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キャピタリストとして起業家の2〜3歩先を照らす。上場企業やスタートアップの経営企画・管理、株式アナリストなどの幅広い経験を活かす

2022年7月よりDEEPCOREでキャピタリストとして活動する三宅 俊毅に、これまでのキャリアや投資先との関わり方についてインタビューしました。

<プロフィール>
三宅 俊毅(Toshiki Miyake)
DEEPCOREで、投資を担当。それ以前は、事業会社管理会計業務などを経て、UBS証券株式調査部にて株式セルサイドアナリスト、プライスウォーターハウスクーパース(現PwCアドバイザリー)にてM&Aアドバイザリー業務に従事。その後、EdTechスタートアップに参画し、IPOを想定した経営管理体制構築や資本提携先CVCへの出向・スタートアップ投資に従事。帰任後は、経営戦略室執行役員としてIPO後の既存事業バリューアップやM&Aターゲットの初期的調査、投融資先管理に従事する傍ら、JETRO EdTechアドバイザーとしても活動。2022年7月より現職。慶應義塾大学総合政策学部卒業、一橋大学大学院経営管理研究科金融戦略・経営財務プログラム(MBA)在籍中。米国公認会計士。

投資家と事業会社の両方を当事者として経験。そこから見えた、スタートアップの成長フェーズの課題と必要な視点

 ——DEEPCOREに入るまでに、様々な仕事を経験されていますよね。

上場企業からスタートアップまで、多岐にわたる立場で投資やファイナンスに携わってきました。投資家と事業会社、その両方の立場を経験しましたし、資本市場と事業に関わる領域全般にふれてきたことは、キャリアの特徴かなと思います。

——具体的にどんな仕事を経験したのか教えてください。

上場会社の管理会計にも携わりましたし、未上場スタートアップの経営管理体制の構築や事業バリューアップ、CVCを通じた投資にも携わりました。

証券会社で株式のアナリストをしていたときは、上場株の発行体の事業をリサーチし、それに基づいて機関投資家に対して個別株の投資アイディアを提供していました。また、M&Aのアドバイザリーを通じて、M&Aをする側・される側の両方の現場も経験しています。

事業会社と投資家という立場の違いもありますし、事業会社も成長フェーズによってそれぞれ異なる難しさがあるのを、全て当事者として経験してきました。

——事業会社では、成長フェーズによってどんな課題を経験してきましたか。

初期のスタートアップは、仲間を集めながら事業を進捗させなければなりません。経験の有無にかかわらず、自分でなんでもやらなければならないのは、DEEPCOREが支援しているアーリーステージの多くの企業も直面している苦労かと思います。

そこから少し成長して30〜50名組織の規模になると、“組織としていかに事業を進めるか”という、人が増えたからこその課題が生まれます。指示を出して動いてもらう難しさや、会社として同じベクトルに向かう難しさがあり、チームマネジメントという新しい観点が必要になります。

そこからさらに事業や組織が成長して上場を目指すフェーズになると、投資家をはじめとするステークホルダーに透明性の高い情報を開示し、資本市場の健全性を保つ必要が生じます。ここで誤った情報を開示すると株式市場に影響するので、重大な責務です。組織もルールに沿って従業員が動けるようにするための仕組み化・制度化を進めていきます。

——あらゆるステージの事業会社側の目線を持っているんですね。

スタートアップは基本的にそれぞれの過程をまだ経験していないので、出てきた課題を都度クリアしなければなりません。
知らないからこそ陥る困難や落とし穴があると思いますが、そこに落ちなくていいなら落ちないに越したことはありませんよね。

僕は、多様な事業や成長ステージを経験し、それぞれで視点や判断基準を得てきました。
その経験を通じて、起業家がどういうシーンでどういう行動を取るべきか、2〜3歩先を照らすことができる。それが起業家の皆さんに対する価値提供になればいいなと思っています。

——当事者だったからこそ、起業家の悩みも温度感を持って理解できるんですね。

そうですね。悩みはよりリアルに共感することができると思います。

うまくいっているときは多少の不満があっても将来的なリターンを想像して頑張れますが、うまくいっていないときは、他責にするメンバーが増えてコミュニケーションが悪化することなどもあります。

そういう悪い時期に、誠実に行動するには精神力が必要です。
経営者として責任感を持ってぐっと堪え、保身に走らずにリーダーシップを取る。僕もすごく精神がすり減るような苦しい局面を乗り越えるために耐えた経験がある。だから、少なくとも共感して一緒に知恵を絞ることができると思っています。

ビジネスは「目の前の人を動かす」こと。
事業はプロダクトを買ってもらわなきゃいけないですし、コーポレートは社内のメンバーに仕組みに沿って動いてもらわなきゃいけません。どれも、泥臭いことばかりです。

僕は、これまでのキャリアで得た学びを共有しながら、どんな課題が目の前に現れても、共感して一緒に紐解いていけるパートナーでありたいと考えています。

——DEEPCOREでの仕事とこれまでに経験してきた仕事は、どんな点が違いますか。

DEEPCOREはAI特化型のインキュベーターなので、いろいろな業界やテクノロジーに幅広く接する機会があります。やはりその点がいちばん異なる部分ですね。

もちろんこれまでもプラントエンジニアリング、証券会社でのメディアセクター(テレビ局や広告会社、コンテンツなど)のアナリスト、M&A、教育IT業界など、異なる業界や職種を通じ、それぞれ様々な経験をさせてもらいました。

でもDEEPCOREの場合、技術の社会実装を通じてリターンをもたらしうる事業であればどんな産業でも投資を検討します。まだジョインして9ヶ月ほどですが、ヘルスケア、Web3、電力の最適化、カーボンクレジットなど、接する業界やテクノロジーの幅はこれまでのどの仕事よりも広いです。僕にとっては新しい領域と事業自体の新規性も相まって、すごく新鮮ですね。

「良い投資家」の条件のひとつは、「良い経営者であれ」

——三宅さんが仕事において意識していること、大切にしていることは何ですか。

僕ら投資家は、リターンを試算するために財務指標やKPIなどファイナンスに関する様々な数値を見ますが、数値はあくまで事業の結果に過ぎません。その数値の裏側にある事業の実態、つまり何が現実に起こっているのかをきちんと理解することが大事だと思っています。

数字そのものは無機質ですが、それが生み出される背景には、人が汗をかいて事業を作って顧客に届けていくという、泥臭くて生々しい実態があるわけです。なので、まずはどんな人がどう動いているのかなど現場の実態を把握したうえで、結果としての数字と実態との関係を見ていくことを大切にしています。

——つまり、「定量的な数値」と「定性的な事実」を行ったり来たりしながら。

そうです。事業は、プロダクトを提供する事業者、プロダクト、顧客の三者を、いかに温度感を伴って理解できるかが大事。事業・競争環境や、関与する当事者の間でどういう力学が作用するのかを想像して、最終的に事業が成長するかどうかを判断しています。

「良い投資家」である条件のひとつは「良い経営者」であることだと考えています。起業家と同じ目線で議論ができて、かつ起業家にとって有用な知見やノウハウを提供できないといけません。

起業家は、事業の成長に集中しています。彼らに対し、投資家はいろいろな事業の研究や自らの経験を通じ、今後何が起こりうるかを一定語れるはず。起業家が気付いていないことや、近い将来、遠い将来に検討すべき論点を提示し、道の先を照らしてあげられる存在であるべきだと思っています。

同僚からの忘れられない言葉

——これまでにDEEPCOREの同僚からかけられた、印象的な言葉は何かありますか。

いくつかありますが、左さんがキャピタリストが目指すべき場所として、「投資に再現性を持たせられるようにしたい」と話していたのをよく覚えています。本当にそのとおりだなと思ったんです。

それぞれのスタートアップが全く異なる事業をやっているため投資先が置かれている状況は千差万別ですが、売上高や組織の規模、成長の段階に応じて、検討しておくべき共通の論点があるのではないかと思うんです。そんな知見を積み重ね、リターンを出すことに再現性を持たせることが、投資を科学することであり、キャピタリストとして「自分の軸」を作ることだと思うんですね。

この仕事って、一期一会で、投資をさせていただく会社もあれば、見送る会社もある。
ただ、結果はどうあれあらゆるスタートアップとの出会いから学んでいきたいと思っています。それらがキャピタリストとしての「自分の軸」に収斂していくのかなと思います。

「チームの一員」として。投資先の成長が自分の喜び

——三宅さんは、ご自身ではどういう人間だと思っていますか。

僕自身は、ずっとサッカーをやってきたので、「チームみんなで楽しく」みたいなところがあります。サッカーをするだけじゃなくて、一緒に飲んだり、遊びに行ったり。そういう、仲間と一緒に盛り上がるような文化が、自分の性格に根付いてるんじゃないかなと思います。

スタートアップ投資って、一旦投資したら同じ船に乗るわけじゃないですか。そして会社が成長し、描いていた世界が具現化されていけば、顧客や投資家など関わっている人たち全てが、そして社会が活性化し、ハッピーになっていきます。

なので、そこからは同じチームの一員として、会社の成長にとって大事だと思うことを全力でやります。

ひとつ例を挙げると、僕の担当投資先にバベルという会社があります。

——商談解析クラウドの「ailead」を提供するスタートアップですよね。

そうです。すでに競合も出始めてはいる領域ですが、バベル 代表の杉山さんは競争環境やサプライチェーン、力学を緻密に分析して、構築した競争優位を顧客の課題解決に繋げてプロダクトを伸ばしています。

バリューアップの一環としてバベルの顧客や投資家となりうる企業や人をご紹介すると、杉山さんをはじめとしたステークホルダーの皆さんからお礼を言っていただけるんです。でも僕としては担当キャピタリストとしてネットワークをご紹介するのは当たり前のことですし、「こちらこそありがとうございます」という感覚なんです。バベルにもっと成長してもらいたいっていう、ただその気持ちだけで。
僕も「チームバベル」の一員であり、バベルの幸せが自分の幸せでもあると思っています。

チームとなって、一緒に企業価値を向上させていくという関係性は素敵だと思いますし、自分の価値観と合っている気がします。

キャピタリストって、決まった「形」がない仕事だと思うんです。DEEPCOREのキャピタリストもそれぞれ価値提供の手法が違います。

価値提供は自分の経験や価値観といった人格そのもののような側面があり、それが事業成長に貢献できているか常に問われるのは、ある意味シビアな環境かもしれません。でもその分やりがいがあると思っています。

まだまだ様々な技術・領域の知識や経験など積み重ねていかなければならないことはたくさんあります。その中で多角的な視点に触れてきたキャリアは僕のキャピタリストとしての特徴だと思っているので、今後さらなる強みに昇華していけたらと思います。

▼採用情報
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