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釣り人語源考 アレな魚(ハゼ・アナハゼ・ギチベラ)

マハゼは河口など汽水域や内湾の砂泥底に生息する、釣りの対象魚として、そして食卓に上る大衆魚として非常に親しまれてきた愛嬌のある小型の魚だ。
汚染に強いとされてきたが、さすがに近年は河川の環境の悪化でかなり数を減らしてきている。

江戸前の釣りでは趣向を凝らしたミャク釣り。
河口などでは子供連れ親子のチョイ投げ天秤仕掛けや簡単ウキ釣りでのイソメ餌釣りで大人気だ。
近年ではルアーでも狙えると認知が広がり、「ハゼクランク」や「ハゼメタル」なども登場する。

マハゼが所属するハゼ科を含め、ハゼ亜目は2000種以上発見され現在でも未発見の種が多数いると言われている。
サンゴ礁から岩礁やタイドプール、干潟、汽水域、そして川を遡上したり完全に淡水に生息する種など、生息域は多岐にわたっている。
ハゼ科マハゼは汽水域を中心に生息し、多毛類や甲殻類を主に食べるが、時には小魚も捕食する獰猛なイーターだ。
しかし腹びれが吸盤状になっていて、普段は底にじっと待ち構えている。

ハゼの語源として一般的なのは「せ」に由来し、俊敏に水中を馳せる(速く走る)ことからと言われる。
しかしこの語源説は釣り人からするとハゼのイメージから程遠い。
川の底へのチョイ投げやミャク釣りで手前を探る、のんびりとした釣り味の魚だ。

かわいいマハゼ

ところで男性器の古語として「おはせ・をはせ」がある。
「男茎と書いて"をはせ"と訓せり」と『古語拾遺』に載っている。平安時代の斎部氏の家伝書である。
愛知県小牧市の田縣神社の「豊年祭り」は巨大な男茎形を神輿に担ぐ、近年外国人観光客に大人気の有名なお祭りだが、元は『古語拾遺』の故事に因った虫送り(イナゴ避け)の神事からである。
ハゼの語源はそのものズバリ「チンコに似た魚」だろう。

デカちんこ

ハゼ・チンコときたから折角なので、アナハゼの地方名にも触れよう。
アナハゼはカジカ科アナハゼ属でハゼではない。
広島県の地方名は「チンポダシ・チンポハゼ」だ。
この魚のオスは巨大な生殖器を持っていて先端に鉤が付いている。語源からするとハゼ=チンコなのでチンポチンコになってしまう…
その他「マラスイ・マラキンド・ドギマラ・ジンジャノマラ」などマラ系の地方名も多い。
一応解説するがマラスイはチンコ吸いではなく「チンコソイ」だ…危ない危ない。
ジンジャノマラはやはり神社に奉納された男茎形を意味しているに違いない。ありがたやありがたや。
キンドはカナガシラ、ドギはノロゲンゲの地方名で、チンポハゼと同じく親しい魚にマラを付けて呼んでいる。
ちなみに筆者は昔、海水魚水槽を設置していて、かわいいアミメハギやキュウセンの幼魚などを小さかった娘たちと捕まえて飼育していた。ある時アナハゼを捕まえて「ちんこ君」と名付けて水槽に入れたところ、かわいい魚たちは全部ちんこ君に食べられ、娘たちは号泣www。仕方がないので「サヨナラちんこ~!」と大声で見送り放流した様子を筆者はホームビデオで撮影し黒歴史にさせた。

ちんこ

「ギチベラ」はベラ科モチノウオ亜科のサンゴ礁などに棲む、琉球列島で普通にみられる魚だ。
非常に色彩が変異が多く、更に個体でも環境や感情で体色を変化させる。
しかし一番の特徴は、「とんでもなく口を伸ばす」事が出来るのだ。頭部の長さの65%まで、下顎を外すようにして筒状に突出させ、魚類の中でも最長だと言われる。
しかも伸ばす速度もかなり速く、同時に水を吸い込むことで捕食する戦法だ。
最もギチベラの口を分かり易く写真で解説してあるのは、ぼうずコンニャク氏の「市場魚貝類図鑑」なので、リンクを貼っておく。

このギチベラの石垣島での地方名は「タンメータニクヮヤー」と言う。「タンメー」は「おじいさん」、「タニ」は「さね」の沖縄弁で、「種・精子・ちんこ」の意味だ。「クヮヤー」は「咥えるもの」。
「おじいさんのちんこを咥える魚」wwwwwwwwww
いかんでしょwww

いや、待て待て。もしかしたら違うかもしれない。
「さねさし」とは相模国の枕詞であるが、その語源は「実に素晴らしい差斯さし国」と言われる。
本居宣長の説で「下差斯しもさし」が「武蔵むさし」、「差斯上さしがみ」が「相模さがみ」の由来であるとしている。
「おじいさんの実に素晴らしいモノを咥える魚」
wwwww変わらないじゃんwwwww

…失礼しました。
「ギチベラ」の由来が不明、と「ぼうずコンニャク」氏は言っておられるが、おそらく「ぎち」とは「ヒイラギ」と言う魚の名前である。
広島ではヒイラギの事を「ぎちぎち」や「ぎんぎん」とか言っていた記憶がある。小学生の時広島市の太田川放水路でハゼ釣りをしていたらヒイラギが釣れて、オヤジに聞くと「ぎちぎち」または「しす」と呼ぶと言っていた。
「ぎち」は東京方面での地方名だ。
なぜ魚のヒイラギがギチベラの由来なのか。
それはヒイラギも口が伸びるから、田中茂穂先生がそれにちなんで命名したのだろう。

ヒイラギの伸びる口

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