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RWAで見込まれる非金融分野の事例

こんにちは!
リサーチャーのmitsuiです!

最近「RWA」という単語をよく聞くようになったのではないでしょうか。事実、現在のweb3領域において最も盛り上がりを見せ、期待されている領域の1つでもあります。この記事では、そんなRWAの概要と特に非金融分野におけるユースケースについて深堀します。

RWAとは?

まずは簡単に「RWA」について解説します。「RWA」は「Real World Asset(現実世界の資産)」の略です。株式や債券等の金融資産に加え、不動産・時計・アート等、さらにはスニーカーやポケカ等も指してRWAと呼びます。広義の解釈として、現在のWeb2の世界で資産として認識され価値がついているものがRWAと言えます。

そんなRWAをブロックチェーンに載せることをトークン化と呼びますが、このRWAのトークン化が大きな盛り上がりを見せています。
ボストン・コンサルティング・グループが発表したレポートによると、RWAのトークン化市場は2030年までに16兆ドルのビジネスチャンスになると推定されています。

BCGレポート「on-chain-asset-tokenization」より引用

透明性の担保、グローバルな取引の実現、安い手数料など、トークン化のメリットは多数ありますが、その中でも大きなメリットが流動性の提供です。

流動性とはすぐに現金化できるか否かという性質で、流動性の高い資産やすぐに現金化でき、流動性の低い資産はすぐに現金化できません。例えば、投資信託と不動産ではどちらが流動性が高いでしょうか。答えは前者です。不動産を現金化するには売買に合意してくれる相手を探して契約を締結する必要がありますが、投資信託はネット証券からワンタップで売却できます。

資産によって異なることは前提の上ですが、基本的には流動性が高い資産の方が投資家に好まれ、高い価格がつきます。なぜならば、売却したいときにすぐに現金化できることで安心して購入ができるからです。

身近な例で言えば、高級ブランドのバッグは確かに高いですが必要なくなったら売りに出すことができます。これがリセール市場がなければブランドバッグを購入することを躊躇う人も増えるでしょう。それだけ、資産において流動性は非常に重要な概念です。

RWAをトークン化することで、ブロックチェーン上で自由に売買できるようになるので、あらゆる資産の流動性が向上します。先ほど流動性が低い事例として出した不動産もその所有権をNFTとして売買できれば、グローバルで24時間365日マッチングが行われ、ワンタップで売却が完了します。つまり流動性が向上します。

また、トークン化することで小口化も実現します。不動産で言えば分譲の考え方で、100億円のビルは買いづらいから1億円の部屋毎に分けて販売します。トークン化すると1億円の部屋をさらに1,000分割して1口10万円から購入できるようにします。その場合、その部屋における所有権の1,000分の1を保有することになり家賃収入の1,000分の1を手にすることができます。

結果として、トークン化することであらゆる資産の流動性を向上させることができます。(ここではわかりやすく”所有権をトークン化”という言葉を利用していますが、法規制の観点からRWAのトークン化は必ずしも所有権をトークン化させているわけではありません。各資産、そしてサービスによって何をトークン化させているのかは異なりますのでご注意ください。)

RWAとしてブロックチェーンに載る領域の全体像

さて、ここからはより具体的なユースケースを見ていきます。
「一体どんな資産がRWAとしてトークン化されるのか」という話です。
これは大きく2種類の資産に分類することができます。

  • 金融資産

  • 非金融資産

金融資産や株式や債券、投資信託などを指し、非金融資産はそれ以外の実物資産全てを意味します。そもそも”資産”とは以下に定義されます。

資産 = 貨幣を尺度とする評価が可能で、かつ将来的に会社に収益をもたらすことが期待される経済的価値

wikipediaより抜粋して引用)

要するに現在も金銭的な価値がありながら、将来的にも金銭的な価値が続くだろうと考えられるモノを指して、資産と呼びます。これに該当するものであれば、不動産や貴金属だけでなく、時計やスニーカーやアート、ポケモンカードまでも資産に該当するというわけです。

https://landnet.co.jp/redia/13068/ より引用

なので、RWAでトークン化される資産は、ほぼ全ての資産という結論になります。

非金融分野でのユースケース

とはいえ、これだけではイメージがつきづらいと思うのでこの記事では「非金融分野でのユースケース」をご紹介します。金融分野は株式や債券等のトークン化でイメージがつきやすいですが、それ以外のトークン化はどのようなものがあるのでしょうか。

現時点で見られる事例を列挙します。

  • 不動産

  • 金、貴金属

  • 美術品、アート

  • 時計

  • スニーカー

  • トレーディングカード

  • お酒

  • 農作物

  • 音楽や映画の権利

  • 特許や知的財産

  • カーボンクレジット

etc…
この中から幾つかピックアップして具体的なプロダクトを紹介します。

①RealT(不動産)

「RealT」は不動産をトークン化して売買できるプラットフォームです。アメリカを中心とした不動産が並んでおり、不動産毎に小口化したトークンが売りに出されています。トークン保有者は1週間単位で家賃収入を得ることができ、必要がない場合にはすぐにトークンを売りに出すことが可能です。

https://realt.co/marketplace/ より引用

②UniCask(お酒)

UniCaskはウイスキーを始めとするお酒のトークン化に取り組むプロジェクトです。小口化した樽にNFTを紐付けて発行することで、1人では高額で保有できなかった酒樽の保有を実現し、デジタル上での繋がりも作ることができます。

https://unicask.jp/#page_top より引用

③Land X(農作物)

Land Xは将来的に収穫予定の農作物に紐づいたトークンを発行するプラットフォームです。トークンホルダーは実際に収穫された農作物の一部を獲得することが可能になります。農家は予め収益を確保することができ、トークンホルダーは通常よりも安く獲得できると同時に、市場価格の高騰によっては投機的なメリットも存在します。例えば、世界的に小麦の価格が上がっている時に小麦の収穫権利トークン(xWHEATと呼ばれるトークン)の価格は上がります。

https://testnet.landx.fi/ より引用

④OIKOS MUSIC(音楽)

OIKOS MUSICは、楽曲(音源)が音楽ストリーミングサービスで生み出す収益を受け取れる権利”を小口化しNFTとして販売するプラットフォームです。SpotifyやApple Music等で得られる収益の一部をファンと分配することで、アーティストを一緒になって応援するインセンティブが生まれます。

https://thebridge.jp/2023/09/oikos-music-seed-round-funding より引用

⑤STRAYM(アート)

STRAYMはアートをトークン化し分割保有を可能にするプラットフォームです。例えば、こちらのバンクシーのアートは1枚約576万円ですが、それを48,000口に分化することで、1口120円から購入できるようになっています。アートの保有や投資を誰もが実現できるようになります。

https://straym.com/art/3 より引用

⑥Americana(美術品、スニーカー、トレーディングカードなど)

Americanaは倉庫に預け入れた資産をトークン化して売買できるプラットフォームです。よって、預け入れる資産が美術品や貴金属でも、スニーカーでも、アートでも、トレーディングカードでも、アパレルでも、なんでも可能です。預け入れた資産の所有権の売買となるので、倉庫で安全に保管できると同時に、必要なくなった際に簡単に売却することができます。

https://www.americana.io/  より引用

⑦Story Protocol(知的財産権/IP)

Story ProtocolはIPを分散型で管理するプロトコルです。IPの成長記録をブロックチェーン上に刻み、全員でIPを制作することも可能ですが、既存IPの利用権をトークン化して売買することができます。Nouns等のNFTプロジェクトでは商用利用を解放している事例は見られますが、それらを既存IPでもトークン化して実現します。Story Protocolを利用することで誰が利用したのかの記録も残り、利用の分の収益も入り続けます。トークンゲートなどで購入制限をかけることも可能なので、IPのブランディングを崩さない形で自律的な拡大を可能にします。

https://www.storyprotocol.xyz/ より引用

↓他にも、過去のリサーチ記事に「カーボンクレジット」や「ポケカ」に関してのユースケースをまとめているのでぜひご覧ください!

おわりに

以上、今回はRWAの概要と7つの非金融分野でのユースケースを紹介しました。

RWAのトークン化は金融・非金融領域共に大きな盛り上がりを見せており、この先の急成長が見込まれています。筆者としても、この先の急成長は間違いないと考えていますが、いくつかの注意点も存在します。

先日、不動産を裏付け資産の一部としていたステーブルコイン「USDR」のペッグが外れて、価格が1ドルから0.5ドル付近まで暴落したことがニュースとなりました。

この個別事例だけでRWAトークン化への悲観的な未来を指し示すものにはなりませんが、潜在的なリスクを表面化させる出来事になったと考えています。

RWAのトークンはその性質上、当たり前ですが裏付けとなる資産が存在します。その資産が本当に存在するのか、盗難や天災などの何らかの出来事で毀損もしくは消失した場合はどうするのか、これらの問題は依然として残ったままです。

最初からデジタル上に存在する株式や債券等の金融資産のトークン化に関しては問題ありませんが、非金融領域のトークン化は実物資産であることも多いので、この辺りの実物とリンクさせ続ける仕組みは今後のRWAトークン化における大きな課題となっています。

また、現在はRWAトークン化がバブルとなっており、この先RWAトークン化であれば過剰な価格がつく可能性もあります。ですが、あくまで現実世界の資産をトークン化しているだけなのでそもそもの資産に価値がなければ価格がつくはずはありません。よって、この辺りのリテラシーも必要となってきます。

筆者としても特に非金融領域のトークン化は大きな期待と可能性を秘めていると考えており、今後の発展が楽しみです!

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