが、そういう背景があったのですね。具体的には「PidPort」でどんなことができるのでしょうか

飯塚:AIによる画像解析で癌細胞の検出を行って、病理診断を支援します。もちろん最終的には人間の目で見て診断をするのですが、異常がありそうな組織の領域を検出したり、癌の見落としがないかダブルチェックで利用できたりと、病理診断の効率と質を向上させることができるんです。

また、その解析された画像を適切なセキュリティ環境と高い検索性のもとクラウド上に保管することもできます。

——病理領域のAIならではの特徴がありそうですね

飯塚:実はレントゲンや超音波といった検査は基本的にデジタルをベースとして診断がされていっているのですが、病理だけは唯一、顕微鏡を使ってアナログに診断がされていく領域なのです。だからこの領域でAIを活用しようとする場合、まずは顕微鏡で観察されるプレパラートのデジタル化をして、そのデータをAIに学習させていかなければなりません。

デジタル化が進んでいないからこそ介在価値も大きいですし、言い換えると参入障壁も高くなることから、自分たちなら中長期的に強みを持って取り組んでいけると考えています。
実際にこれまで実績のある研究開発ができていて、病理AIに関する論文も20本発表しています。

プレパラートのデジタル化を行うイメージングセンターの様子

小さな信頼の積み重ねが大きな実績につながる

——高いハードルをどのように乗り越えてきたのでしょうか

飯塚:振り返ると大変なことばかりだったのですが、やはりデータ提供やAI開発に協力してくださる医療機関や研究機関を増やすことでしょうか。
今では日本・インド・タイ・アメリカ・シンガポールなど80以上の施設が協力してくれていて、そのおかげで開発を進めることができています。日本だけでみると、大学病院や医学部を持つ大学の4分の1にあたる施設数です。

この事業を始めたときは立ち上がったばかりで、まだプロトタイプしかない企業に対して、病院としてデータを提供する価値があるのか、AIの開発をやり遂げられるのかなど疑問を投げかけられることも多かったです。

その中でも少数ですが、私たちの熱意に押されて応援してくださる医療機関さんがいました。そうした施設から提供を受けたデータを使ってAI開発をし、現在では多くの医療機関さんが開発に加わってくださっています。

元々はAI開発用のデータ収集を高品質かつ迅速に行うために設立したスキャニングセンターが、プレパラートを日々の業務のためにデータ化したいという医療機関側のニーズにも応えることができたため、ビジネス面においても好循環なモデルをつくることができ、今に繋がっていると思います。

——ひとつひとつの小さな積み重ねが今の実績に繋がっているんですね

飯塚:スタートアップだからこそ、チャレンジをしてマーケットに変化を起こしていく必要があります。

しかし、私たちが取り組む医療という領域は患者さんの命に関わる領域です。何かトラブルが起きると医療機関さんや患者さんに大きな迷惑をかけてしまうことになります。しっかりとした事業として続けていく必要がありますし、革新と安全のバランスを取ることも重要です。

非常にハードルが高い環境だとは感じていますが、こういう世界を実現したいという思いを強く持って、ぶれずに、諦めずに進んでいくことを大事にしていきたいです。

病理AI解析ソリューション 「PidPort」の画面イメージ

組織とサービスを成長させ、グローバルで使われるサービスへ

——今後はどんなマイルストーンを描いていますか

飯塚:これまでは現場のワークフローを理解して、より利便性高く使ってもらうためのプロダクトづくりや高精度のAI開発に注力してきました。おかげさまで非常に順調に事業を推進することができています。

ここから2〜3年は、医療現場への普及やより大きな付加価値の提供を重視して取り組んでいきたいです。合わせて国内だけではなくグローバルなマーケットにもしっかりアプローチしていきたいと考えています。その上で、自社だけでなく、各領域に強みのある企業との業務提携の取り組みも進めています。

より利便性高く当社のサービスを利用してもらおうとしたとき、病理領域のみで完結するサービスではなく、他の院内システム等とのデータ連携も取れた方が便利であるため、各社との業務提携を通じたシステム連携の取り組みを進めています。

——組織も大きくなっていきそうですね

飯塚:はい、今は40名ほどの組織なのですが、今後の事業成長に伴って様々な方のお力が必要です。誰しもが関わるであろう癌領域の課題を解決する事業ですし、現在の事業フェーズはとてもおもしろく、またやりがいも大きいと思います。ぜひ興味を持ってくださる方を増やしたいですし、お気軽にご連絡いただきたいです。
メドメインの事業領域にハマってくれる仲間が増えていくとうれしいです。

——ありがとうございました!


■会社概要

会社名:メドメイン株式会社 (Medmain Inc.)
設立日:2018年1月11日
事業内容:医療ソフトウェア・クラウドサービスの企画・開発・運営および販売
代表取締役/CEO:飯塚 統
【所在地:[東京オフィス] 東京都港区南青山2-10-11 A青山ビル2F / [福岡オフィス] 福岡県福岡市中央区赤坂2-4−5 シャトレサクシーズ104

コーポレートサイト:https://medmain.com
プロダクトサイト:https://service.medmain.com


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