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へんげしょしゅう・えたき・えんじょう

『スゲーカッコいい』と、最近見るたびに感じる。

了義と未了義について、ツォンカパ大師が解説されたテキストで、

釈尊の説かれた教えの中で、言葉通りに受け取って良い教えと、説かれた言葉から意味を推し量って受け取らなければいけない教えを分類した著作がある。

直訳するなら『未了義と了義の意味を尽く分類した論書・善説の精髄(drang nges legs bshad snying po)』という、ものものしい著作名となるが、

釈尊の教えの中で、一見矛盾しているように見えるものは、どういうお考えで説かれたのかを明らかにする解説書である。

最近少しずつ読み進めているが、テキスト中での言葉の使い方、表現の仕方に、
ことあるごとに『スゲーカッコいい』と感じ入っているのである。

仏教用語は難しい。
漢字が混ざると更に意味が混沌としてくるものだ。

その点、慣れればチベット語は、言葉の組み立てから意味を想像し易い。

このテキストは先ず、唯識派の見解に沿って説明をしていくのだが、
唯識派とは大乗仏教の学派に含まれる。
唯識派の後は二つの中観派の見解を説明していくのだが、
それらの三つが大乗仏教の学派である。

釈尊の言っていることに、言葉通りと、言葉通りでないものがあると分けているのは大乗の学派だけで、
小乗(パーリ語法統)の学派は、そんなことトンデモナイと思っている。
彼らにとって、釈尊の教えは全て真実だからである。

そのような訳で、未了義・了義を分けるのは大乗の学派のみであるが、学派によって分け方のシステムも違ってくる。

この部分が解り辛いので、多くの解説書が記された。
そのうちの一冊に、ツォンカパ大師の著作がある。

先ず唯識派の考えに沿って説明がされるけれど、
唯識派は、ものごとを三つに分ける。
それが遍計所執(へんげしょしゅう)・依他起(えたき)・円成(えんじょう)である。

だいたい漢字が初見で読めない程難しい言葉である。
この言葉の難しさが、仏教を勉強したくなくなる一つの理由ではないかと思う。

それはさておき、
その三つが分類されて初めて、唯識派の空性が説明できるようになる。

上記の三つのうち、空性は最後の円成である。
フルネームは円成実性(えんじょうじっしょう)という。
唯識派は空性を説明するけれど、実在も肯定する。
空性のような、それを修習することによって煩悩等を浄化することができる究極の対象が円成であり、
円成は実在すると主張する。

円成はチベット語直訳では「完全に成立した(yongs grub)」という。

「円成実性」という名前の空性は、「空っぽの性」である。
「何が空っぽなのか?」と説明する時に出てくるのが、他の二つの性である。

「○○に、△△が無い、空っぽ」ということで、
○○は依他起性(えたきしょう)。
△△は遍計所執性(へんげしょしゅうしょう)である。

△△の遍計所執は何かといえば、チベット語直訳では「全て考察された(kun brtags)」といって、全てが概念作用によって認められるもので、思考の対象である。
遍計所執には有も無もあるけれど、空性について語る時「△△が無い」といわれる△△は、無いのであり、間違った思い込みの対象である。

遍計所執は実在しない。

「○○に、」の依他起は、「他に依拠して起こる」ものである。
チベット語では「他の力(gzhan dbang)」といって、他のものごとの力によって生じさせられるものをいう。
依他起は、我々が五感と、思考ではない意識を通して存在を正しく認識できるもので、刻々変化して行くもの、実際にあるものになる。

彼らにとって、依他起は実在する。

この依他起(実際にある事物)に、遍計所執(思い込みで作った、本当は無い対象)が無いことが、円成(空性)なのである。

「思い込みで作った本当は無い対象」については唯識派独自の見解があるのだが、筆者がここで提示したいのは、この三つの関係性は何にでも当てはまるということである。

我々はいろいろなことを思い込む。
「思い込む」とは、何かを実際とは違った形で捉えている、ということである。

「実際と違った形で捉えられている何か」はあるのか?と問えば、
それは無い。頭で思い込んでいるだけのことだ。

この「思い込みの対象」が無いことが分かれば、「思い込み(思考)」は無くなる。

実際に経験しているものごとを、「思い込み」のバイヤスなく、客観的に見ることができるようになる。

この「思い込み」が、煩悩だったり、煩悩の一部として実体視だったりするわけである。

仏教哲学は言葉が難しいから、内容も難しいと思いがちだけれど、
結構シンプルなこといっていませんか?


DECHEN
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