進化型組織を作る【導入前編】

こんにちは。
弊社を進化型組織にした軌跡を残したいと思います。
この記事は3編で構成されています。

①進化型組織を作る【導入前編】
(本記事)

②進化型組織を作る【導入実施編】

次回記事

③進化型組織を作る【導入後編】

最終記事

本記事を書いている今、弊社の現状は【導入前編】です。「いよいよ導入ですよ」といった導入前どころか、絶賛導入準備中です。
そんな中で、実現してもいない組織改革を公開していくという、いかにも進化型で前衛的な取り組みです。そしてもちろん残りの二編はまだ「書いていない」どころかやってもいないので「書けない」状態です。



導入に至る経緯

私はこれまで様々な「○○式経営」に触れてきました。
多様な経営に触れる中で、「弊社に最適な経営方法は何か」、「私が実現したい組織はどのような形か」を考えてきました。

どんな経営スタイルを選択するにしても、「その軸となる概念が必要だ」ということで創業時にコンセプトを確立しました。その重要性については、これまでしつこい程書いてきたので十分でしょう。

そして次に、「コンセプトを社内外に広めて行く」という段階へシフトしていきました。

コンセプトを浸透させるという事は、企業風土を作り上げるという意味です。何も無い状態から企業風土を作り上げるには、2つの事が必要です。
ひとつは目的地です。私たちはどこへ向かっているのかという事が分からないまま小さな改善を繰り返しても意味がありません。「こう在りたい」という目的地を設定する必要があります。これがコンセプトです。コンセプトの重要性を伝えるためにわざわざ書きましたが、弊社にはこれがすでにあるので、次を見てみましょう。
ふたつ目は目的地へと辿り着くための手段です。「どのように進むか」を明確にする事で、より動きやすく、より確信を持って行動する事ができます。これが経営方針を意味しています。
そして、この経営方針に則り事業を行う「集団」こそが企業風土を持った「組織」となります。

ただ同じ場所に集められた「集団」ではなく、明確な経営方針に則った「組織」となる事でチームとしての力を発揮する事ができます。
これまで通り私ひとりで「こう在りたい」を実現するだけなら、好きな手段を用いてどうにでもすれば良いのですが、私以外の人が一致団結してひとつの目的地へ向かうためには、必ず経営方針が必要になってきます。



組織を作る

進化型経営といっても様々な定義があります。
自走型組織、自律型組織、アジャイル型組織、ティール組織、ホラクラシー組織、自然経営・・・様々な組織形態がある中で、弊社のコンセプトを実現できる組織を考えました。

結局この経営方針も、これまで語ってきた「コンセプトの作り方」と同じで、「他社の成功例をそのままインストールしても上手くはいかない」という事はわかっています。
まず社内の現状を見つめ、足りないものや、抱えている課題を洗い出し、次に持て余している能力や環境も考えてみます。その後、実現したい在り方を描き、現実とのギャップを考えます。すると少しずつ、組織のどの部分に問題があるか見えてくるのではないでしょうか。

私の描く組織は、ありきたりな内容ではありますが、従業員ひとりひとりがやりがいを持ち、個々に成長し、目標を自発的に設定し、現場レベルで最適な判断ができるようになり、管理しなくても自走する。そして成果に応じた適切な報酬を受け取る事ができる。という状態です。それが実現すれば私の思い描くコンセプトを実現できると考えています。

こうして、何もなかった場所に少しずつ組織を作り上げるための土台が出来上がっていきました。
しかしまだ中身は何もありません。どのようにしてこれらを実現するのか。私の遭遇した課題と中身作りの軌跡を辿っていきましょう。



導入にあたっての悩み

「さあやろう」と決めてから、様々な疑問が沸き起こり、あらゆる角度から不安が押し寄せてきました。「そもそもこの新しい組織論は理解されるのだろうか」「色々考えてはいるものの上手く機能するのだろうか」「なんならうちの従業員は優秀なので現状のままでも大きな問題はないし、むしろ何もしない状態の方が「当たり前」ではないか」「そもそも自律した組織を作ろうとしてるのに、従業員にヒアリングせずに最初からこんなに計画的に作り込んでいいのか」など、導入にあたっての漠然とした不安がありました。

様々な不安が押し寄せる中で、「1次情報でどこまで公開するかはさておき、ひとまず自分が理想とする形を作り上げてみよう」と気持ちを切り替えて色々と情報を整理していくことにしました。

しかし、情報を集めれば集める程不安になってきました。それは、変化する事に対する不安ではありません。この組織改革にあたって、大量の書籍を読みましたし、先駆者たちが残してくれている記事を読み込み漁り、組織改革導入プログラムを理解し、評価制度についても同様に考え直し、人事の在り方についても見直しました。
すると、この情報量の差がかえって不安になりました。というのも、「私はこれだけの情報量を得てようやく確信を持ったのに対して、社員はありきたりな言葉や新しい組織の形を提案しただけでは理解できないだろうな。」と思いました。これは、社員の理解力を馬鹿にしているわけではなくて、それほど従来の常識を外れた改革だという事を意味しています。

ですので、社員の抱える問題に寄り添い、社会の変化と照らし合わせて、現実的に納得できる資料を作ろうと決心しました。

仕組み作りと同時並行で資料を作り始めました。
そして、システムとしては本当に最高だと思うものができあがりました。しかし後一歩何かが足りないと思い考えてみると、「どれだけ理想的なシステムだとしても、そもそもそれを自分事化してもらわないと意味がない」と感じました。

システム上、「前向きに取り組んでさえくれれば自然と自分事化できるようにはなってるんだけど、そもそもその最初の一歩目が難しい」ということです。

私が(従来通り)社員と行ったありきたりな契約は、特定の時間に出勤し、特定の労働をする事で、特定の賃金を支払うといったシンプルなものです。
この仕事という契約において、「創意工夫して~~」とか、「自分なりの優位性を見つけて~~」といった努力は大抵「余計な事」として処理されます。もちろんそれが上手くいけば社内の空気が良くなったり、賞賛されることはあるでしょう。しかし、その挑戦が失敗して通常以下の結果が出た場合、激しく非難されます。私はしませんが、そういう世の中です。ですので普通の人間の頭には、「挑戦なんてしない方が良い」とインストールされています。

そのため、目的地を決めて経営方針を整えるだけではダメだと気づきました。そこに何が足りないのかは分かりきっています。「社員と本音で語り合い、理解し合う」ことです。
一方的に「これがあなたのためだから」といっても通じるはずはありません。「あなたの抱えている課題は、こういう事ですよね」と紐解いたあとに、「こうすれば変われると思うんだけどどうだろう?」という提案ベースで進める必要があることに気が付きました。

これに関しては、「経営者が組織改革するにあたって絶対そうするべき」とは思いません。大企業(従来のピラミッド型組織)で一斉にルールチェンジする場合などは、基本的に事前通告はないし、社員はただそれに従うものだし、そうした方が合理的だとも思っています。しかし、この進化型組織においては、そもそも「従来の在り方を辞めよう」と提案しているのに、その一歩目が「経営者が決めたことをやる」では本当に意味がないと思います。

そんな感じで色々と考えましたが、ひとまず導入のためのマニュアルであったり説明用資料が揃ってきたので見てみましょう。



準備したもの

進化型組織を説明するためには、ひとつの文面データでは無理だという事はわかりきっていました。様々な側面から現状を捉え、必要性を語りながら、それぞれの仕組みの在り方を説明していこうと思いました。

そのため、複数の説明資料を作ると同時に、それらを自然な流れで繋げるためのストーリーを作りました。これが複数の資料の軸となります。以下の18ページの構成になっています。

「組織の変化について」-「経営について考える」-「現状の問題を見つめる」-「働き方について考える」-「存続について」-「存在意義について」-「導入まとめ」-「自律的な組織」-「新しい組織の形」-「情報の流れを変える」-「働き方の変化」-「権限を開放する」-「従来の評価制度」-「従来の評価制度の問題点」-「従来の評価制度の問題点2」-「ノーレイティング型人事」-「組織の存在目的」-「事業に係る全ての人の幸せを願う」

これらと並行して読めるように、以下の資料を作りました。

  • 介護業界の現状と未来についての考察

  • 等級一覧

  • 評価及びフィードバックに関する規定

  • 等級制度と権限

  • ノーレイティング型人事制度を構成する「4つの制度」

  • 助言プロセス

  • 給与決定のガイドライン

  • 適切な組織構造を保つための規律

  • 心理的安全性の確保

これらはそれぞれwordで1~2ページ程度となっています。
今後も利用していくものですし、みんなで更新していけたらと考えています。

これだけの資料を作りましたが、罰則を与えられる「ルール」はひとつもありません。それぞれが性善説に基づいた内容となっています。もちろん中ではその重要性についても触れています。

これから本資料を基に、友人らに頼み壁打ちし、ブラッシュアップできたらと思います。



良かったこと

昨日社員と話をしていると、いくつかの問題を抱えているという事が分かりました。しかしそれらは、「都度その場しのぎの解決をしても意味がない問題であり、根本的に変わらなければ悩みは尽きない」という事を伝えると、すごく納得してくれていました。
まだ今回の組織改革の詳細は何も伝えていませんが、「それらの問題を解決できるように組織が変わっていく」という事を伝えるとすごく前向きに捉えてくれて、「なんでも相談してね」と言ってくれました。この時点で、この組織改革はこの社員にとって「自分事化」されたと思います。こうした小さな「変化する理由」を自認してもらう事が今回の改革の一歩目になると考えていたので、そのタイミングが自然と訪れたのは何ともラッキーだと思いました。
それと同時に気付かされたことがあって、こうして社員自ら仕事に対する課題を抱えて改善しようとしてくれている今だからこそ改革の意味があると感じました。いまは事業の規模も売上も伸びており、「これからまだまだ新しいことができる」というこの空気感に乗るのがベストだと思いました。
逆にもし、「上手くいかなくなったらその時にやり方を変えてみよう」と思っていたら、その時は今以上の苦労をすることになると思います。

また、様々な企業の在り方を見ていくと、多くの会社が抱える問題として、「会社の空気が悪い」とか「愚痴が多い」などが上げられていましたが、弊社はみんなが活発に会話しますし、非常に明るい空気だと思います。ですので、「まずは挨拶から始めよう」とか「しっかり感謝しよう」というところから始めるようなレベルではないことは嬉しい事です。
一方で、慣れあいからくる「欠点を指摘し辛い空気」というのはあるので、そういったストレスになる部分を今回の改革で前向きに改善していけたら、最高の組織になると思います。



まだ考えていないこと

もう少しだけ準備に時間がかかりそうです。
コンセプトの確立は法人設立の段階からできていましたが、経営方針に関しては更地の状態でした。評価方法だったり給与の決定方法について学び直すのに、ここまで5ヶ月ほどかかりました。ようやく出口が見えてきたところです。もちろん公開後もみんなでブラッシュアップしていく必要はあるのですが、ひとまず本記事で触れるのはここまでにしておきます。

今回の記事を締めくくるまえに、「まだ考えていないこと」について書いてみます。

①広い規模での連携

現在は小さな事業所でひとつの事業を行っているだけなので、利益の見通しが立てやすく、それに基づいた経営戦略もある程度全体で共有できている状態となっています。これが事業数の増加や店舗数の増加により拡大していった際に、全体でどのようにバランスを取っていくかという方法についてはまだ見えない部分です。
必要最低限の業務進行にかかせない会議だけではなく、フリーオブザーブの会議(いつどこで開催されているかがオープンになっており、チームメンバー以外も自由に参加できる)の設定など行い、企業として次の段階に進む準備を少しづつ始めたいと思います。

②コミュニケーションの場の設計

進化型組織を維持するために重要な「アンフォーマル(業務以外)な情報共有の場」がありません。それは、「作れていない」というよりは「今のところ作る必要がなかった」という感じです。事業の立ち上げ期から苦楽を共にしてきたメンバーであり、元々顔見知りだったという理由もあり、自発的に良いコミュニケーションが行われているからです。
もし今の組織に新しい人がひとりふたりと増えたとしても、同様に良い関係が築かれるる見通しはあります。しかし、次に何かゼロから事業を始めて全く違ったメンバーを集めた時に同じような関係構築ができるかと言われると確信がありません。現状に満足せずに、考える必要がありそうです。

③社外との協力体制

今後新たな活動を生み出すことや、地域に貢献することを目的とした場合、社内に留まることなく広く情報に触れると同時に、社内の情報ももっとオープンにする必要があります。
その際に、どこまでの情報が社外秘で、どこまでの情報を公開情報にするかという部分が決められていません。現状は介護という事業柄、殆どの事が秘密事項となっています。
もちろん顧客情報は厳しく管理する必要がありますので、「業務上知りえた事は社外秘」と一括りにしてしまうと楽なのですが、その楽に甘えて完全に閉ざされた世界になるのはよくないと思うので、情報の線引きを行う事と、オープンな場を設置するなどの取り組みを考えていきたいと思います。

④まだまだ多くの未解決議題

様々な組織の経営を覗く中で、「弊社には関係ないかな」と感じて排除した考え方が多くあります。
それが「弊社のコンセプトでは不要」という場合ならいいのですが、「今は不要」なのか「今後も不要」なのかは判断が曖昧な部分があります。それは、まだ会社規模が小さいため、「なんとなく上手くいっている部分」が多いからだと思います。
規模や環境の変化に応じて柔軟に変化している存在に生まれ変わるという意識を広く共有し続ける必要がありそうです。

・・・と、そんな感じでやっていっています。




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