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【#SAJ2021】データ革命とホークアイと”通訳”と。

こんにちは。でぃーだです。

ご存じの方にとっては今更中の今更といった内容ではありますが、
去る1/30(土) にスポーツアナリティクスジャパン2021(SAJ2021)がオンラインで開催されました。

今回で7回目となる本イベントは、様々な競技の選手強化の最前線で活躍するアナリスト集団「日本スポーツアナリスト協会(JSAA)」が立ち上げ、その規模・コンテンツの多様性ともに年々拡張を続けてきました。
(参考:http://jsaa.org/saj2021/

…と物知り顔でここまで書いてきた私ですが、恥ずかしながらこのイベントについて殆ど知りませんでした。
しかし、ひょんなことからオンラインで参加し、今回このnoteを書くに至りました…。


1.きっかけ

本イベントを知ったきっかけはトレバー・バウアーのTwitter(@BauerOutage)に関する話題をふとタイムラインで見たことでした。

バウアーとは、60試合の短縮シーズンとなった2020年のMLBで、我らがダルビッシュ有や2年連続受賞中のジェイコブ・デグロムとの熾烈な争いを制してアメリカンリーグのサイ・ヤング賞(MLB投手最大の栄誉)に輝いた、まさに世界を代表する投手の1人です。

また、バウアーは科学的分析への見識も深く、現在のテクノロジーを駆使する野球のトップランナーともいえる人物であります。その影響もあってか2019年オフには来日して様々な場所で意見交換をしたことでも知られていますね。

上記報道によると、台風の影響で当初日程から変更になってしまいましたが、当初の来日予定では戸田球場(!)に訪れる予定だったり、実際に来日した際にも神宮球場にて石川雅規とも交流していたみたいですね。


合わせて、彼は様々な面で(詳細は割愛しますが)ユニーク()な人物としても知られており、FA市場最大の目玉となった2020年オフには彼の日本好きも相まってMLB球団だけではなく日本球界入りを示唆するなどオフシーズンを盛り上げました。
 ⇒結果、3年総額105万ドルで2020年世界一に輝いたドジャースに入団しました。いつか日本球界、できればヤクルトに来てくれたらいいな…。

(本件にまつわる116winsさんの動画です、面白いので是非!)

そして、ドジャースと契約を結ぶことになる約1週間前の1/30。
バウアーが突如Twitterのハンドルネームに日本語を追加したことや自身のYouTubeに日本語の動画をアップしたことで、Twitterで話題になりました。

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バウアーが何故こんなことをしてるのか改めて調べている中で、同日にバウアーが登壇することを知り…といった次第で本イベントを知りました。


さて、ここまで前置きが長くなりましたが、
今回はこのイベントで行われた講演の中から2つをピックアップして記載するとともに、
私がファンでもある東京ヤクルトスワローズが今後進んでいくであろうテクノロジー(特にホークアイ)との向き合い方について個人的な考えを書いていこうと思います。

※あくまで講演内容の解釈は私個人のものである上、本noteにおいてはかなりの部分を省略しておりますのでその点はご理解ください。



2.Keynote Session

「PITCH DESIGN 〜サイ・ヤング賞の原動力とデータ革命の現在地〜」と題したキーノートで、トレバー・バウアーとスポーツライターの丹羽政善氏が対談を行いました。

こちらのキーノート、当然ですが多くの野球関係者に読んで(見て)欲しい内容でした。自ら真摯に研究と実践を繰り返して頂点に立った選手が語る内容はどれも示唆に富んだものであり、直接的に野球をプレーするわけではない私自身もその考え方から学ぶことが多く、アーカイブで何度も見返しております。

もはやお馴染みとなったダルビッシュ有のYouTubeもそうですが、現役最強投手の1人がどういったことを考えてプレーしているのかがリアルタイムに自分の口から発信されるというのは、改めて凄い時代だなと感じましたね。

なお、本セッションの詳細については下記公式レポートnoteをご覧ください。

さて、本セッション内で私が気になった点は(バウアーの言葉を借りれば)”通訳”と呼ばれる存在です。



一般的に通訳とは、ある言語から違う言語へ変換をして人に伝える役割のことを指しますが、ここでバウアーが使っていた”通訳”とは「多くの数字やデータを選手の感覚にとってシンプルに変換する人」のことを指しています。


最近では、日本でもトラックマンラプソードなどを用いて、従来では知り得なかったようなデータが多く活用されるようになってきています。また、動作解析等の精密な映像も同様に幅広く活用されるようになっています。
しかし、それらは複雑な内容もあるため見た人全員がすぐに全てを理解出来るものではなく、様々な専門家の手によって解釈されなければならないものも多々あります。



一方で、選手というのは複雑な内容を考えながらプレーすることは難しく、ベストパフォーマンスを発揮する際に意識すべきことは最低限でシンプルな内容であることが求められます。

バウアー曰く、そういったデータ等を選手が自分のパフォーマンス向上に生かすためには、自身の感覚へそういった情報をシンプルに落とし込む必要があり、その橋渡しを担う”通訳”の存在が重要だという内容でした。


3.ホークアイとヤクルトのこれから

「ホークアイは野球に新たなイノベーションを起こすか」と題したこちらのセッションでは、データスタジアムの山田隼哉氏をモデレーターとし、ホークアイの導入に携わる山本太郎氏、ヤクルト球団でアナリストを務める藤沢剛氏にて行われました。

テニスのチャレンジ制度など多くのスポーツで導入されているホークアイですが、MLBでは30球団で導入され、NPBではヤクルトが12球団で最初の導入となりました。
今回のセッションではホークアイの概要や、ヤクルトの導入初年度を振り返りながら、今後の進化についても語られました。

詳細は先ほど同様公式レポートnoteより。


そしてヤクルト×ホークアイを語る上で外せないのが、昨年のファン感謝ウィークにて公開されたこちらの動画です。

2020シーズンからヤクルトがNPBで一番最初にホークアイを設置した中で、神宮球場での実際の使用方法など、今後のヤクルトがテクノロジーをどのように使っていくのかが少しばかり分かる内容でした。
(この動画はお世辞抜きでヤクルトファン以外の方も必見です!


そしてこちらの動画にもキーノートでバウアーが言っていた”通訳”という部分にあたる部分がありました。
動画後半の工藤大二郎アナリストと、昨シーズン途中で支配下登録された松本友のフェニックスリーグでのやり取りですね。(先程の動画 34:10頃~)


工藤アナリストは松本友のデータや映像を提示しながら、どういった意識や課題認識で取り組んでいるのかを把握し、加えてチームメイトで同じく左打者である青木宣親の映像とも比べることで、松本友自身が今後取り組む課題や目標を自ら再認識しているように感じました。


また、先程の動画内で工藤アナリストはこのように語っています。

工藤「選手は感覚でプレーすることが殆どだが、実際に映像にして見てみるとその感覚と客観的に見ているものが違うという事は多々ある事。もし不調になった時にその感覚しか頼れるものがないと自分の調子が良かった時に戻ることが出来ないため、客観的に振り返ることが出来るのは大事だと思うし、その手助けが出来るような環境を作りたい」

その後、選手である松本友はこう語りました。

松本友「自分の感覚とイメージと実際のずれが分かりやすくて、修正するのに良い環境だと思うし選手にとってありがたい」


アナリストが提示するデータや映像を、選手が実際にプレーする際の感覚と擦り合わせながら、今後の取り組むべき方向性を裏付けるための情報として外部から提供する様子は、
まさにキーノートでバウアーが言っていた”通訳”に近い部分があるのではないかと感じました。

バウアーが言っていたことが必ずしもすべて正しいという訳では当然ありませんが、新たな試みを始めた段階での進むべき道の1つとしては決して間違っていないのではないでしょうか。

小川GMの元で育成体制を整備している昨年オフからのヤクルト。
こういった地道な取り組みが(傘の)花を咲かせる日は必ずしもすぐに訪れるとは限りませんが、今後とも注目していきたいですね。


4.今後の展望と希望

様々なデータによって日夜進歩を遂げる野球界。
勿論こういったデータのみで語られることが全てではないでしょうし、それに囚われて頭でっかちになってはいけないとは思いつつも、今後の更なる進化のためには欠かせないものとなっていくのではないでしょうか。


そういった意味でもホークアイの講演の中にあった「ホークアイのさらなる可能性」「野球のデータ化はどこまで進むのか」といった点が注目されるのではないかと感じます。

ヤクルトが取り組んできたホークアイでのデータ取得は、実証実験ということもあり2020年は主に投球データの解析のみを行っていました。
2021年度からは神宮球場のカメラも増やしつつ、打者関連の情報や選手位置のトラッキングも順次行うとのことなので、今まで以上に多くのことが明らかになるのではないでしょうか。

ホークアイに限らず、現場ではこういったデータ等を活用して選手の成長につなげて欲しいと思います。しかし、様々なデータが増えるという事は選手にとって考えるべき内容が増えるのと同義でもあります。

よって、ただ闇雲にデータを収集するだけではなく、それを嚙み砕いて選手に伝える”通訳”の存在感もさらに大きくなるのではと改めて感じました。

また、個人的な希望ですが、更に望むことと言えば(NPBの)データのオープン化です。
MLBではStatcastの公式データがBaseball savantなどを通して一般に公開されており、各種トラッキングデータを用いた分析等を個人的にも行うことが出来るようになっています。
(↓例:トレバー・バウアーさんのStatcast)


キーノートでもバウアーがデータ公開について語っており、自身も更なるオープン化を強く望んでいましたが、膨大なデータの取り扱いやサイン盗みのような問題防止のように、そこには乗り越えるべき課題が沢山あるのも事実です。

しかし、こういったデータを選手も取り扱えるようにして成長を目指すことは勿論のこと、それと並行して、データを取り扱う裾野を広げることは今後の野球界の発展には必要不可欠だと考えられますし、課題を乗り越えられるように議論が進んでいくことを願っております。

※これは完全に余談ですが、私がnoteでそのような分析を基本的に行わないのは、現在NPBで得ることが出来る類似データがunofficialなものしかなく、その使用はグレーゾーンなのでは?と、「個人的に」判断しているためでもあります。


また、野球のデータは上手く使えばエンターテイメントとしても優れたものであると考えており、選手の凄さを伝えるために、良い塩梅でエンターテイメントとの融合が進んでいくことにも期待したいですね。

フジテレビONEのスワローズ戦中継でたまに出てきて、変化球の落差などを出す「Ability Scanner」もおそらくホークアイ絡みなんでしょうが、その扱い方がお世辞にも上手くないせいで勿体ないなと感じますし…。 
参考:https://www.fujitv.co.jp/sports/baseball/sg/index.html


5.終わりに

ここまでデータと選手を繋ぐ”通訳”の存在について考えてきましたが、これは野球に限った話ではなく、私のような一般人にとっても同様なのではないかと思いました。

自分が”通訳”する側なのかされる側なのかに関わらず、様々な情報で溢れかえるこの世の中。その情報をどうやって自分の感覚に落とし込んでいくかは、これから生きていく中で間違いなく必要となってくる力です。


誰に頼まれたわけでなく勝手にやっていることではありますが、自分自身こうやってnoteを書いて発信していくことを続けている身でもあります。
沢山の情報を出来る限り”通訳”してまとめることで、自分の言いたいことを分かりやすく伝えられるように努力したいな、と改めて感じました。頑張りますので今後ともよろしくお願いいたします。

そして全く整理されていないTwitterはこちら。
もし良ければこちらも併せてどうぞ。


<SAJ2021 アーカイブについて>
また、本イベントのアーカイブ視聴は2月末まで可能となっております。
金額は8,000円(学生4,000円)と決して安い金額ではありませんが、今回紹介したもの以外にも様々な講演があり、払う価値はあるように感じます。

興味のある方はこの週末で是非ご覧になっては如何でしょうか!
※今更ですが本イベントの関係者ではございません←


ヘッダー画像:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Trevor_Bauer_(35465238164).jpg


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