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📖『三人屋』原田ひ香

こんな朝ごはん食べたいなあ。

と、こんがり焼かれたトースト、その上で溶けるバターの塩味を想像しながら読み始めた。

原田ひ香さんの『三人屋』

読みすすめていくと、どうやら朝ごはんだけではないようだ。昼にはコシのある香川のうどん、夜には炊きたてふっくらツヤツヤご飯。どれも特別煌びやかなメニューではないが、その素朴さゆえに日本人にとって馴染み深く、ほっこり心まであたたかくなるような食事を思い浮かべることができる。

この3食は、とある3姉妹が時間帯別に営業している『ル・ジュール』というお店で提供されるメニューたち。似ていないようでどこか似ている、いや、似ていない???そんな姉妹。

店に訪れる人、それを食べる人や、3姉妹を取り囲むドラマを描いた1冊。

▷▶︎▷
きっとこの作品の世界の方は方向性は違えど傷ついていて、どこかに癒しを求めて生きているのだろう。

妻子がいるにも関わらず不貞働いたり、好きでもない異性と身体を重ねたり…
人には話せないずっしりとした過去があったり、どうやって生きていくか考えて心が潰れそうになったり…

自分とは違う生き方な為、私は同情できない方もいたけれど、でも、そういう人も真っ直ぐに生きられる人のことは眩しく見ているし、そういう風に生きられたら楽だと思う部分もきっとあって…

人を羨んだり、憧れに近づこうともがいたりする場面もあった。
渦中は正解のないトンネルを進んでいるような感覚になったが、でも正解は案外近いところにあるっていうのも"人生"って感じがしたねえ。物事を客観的に捉えるような冷静さ大事。

自分とは違ってそれぞれに濃いドラマがあるなーと思ったけど、一人ひとりに感情移入してどんどん読み進められた1冊でした。

私も丁寧な美味しいご飯食べようねえ。


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