否定の言葉を使うな
若い頃に目にした言葉で、年を取るごとになるほどなと思うものが2つある。
一つは、大島渚さんの言葉で「否定の言葉を使うな」というもの。
たしか奥様の小山明子さんが「主人は私が否定の言葉を使うと、『否定の言葉はそれをいいと思っている人を傷つけるから言い方を変えなさい』と注意する」とかなんとか、そんな趣旨のことをおっしゃっていた。
大島渚監督といえば、私にとっては朝まで生テレビのCMで怒鳴っているおじさんという印象しかなかったので、当時は「そんな細やかな配慮をする人なのか」と驚いただけだったけれど、自分が四十半ばを超えたあたりから、この言葉をふとした拍子に思い出すようになった。(無意識に使っちゃうけれど)
もう一つはたぶん井上ひさしさんの言葉だった気がするけれど「人生は被害者意識さえ持たなければ、たいてい上手くいく」というもの。
20年以上前に雑誌のエッセイに載っていたような記憶があるけれど、言葉の主は井上さんじゃないかもしれない。
誰の発言かはともかく、「被害者意識さえ持たなければ、たいていは上手くいく」というのは、年を取るごとに一つの真理だと感じるようになって、この言葉を意識するようになってから随分と生きやすくなった気がする。