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釣り人語源考 カサゴ

「カサゴ(笠子)」は東京神奈川方面の地方名が標準和名に採用されて定着した名前だ。
カサゴは非常に多くの地方名があって、また同じ地域でも人によって違っていたりと多様である。
そんなカサゴの地方名を見てみよう。

我らがアイドル

まず「カサゴ」だが、『魚名考』(1974年 栄川省造)によれば「痘痕あばたの様な模様を持つので瘡魚かさごと呼ばれた。」とある。
「あばた」は天然痘(疱瘡)の跡だったり吹出物やニキビの跡などの事だ。
そして「かさ・くさ」は、できもの・はれものなど皮膚病の総称だったり、傷の治りぎわに出来る「かさぶた」の事である。

あばたの方言を由来とするカサゴの地方名はとても多くて、「アラカブ」(長崎九州)はカブが痘痕あばたの方言で、アラは「タラ」の訛ったもので「まだら・たら」の事である。「まだらなアバタの魚」でアラカブ。アラはクエの地方名だがこれもマダラのたらの訛りだろう。
「ガシラ」(関西)は「ガシ・ガジ・カシ」が痘痕あばたの方言でラが魚名語尾だ。
「チガシラ・アタガシ」(和歌山三重)は「血の様な赤いガシラ」「アタ(斑まだら)の模様のガシラ」
水深のあるポイントの大きなカサゴは赤みが強い固体が居たりする。もしかしてウッカリカサゴかも。
「ゴウチ」(山口県)「ゴウザ・ゴウゾウ」(福岡県)
「ゴ・ゴウ」も痘痕あばたを表す方言だ。ちなみにゴギも痘痕あばた魚の語源説がある。
「ガンガラ」(兵庫県日本海側)「ガンガラハツメ」(石川県)「ガラ・カラコ・ガラカゴ」(山口県)
ガンガラとは「雁瘡がんがさ」という皮膚病の事で、がんが来る冬に湿疹になって春に治るというもの。要するに冬の乾燥肌だ。ハツメはメバルの仲間のこと。


痘痕あばたとは関係ない地方名で「ホゴ」(広島県愛媛県)「ホウゴウ・ウドホーゴー」(周防大島)「ワゴ・フゴ」(高知県)「ボコ・ボッカ・ボッコ」(島根県)がある。
わらを編んで丸くカゴ状にして縄で取手を付けた、野菜などを入れて運ぶものを「フゴ(畚)」と言う。(同じ漢字だが四角に編んで土を運ぶのはモッコ)
口を大きく開けてポケーっとしてたり、口ばっかりで仕事をしない人間を「ふご」って呼ぶ悪口があったようだ。
「磯の笠子は口ばかり」という諺もある。口先ばかりで実行力のない人間を喩えたもの。
江戸時代の文献『魚鑑』に"アンポンタン"と呼ばれていたと記載されていて、魚河岸に口を開けて並んでいるからと言う事らしい。
深い海から釣り上げると水圧の変化で目が飛び出したり胃が出たりしてその姿を見てアンポンタンやホゴって言ったらしい…ちょっと酷くないですかね…

フゴ
「アンニはフゴじゃ」という悪口が広島愛媛にある

「カガネ・ガガネ」(和歌山県南部徳島県南部)「ガガニ」(高知県)は、カガチはホオズキの古語で、そこから「赤く丸いもの」となった。大蛇の事をカガチと呼んだり、ヤマカガシの語源であったりする。
カガネは「赤く丸い魚」という意味だ。
東北や北海道では「アカゾイ・アカズイ」と呼んだりする。赤いソイですね。
「アコウ・アカゲ・アカウオ」(茨城県静岡県)はそのまま"赤い魚"だ。

「ゴッチョオ」(和歌山県)「シャシャコ」(隠岐島)「ガーブジョー」(種子島)
カサゴの穴釣りとかすると餌に飛びついてくるのが見えたりする。
なるほど、わんぱく小僧とか乱暴者とか貪欲な餓鬼のようなイメージの方言がこれらの由来となっている。
ガーブジョーはイソゴンベの方言でもある。

その他の面白い地方名に、「ツラアラワズ」(神奈川県三浦半島)。江戸時代だろうか、ひねって来ますな。顔が醜悪なので"面洗わず"…これは酷いな!
兵庫県日本海側の地方名「ロッコウ」
ロッコウの由来はサッパリわからないです。





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