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僧院ツアー②~ラルン~

ラルンへ足を伸ばそうと思ったのは、タボの僧院長先生のお話があったからである。

最初はダンカル僧院とキー僧院に参拝したいと申し上げたのだが、
「だったらラルンにも行くと良い。」とおっしゃる。

何故かというと、ロチェン・リンポチェが地にさした杖が、そのまま木になって生えているからだ。
「ロチェン・リンポチェ」というお名前から、勝手にロツァワ・リンチェンサンポを想像した筆者は、
千年の樹齢を持つ大木が、ラルン僧院の前に生えていると思い込んだ。

ならば是非ともお目にかからねばならない。

時々急に信心深くなる筆者は、その話を聴いたとたんにラルン僧院に参ってみたくなった。ダンカル僧院から、幹線道路に下りず山を巡って行けば良いという。

運転手のお坊さんは、僧院長先生から行程を説明されていたらしい。
古いダンカル僧院を出て、新しい僧院へ戻る前に上り坂が分岐していた。そこから上へ登っていく。

途中、道を清掃したり、道路工事をする土地の人々に、タボ僧院での法要のお下がりのビスケットを渡しながら、お坊さんは長閑なチベタンソングを流しながら気持ちよくドライブをしていた。
車を運転するのが好きな人なのだろう。

乾いた周囲の様子が少しずつ潤いを帯びて、緑が多くなったなと思ったらラルンに着いた。
小さな僧院、というより寺が、村の外れにある。

小さな門をくぐると、目当ての木は探すまでもなくそこにあった。
高くはない。枝を四方に伸ばした柳の木である。
根幹の部分は太くなって、幾つも株別れしてブオーンと生えている。
木肌はベージュ色で乾いていたが、寺へ向かう通路まで伸びた枝の先に細長い緑色の葉がファサファサついていた。
高地だから横に広がったのだろうか。

お坊さんが敷地の奥まで入って、堂守さんを探してきてくれた。
鍵を開けてもらうためだ。
「ロチェン・リンポチェ(この時筆者はロツァワ・リンチェンサンポをロチェン・リンポチェだと思っている)が杖をさしたのはこの木か?」と身振り手振りを交えて訊くと、そうだという。

おお!

すかさず幹に額を当てて、智慧のお加持をお願いする。

木に向かい合うように位置する僧院の壁は漆喰塗りで、古いままなのか、しばらく前に修復されたのか分からなかった。
入り口は狭くて、入り口から正面に向かう狭い廊下には電球がついている。
入り口を入ってすぐの左側に小部屋があり、ここにも観音様がいらっしゃった。
古い尊像で感じられる、魂が入ってこちらを見ておられるような感覚がある。
礼拝して少し座り、お礼と挨拶を済ませて本堂へ入った。

ラルン僧院は何派の僧院であるのか、誰に訊くこともできなかったが、
筆者が勝手にニンマ派かと思った理由を、昨日になって思い出した。

その時に一緒にお参りしたグループのお坊さん方の衣が、ニンマ派のお坊さんのそれに似ていたこと。
ニンマ派のお坊さん方は、トンカと呼ばれる前合わせのベストのような上衣をつけず、黄色い袖なしのブラウスのような上衣をつけていることがある。

もう1つの理由は、本堂の主尊が大きなグル・リンポチェであられたことである。

古い僧院らしく、明り取りの窓もなく暗い室内であったが、参拝者が訪れると堂守のおじさんが電気をつけてくれる。
本堂の正面にグル・リンポチェ。向かって左に観音様。向かって右に訳経官様。
訳経官のお名前を伺う機会はなかったが、尊像の面立ちはタボ僧院の尊像群と似ている。
訳経官(ロツァワ)リンチェンサンポであろうと想像した。

ラルン僧院のすごいところは、お堂の壁を壁画や配置された尊像が埋め尽くしているところである。
主尊の横にも後ろにも、仏菩薩大集合である。

主尊に向かって左側の壁には、ターラー母二十一尊がおわします。
後には天界の様子や仏塔、如来像が半立体的に背景をなしている。
右側の壁はよく覚えていないが、密教系の尊像がおられたのかもしれない。

一部の尊像の指がおれていたりはしたものの、参拝者のいない時には暗闇が保たれているせいか、壁画や尊像の彩りはいまだ鮮やかなものが残っていた。

お堂の中の空気も、外界とは違う。

堂守さんが白い布を結んで作ったお守りの紐をくれ、堂内の皆さんにお礼を申し上げて外に出た。

他の古い僧院と同様に、ラルン僧院にも新しいお堂があった。
法要をする時などに使われるのだろう。

新しいお堂を出ると、「大日如来がいるから拝むか?」という。
「拝みます」と言ってお坊さんと堂守さんについて行くと、古い土造り、半分崩れて上が無い僧院跡がある。

こちらもまた小さな入り口をくぐって入ると、ドーンと目の前に台座が作られ、その上に真っ白な大日如来様がいらっしゃった。
とはいえ四方向に向かって四尊いらっしゃったので、大日如来尊と、他の如来方だったのかもしれない。
全ての御身色が純白であった。

周回する通路以外のスペースは無く、ただご尊像のみが座する小さな部屋だった。

ラルン僧院のお堂の前にある柳の木については、後で分かったことがある。
筆者は勝手に樹齢千年の大木であると思い込んでいたが、杖を地にさしたロチェン・リンポチェは、先代のロチェン・リンポチェだと、キー僧院で会ったお坊さんが言っていた。ということは、樹齢千年ではない。
ロチェン・リンポチェについては、キー僧院の回で記す。

もう一つ、柳は挿し木でも増やせるそうである。

タボ僧院の大日如来像は撮影が許可されなかったが、ラルン僧院では写真撮影について特別禁止はされなかった。
ご尊顔は良く似ておられるので、
拝顔なさりたい方は明日投稿する写真をご覧下さい。

ラルンの次は、キー僧院へ向かう。

つづく。


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