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【読書感想文】スタニスワフ・レム「インヴィンシブル」

「ソラリス」でおなじみスタニスワフ・レムの「インヴィンシブル」は、レムのファースト・コンタクト三部作の一つで、過去「砂漠の惑星」の邦題で刊行された小説です。今回は 2021年に出た新訳版で読みました。

箸が止まらない

ストーリーはまだ映画化されていないのが不思議なほどにスリリング、かつ、絵になるであろうシーンが続々と登場します。

全 11章の 2章「廃墟の谷間で」での惑星の異常さに引き込まれ、 3章「コンドル」からは文章に釘付けで以後一気読みでした。文章からは穏やかに落ち着いた、あるいは敏感に張り詰めた、はたまた荒々しく沸き立つその場の空気感が伝わってくるようで、読書の波にノセてくれる感覚がありました。

きっと何度も読み返せる

6章「ラウダの仮説」で語られる"進化"は、 AI が身近になった今であればより現実味が感じられるもので、1964年にもうこんな考えが、とその時代先取り感に驚きます。

9章「長い夜」と11章「不死身」で主人公が哲学的テーマに思いを巡らせるシーンは、そこまでに描かれる『どうしたらよいか分からなかった』自由意志を持つ生身の生き物としての人間、躊躇も迷いも無い(のであろう)命令を遂行する機能だけの"虫"、ある事象に見舞われたコンドル号の乗組員たちなどの象徴することを考えながらじっくりと読んだ、読後最も記憶に残る箇所となりました。

面白い SF というだけじゃない、何度も読み返せるテーマを持った作品だと思います。

いきなり本文に入ることをお薦め

より驚きを味わうために、本書の裏表紙や Wikipedia に掲載のあらすじは読まずに本文に入ることをお薦めします。


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