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ソマン②~タシガン僧院~

タシガンの俺達の僧院は、上のタシガン村の最も高い位置にある。
おじさんの家があった村の入り口から、長い階段が続いていた。

ナコからタシガンまで我々を運んでくれた軽トラの運ちゃんも、タシガン僧院に参拝していくという。
運ちゃんの後に続いて階段を上ったが、最初の30分程で既に疲れてしまった。

荷物をしょっている我々はもちろん、手ぶらの運ちゃんも息があがっていた。

タシガン僧院にはラマがおり、彼1人で僧院を守っているそうだ。
息を切らせてやっとたどり着いた僧院は、石造りの古い建物だった。

壁にある入り口を入ると短い階段があり、その上が少し開けていてお堂の入り口がある。
階段を上がり切った正面に1つ、向かって左側にももう1つお堂への入り口があった。

タシガン僧院は、今まで聞いてきた道中の説明に1度も登場してこなかった。
しかし、今回の旅行で最も参拝して良かったと思う僧院の1つになった。
何故なら、お堂にいらっしゃるご本尊様方が素晴らしかったからである。

暗い本堂に入ると、先ず古くて黒っぽくなったマニ車があった。
マニ車は中に真言やお経が巻かれてはいっている円柱で、1回まわすと納められているお経を1回読んだと同じ福徳を積むといわれている。
低い位置に作られていて、座ってまわせるようになっていた。
運ちゃんが早速座ってまわしている。

マニ車の後ろ、本堂奥に祀られていた主尊は、おそらく無量光如来。
優しい雰囲気で、左右にグルリンポチェや、菩薩方が横並びに座っていた。

その時は知らなかったが、後に土地の女性から聞いた話によると、
ご本尊の無量光如来の胸元には凹みがあって、そこにチベットの大成就者ミラレパの像が入っている。
このミラレパ像は、ミラレパ存命時に作られ入魂された、ご本人に非常に良く似た3体のうちの1つで、
今も生きていて髪の毛が伸びている。

彼女はスマホのライトで胸元をよく見てみたが、金色の髪の毛らしきものを見ることができたそうである。

そんな情報は全く無い状態でご本尊の前に座っていたのだけれど、
何とも言えない優しさで包まれるような、不思議な感覚を経験した。

ふと横を見ると、区切られた土間の向こうに、また息をのむような尊像が立っていた。
笑われるかもしれないが、「魂が入った」という言葉しか思いつかない、千手観音像がこちらを向いていた。

先日まで「ターラー菩薩に呼ばれた」なんていっていた筆者であるが、
ここで「呼ばれた」という言葉を実感した。
感動のあまり、涙ちょちょ切れ状態であった。

ここでお目にかかった千手観音像は、今まで拝見した観音像の中で、最も魂が入っていると感じられた観音様である。
僧院が開基された時、純粋な祈りとともに開眼供養がされたのだろう。
その時の祈りの強さがそのまま残っているようなお堂と尊像方だった。

ボロボロ泣いていた筆者は、
写真撮影禁止など全然注意されていなかったにもかかわらず、
写真を撮ること自体すっかり忘れて感動に浸っていた。

その頃運ちゃんはさっさと参拝を終わり、外で待っている様子だった。

もう1つの入り口から別のお堂に入ると、先ずターラー母尊が祀られている部屋があった。
先程観音様にお目にかかった後だったので、おそらくその為のヒントとして彼女が導いて下さったのだろうと勝手に納得し、
「ありがとうございました。」と言ってターラー像に頭をつけた。

その奥には、護法尊の部屋があった。

外に出ると、運ちゃんと痩せた坊主頭の若者が話している。
Tシャツにスウェットのズボンというラフな格好で、のんびりと低い塀にもたれていた。
そこらへんに住んでいるお兄ちゃんだろうと思って、「トイレはありますか?」ときくと、「オープンだ」という。
もう村の外れで石や砂と、低木しかない山道だから、そこらへんでしろということなのだと理解した。

友人は未だ瞑想をして、お堂の中に残っている。

しばらく3人で待っている間に、この若者が僧院を守るたった1人のラマであることが判明した。
若さと服装で誤解をしていたが、実は大切なお勤めをしているお坊さんだったのだ。

この僧院は、場のエネルギーが昔のままに残っている。
彼の澄んだ目も、世の中のあれこれに汚されていない性質を表しているように感じた。
自らをちょっと恥じ、場を持たせるために少し水を飲んだりしているうちに、
友人が瞑想を終えて、こちらも感動した様子で僧院から出てきた。

僧院を出ると、ソマンへの山道が始まる。

つづく。


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