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小説家さんの挑戦を応援したい!

皆様こんにちは。京都の手作り時計店DEDEGUMO(デデグモ)です。
先日受注販売を開始しました「アニバーサリーウォッチ」。時計の針に記念日の日付が付いた世界唯一のカスタム記念日時計で、私たちにとっても特別な時計ですので今回この時計の専用リーフレットを作成しました。
リーフレット作成に当たり、アニバーサリーウォッチにまつわるショートショートを小説家ナカタニエイトさんに創作いただき、そのお話をイメージした写真をマルチクリエーターのネオンボウヤこと伊藤樹さんに撮っていただきました。リーフが出来る様子は動画と共に下記に掲載しています。


ナカタニエイトさんは、noteでも短編小説を執筆されています。


マガジンのショートショート、ぜひ読んでみて下さい。どれも本当に読みごたえがあるお話なんです。私はSFやファンタジー系の小説や映画が好きなのでお気に入りのお話がいっぱいあります!そして感動のお話も好き。わんこのお話を読んだときは涙しました。それから、織姫と彦星の現代的でシュールのお話も好き(笑)
スキマ時間にさくっと読める長さも魅力で、自然と頭の中にぶわっと広がる世界観があの短い文章の中に収められているのが本当にすごい!

こんなに素敵なお話を書かれるナカタニさんが、DEDEGUMO時計の為に書き下ろししてくださったお話はリーフレットになんと2話掲載されています!
しかしながら、このオリジナルストーリーもリーフレットを手に取った方しかご覧いただけません。京都の店舗や期間限定ショップなどで初めてDEDEGUMOを知ってくださった方々はきっとこのリーフレットを手にしてくださると思いますが、普段からDEDEGUMO時計をご愛用くださっている皆様やSNS、noteでDEDEGUMOをいつも見て下さる皆様にはリーフレットが行き届かないこともあるかと思います。
私は、印刷会社から上がってきた完成リーフレットを実際に見てナカタニさんの素敵なお話をできるだけ沢山の方に読んでいただきいたい!と思いました。
そして丁度その時、ナカタニさんがご自身の作品の書籍化を目指すクラウドファンディングに挑戦されていることを知りました。
本の出版というのは、デジタル社会の中で本の在り方が変化する現代においてものすごくハードルが高くなってしまっている気がします。(私がいうのもおこがましいですが)才能ある小説家さんが、その才能をカタチにできないのは惜しい!!!
DEDEGUMOとしても応援したい!!!

そこで!

DEDEGUMOの為に書いていただいたナカタニエイトさんのショートショートをこちらのnoteに掲載いたします。
皆さん、是非お読みいただいてこちらの素晴らしいお話を書いてくださったナカタニさんのクラファンへの応援とご支援をお願いいたします。


純白に包まれて               ナカタニエイト

 扉が開かれると、いつもよりもキリッとした格好の彼が、こちらを見つめていた。
 緊張の糸が張り詰められて真っ赤になっている姿を見ると、私にまで緊張がうつりそう。まったく……ビシッとしなさいよ、と私は念を送る。
 父の肩は、いつもより少しだけ上がっている。小柄な父と大柄な母の間に生まれた私は、母に似たようだ。小柄な父が腕を組むには、少々お相手が悪かった。ごめんね、お父さん。
 バージンロードを一歩進む。隣にいる父には、かつて酷いことも言った。それでも私の誕生日には、いつだって並んでまで美味しいケーキを買って来てくれた。今、私がここにいるのは、父のおかげだ。
 もう一歩進むと、友人たちの顔が見える。スマホを構えるのは恥ずかしいからやめてほしいけれど、わざわざこの場に来てくれたことに心から感謝する。中学、高校とバスケ部の私は、泥臭く、汗臭い青春を過ごした。大学に入りお酒の味を覚えてからは、一人暮らしの友人宅に行っては、タコパだなんだと騒いだりもした。今となっては懐かしい思い出だ……と言えれば格好良いのかもしれないけれど、今も昔もやっていることにさほど変わりはない。
 父と私は、一歩一歩踏みしめるようにゆっくりと歩く。周囲から頭一つ抜けている母の顔が、よく見える位置までやってきた。私と同じく大柄な母だが、運動神経は鈍い。でも、椅子に座って静かに本を読む姿が素敵だった。その知的で穏やかさを称える瞳が、いつもより少しだけキラキラしている。その顔を見てしまうと、どうしても涙がこぼれそうになる。
 もう一歩進んだところで、父から彼へと引き継がれる。ありがとう……お父さん。
 彼の肩は、父とは違い違和感のない位置に収まっている。
 その腕には、京都旅行の時に買った私とお揃いの腕時計が巻かれている。針の文字は、私のワガママで「6月21日」にさせてもらった。
「なんの日だっけ?」と彼は時計を作る時に尋ねてきた。「まぁまぁ、いいじゃない」なんて私は丸め込んだ。
 6月21日。それは、私たちが4度目のデートをした日。美味しいと評判のケーキ屋さんに二人で並んで入った。人気店だけあって、1時間くらい待った記憶があるけれど、彼と二人ならば時間なんて気にならなかった。
 彼はショートケーキを、私はモンブランを頼んだ。口の端に生クリームを付けて笑う彼の姿が、妙に印象的だった。彼と一緒に暮らしたい。初めてそう思った。
 あれから数年の月日が流れ、彼はいま、私のヴェールを捲り上げている。
 生クリームの付いていない唇に、私たちはそっと口づけをした。

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ずっと二人で               ナカタニエイト

「二人で行ってきなって。今までのお礼だからさ」
 私たちの記念日が差し迫ったある日。息子たちから新幹線のチケットと旅館の宿泊券を手渡された。
「久々の二人旅ね」なんて、あなたに言うと「ん」という言葉だけが返ってきた。
京都に来るのはいつ以来だろう。街並みがすっかり変わったわね、なんて思う程にかつての街並みを覚えていないけれど、趣ある祇園白川を歩いていると、どうしてだか今までの悲喜交々が思い出される。
 二人三脚で歩んできて50年。あっという間だったような気もする。一方で、いろいろあったわね、と思わずにはいられなかったりもする。歩幅が合わなかったり、三脚にならずバラバラに歩いたり、そうかと思えば一所懸命に駆け抜けたり……本当にたくさんあった。
 辰巳大明神が見え始めた頃から、舞妓さんとすれ違う回数も心なしか増えた気がする。
 そこで突然、あなたの足が止まった。舞妓さんが気になったのかしらと思っていたら、どうやらそういうわけではなさそう。
「どうしたの?」
 あなたは、大明神のお隣にあるお店の前で立ち止まったまま動かない。「ん」と声を発するとお店の中へと入りたそうに、首を伸ばして奥を覗いている。
「ちょっとお邪魔してみましょうか」と言うと、「ん」と口にしてスタスタとお店の奥へと入って行く。
 そこは「DEDEGUMO」という名の時計屋さんだった。店内には、素敵な時計やアクセサリーが並んでいる。私はこの中にいるだけでワクワクする。だけど、あなたは装飾品にあまり興味がないはずなのに。珍しいこともあるものね。
 さらに意外なことに、口下手なあなたが職人さんとじっくり話し込んでいる。耳をそばだてていると「いつまでに」やら「特別な日付を」やらと聞こえてくるけれど、肝心なことはわからない。近付くと「あっちに行ってなさい」と追いやられるので致し方ない。
 「では、ご依頼いただいたペアウォッチは、二週間程度でご自宅まで届くかと思います」
 店員さんに「ありがとう」と言うと、あなたは何事もなかったかのようにお店を後にする。
 駅までの道すがら、何食わぬ顔で歩くあなたを見ていたら、少しだけ意地悪をしたくなった。
「特別な日付ってなんなんです?」
「……秘密だ」
「もしかして、結婚記念日とか」
 口の端をモゴモゴとさせながら、「そんなもの、覚えてない」とあなたは言う。
「ふふふ、そうですか」と私は笑う。いつだって照れ隠しが下手なんだから。
 あなたは、毎年その日になるとプレゼントをくれる。「たまたまだ」とかなんだとか言って、目も合わさずに。

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