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ビジネスがローカルに戻ってきている。
最近、多くのビジネスがローカルに戻ってきているように感じる。
もう少し噛み砕いて表現すると、ひと昔前まで重視されていた「社会全体のグローバル化」にピリオドを打ち、再び地域戦略の重要性に着目する必要が出てきていると感じる。
この変化はあくまでも会社やコミュニティなど組織単位の問題であり、事実として社会全体がグローバル化しているのは言うまでもない。
組織単位でのグローバル化に伴い、「IT化」や「DX」といったワードをよく目にする。今回は地域戦略の必要性を中心に、それらの取り組みに対してどのように向き合うべきか提案したい。
本記事の完読目安:9~12分
広告依存からの脱却
社会全体のグローバル化に伴い、新たに様々な広告手段が現れた。
検索広告やアフィリエイト広告、動画広告やSNS広告がその例であり、それは用途によって変化する。
あなたにとってこれらは生活に馴染み過ぎて、もう「新しさ」は感じないだろうか。
私たちはこれらの新しい広告手段によるメリットを享受すると同時に、広告への依存が重大な問題であるという事に気づかなければならない。
広告は事業拡大のための一時的な手段であり、それを常習化してしまうのは危険だ。
広告による事業運営に憑りつかれた末路は、ランニングコストがかさみ、その結果「あらかじめ商品代金に広告費を上乗せして請求する」という、ユーザーにとって優しくないビジネスモデルができあがる。
この広告時代において、これまでは「それは当たり前」という空気感があった。しかし、これからはそうはいかないだろう。
「買いたい人から直接買う」というダイレクト課金の時代においてユーザーは、それぞれが自身に最適化したコミュニティを持ち始めている。
そのような時代にありながら、大衆向けに購買意欲を煽るビジネスモデルは、よほどの条件が揃わない限り難しいだろう。
これまでユーザーに飽きられないように手を替え品を替え新しい在り方が生み出されてきた広告は、いよいよその全てに飽きが来ている。私たちはそのことに気づき、広告への依存を断ち切らなければならない。
もちろんこれからも新しい広告の在り方が生み出され、広告から購入を続けるユーザーも一定数存在するだろう。このサイクル自体に終わりはないが、広告への依存は非常に危険だということを理解しておく必要がある。
現代にマッチしたビジネスモデル
私たちは広告に頼らない事業作りのために、自身が置かれている環境と立場を正しく知る必要がある。
環境とは「広告に対するユーザーの反応が変化してきている」という事実で、立場とは「自社のサービスが現代にマッチしたビジネスモデルかどうか」だ。
私は現代にマッチしたビジネスモデルをこのように定義する。
「適正な価値の商品」を「正しく伝える」こと。
粗悪な商品を過大に表現し販売するのではなく、自信と責任の持てる商品を正しく伝えて販売することが大切だ。
さらに言えば、ユーザーは「過剰なサービス」を求めていない場合が多いということも理解しておく良いだろう、
もちろんユーザーにとってメリットはあればあるだけ良いのだが、それは過剰なボリュームや過剰な包装、または過剰な接客などではなく、小さな配慮がどれだけ出来ているかという事が重要だ。
自社のグローバル化を行い事業拡大・時代適応する前に、ユーザーにとっての小さな配慮がどれだけ実施できているかというのが、愛される企業になるためのポイントではないだろうか。
企業間の商品力による競争はコモディティ化によって難しくなった。それに伴い、売上を立てるために販売方法は多様化した。
販売方法とは(宣伝としての)広告だけでなく、「売れるコピーライティング」や「売れるデザイン・訴求方法」なども含めると多岐に渡る。
ユーザーはそのような表面上での差別化に疲弊すると同時に、本当に信じられるものを探し求めている。
このようなユーザーの思いに応えるために、必要であればIT化やDXを行うべきであり、それらは手段でしかない。
もちろんそれらは必要に応じて取り入れていくべきだが、私はそれ以上に、ユーザーの思いに応えるためのヒントが地域戦略にあると考えている。
コモディティ化されていない世界
コモディティ化というキーワードは数年前から注目されており、私のnoteでも時折登場する。それについて過去の記事内で幾度となく触れてきたが、「差別化が難しくなった世界でどう戦うか」という事については慎重に考える必要がある。
私たちがコモディティ化について理解し、従来とは違った戦略を組み立てる必要があるのは間違いないだろう。
しかし、それを踏まえた上で最近よく考えることがある。
「世の中は本当にコモディティ化しているのか」
2,3年前であれば間違いなく、「世界はコモディティ化している。」と答えただろう。しかし近年、とてもそうは思えなくなってきた。
今感じるのは、見え方はコモディティ化しているがその実態には大きな差があるということだ。
思いつくだけでも様々な理由が考えられるが、ここ1,2年で特にその差は激しくなったように感じる。
しかしこの感覚が分からない事業者は、未だに粗悪な製品やサービスを広告によって販売している。いやむしろ、この感覚を分かった上で粗悪な製品やサービスを広告によって販売している可能性がある。そうするしか手段を知らないのだろう。
「粗悪な商品を広告した場合」と「良い商品を広告しない場合」では、短期的に売れるのは前者だ。物が溢れる時代では、前者を繰り返し続けるという方法もひとつの戦略なのだろうか。とても推奨できないが、そうしたビジネスが数多くあるのは事実だ。
逆に言えば長期的にビジネスを行うことを目的とし、持続可能な企業作りを行うために必要なことは、目先の利益の追求ではなく小さな信用を積み重ねることだと分かるだろう。
実績の評価基準が変わってきた
これまでは、「有名人の●●さんが使っている」「あの大手企業も導入している」「●百万人が利用」「口コミでの高評価98%」「●●研究会で推奨されている」といった表現方法が好かれていた。
好かれていたという表現が正しいかどうか分からないが、間違いなく、購入にあたっての判断基準がない状態において、このような権威性は安心感を与えてくれ、購入時の言い訳となってくれる。
しかしこれからは違う。今ではリアルタイムに、SNSを通して他ユーザーの生の声が簡単に手に入る。多くの権威性アピールよりも、知人やフォロワーの声の方が嘘偽りなく信用できるという事に気づき始めている。これが上記した「広告への飽き」に繋がっている。
これは、広告によって過大に表現された商品のメッキが剥がやすくなっていることを意味する。
これからは、これまで実績として利用できていた表現の価値は低下し、一方これまで以上に「適正な価値の商品」を「正しく伝える」という事が評価され始めるだろう。いや、もうその変化は始まっている。
価値が複雑化している
世界がコモディティ化した要因のひとつとして、価値の複雑化が挙げられる。それは、商品自体の価値が商品の価値ではなくなっているということだ。
これまでは純粋に、「商品の品質」と「価格」を照らし合わせて価値を推し量っていた。つまり、良い製品が安価で購入できれば「良い買い物だった」と言えた。
しかしいつからか、「良い買い物だと判断する基準」が品質と価格だけではなくなった。それは大手事業者による大量生産に終わりを告げ、多岐に渡る細やかなニーズに応えたピンポイント商品が多く生まれていることに関係しているのだろうか。
現在の価値は「品質×価格」という枠を超え、体験価値や経験価値が加わり、さらに応援価値(誰から買うか)という事にも重きが置かれ始めた。
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これによって、「=価値」はコモディティ化していると言えるが、「品質」だけを切り取って評価した時に、とてもコモディティ化しているとは言えないように感じる。
私たちはここ数年、粗悪な品の存在を忘れかけていた。
それは10年程前の、技術飽和によって大手企業の製品がコモディティ化し、本当にどれも安価で質が良かった頃の安心感が残っているからだろうか。または、その頃からテレビでもてはやされているmade in japanへの絶対的信頼なのか。
だからこそユーザーは、最近の中小企業や個人レベルの事業者が手掛ける製品・サービスの品質が想定している水準に到達していない事に不安と戸惑いを感じている。
その不安を払拭するために企業が取るべき(根本的な)行動は「品質の改善」以外にないのだが、「良さそうなコピーライティング」や「良さそうなデザイン・訴求方法」を用意する方が楽であり、すぐに結果に繋がる。
そのような企業が増え競争が激化することで、製品開発よりも広告にかけるコストの方が大きくなっているのではないだろうか。これは悪しき流れであり、グローバル化の弊害だと感じる。
本当に我々が目を向けるべきなのは全国規模での競合ではなく、自社と向き合ってくれる、地域に根付いたひとりひとりのユーザーだという事を再認識しなければならない。
もちろんこの激化した競争で生き残るために広告という手段は非常に良い選択だが、それはあくまでも事業拡大のための手段であり、それに依存してはいけない。
まず「適正な価値の商品」を作る事に力を入れる。その後に必ず、「正しく伝える」という事に力を入れる。しかしこの、「正しく伝える」という事は極めて難しい。
「正しく伝える」ためには、正しい伝え方を学ぶ必要がある。
これからの時代の戦略として、情報発信やコミュニティ作りが重要な課題となるだろう。しかしそれらも、間違った打ち方をしてしまうとただの宣伝と変わりない。
私たちはユーザーとどのように接点を作るか、今一度、向き合い方について考えなくてはならない。
今だからこそ地域戦略
これまでの話で、少しずつ地域戦略の本質が見えて来ただろうか。
地域戦略とは、地方に店舗を構えることではないし、ローカルな事業者会に参加することでもない。
新しい大衆向けのインターネット広告に頼らず、地方で愛され、選ばれるようなビジネス設計が必要だということだ。
もちろんここで言う地方とは本当に地域密着である必要はなく、それくらいの距離感でユーザーを向き合っていくことが重要だということだ。
「昔ながらの良いお店」を除いて「地元で人気なお店」について思い起こすと、やはりどれも店内や商品に人一倍のこだわりを感じる。それが結果として地元での口コミに繋がり、行列ができている。
もちろんそういったお店ほど広告に頼っていない。
そこまで地域の人に愛されて成長することができたなら、多店舗展開やオンライン販売、フランチャイズ化などの事業拡大は目の前だ。
しかしそういったお店を運営されている人ほど事業拡大に興味がなく、目の前のお客さんと向き合い続けたいというお話をよく聞く。その姿勢が素敵な店舗を生み出しているのだろう。
それでも世界は廻っている
これらの内容は、組織単位で十分に吟味する必要がある。
しかし社会はそんな組織レベルの改革を気にする事なく、今日もグローバル化を進めている。
今日もマーケットに並んでいる商品はそれぞれの勝者達だ。
勝者とは、巨大資本によって品質と価格で勝負できる事業者、地域戦略でコアなファンを獲得している安定企業、ニッチなニーズに応える事ができた新鋭企業、そういった面々だ。
売れない商品は市場から見放され、手に取ってもらうことすらできない。
そうなってしまっては商品の改善どころではなく、事業存続の危機だ。
そうなる前に今私たちは、ユーザーが広告に飽きている事実を正面から受け止め、好かれる商品作りをしていかなければならない。
まずしっかり「適正な価値の商品」を作る。そしてそれを「正しく伝える」という事について、これからも学び続けていく必要があるだろう。
私たちは持続可能な企業作りのために、変化する世の中に対してあらゆる面から捉える必要がある、
非常に難しい問題ではあるが、その具体的な方法については私のnoteで触れているので参考にしていただけると幸いだ。そしてこれらの発信を受けた方と共に学んでいきたいと願う。
最後に
多くの競合と比較される現代では、サービスの差別化だけでは戦う事が難しくなっています。
自社または製品の魅力を最大限伝える事ができるように、様々な視点から物事を捉える事が重要です。弊社は、これらを総じて「デザイン経営」と捉え、一緒に考えたいと思っています。
現在、「ブランドマネージャーの能力を個人・ベンチャー企業に取り入れる」ためのサービスをご用意しておりますので、先行に不安を感じている方はご一読ください。
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最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
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ビジネスがローカルに戻ってきている。|松本直樹@decico #note https://t.co/hNOkhSt3uD
— 松本@decico (@malutsun) October 12, 2021
追伸
私は広告業界と何の関係もなく、ブランディングや地域戦略というのが得意分野です。そのため広告批判のような偏った内容となっておりますが、最近のユーザーの広告離れを受けて広告業界も変わりつつあるようですね。
今回の内容は、「広告が無くても運営できる安定企業を目指す」という視点での読み物として捉えてください。世の中には素敵な広告もたくさんあります。「価値のある新たな広告」もたまに見かけます。そういった素敵な広告で溢れる世の中になれば良いなと思います。
しかしやはり、そのレベルは再現が難しいと感じます。直球的に購買を煽らずに企業価値を高めるような素敵な広告は、ブランディング的な観点から見た時に企業の価値を大きく伸ばすことには成功していますが、短期的に見た場合はやはり購買意欲を煽るのが一番効果的ですね。
広告についても、ブランディングについても、全てのビジネスは時代と共に変化していくという事を感じる日々です。これからも様々な事を学んでいきたいと思います。
サポートは不要です。お気持ちのみ受け取ります、ありがとうございます。