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僕らは一度サヨナラしなくちゃいけない

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ボクの夏と同じだな

ボクの夏と同じだな

「今日行けなくなっちゃった、ごめんね」
打ち上げ花火の音が落ち着いたタイミングで、一緒にこの夜空を見上げているはずだった女の子からメールが届いた。

「いいよいいよ気にしないで。また今度〜」
送信ボタンを押すと「ドン!」と大きな音が鳴った。

男6人でつるむ大学生活が3年半ほど過ぎた頃の話だ。全員もれなくオタクで、集まってはゲームをしたりアニメを見たり声優を語り合ったりして毎日を過ごしていた。

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同じ傷がある

同じ傷がある

「そこのカッコいいお兄さん! ちょっと見てって~」

この街では約5メートルおきくらいに「もしかしたら自分はモテるのでは?」という錯覚に陥ってしまう。その街に存在するすべてのおばちゃんが褒めてきて、美人なお姉さんがにこやかに手を振ってくるのだ。

マフラーに顔を埋め、露出度の高い衣装に身を包んだ女性をチラチラと横目に見ながら歩いていると、いつの間にか店先の提灯もあたりを歩く人も少なくなっていた。

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アナルごめんね

女性と手を繋いだりキスをしたりセックスをするよりも先に、僕はアナルに指を入れられた。正しくは『指を入れていただいた』か。

約15年前、僕はエロ本の編集者だった。
元は漫画編集志望だったが、上司が抜けてしまった穴を埋める形で実写エロ本編集部に編入された。まさか1ヶ月後に自分の穴を埋められることになるとは思ってもいなかった。

この『雨の五反田、涙のアナル事変』についてはいつかnoteで更新しようと

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8bitの記憶

8bitの記憶

初めてファミコンに触れたのは、たしか4歳の時だったと思う。

その日、昼間に出て行った父が夜遅くに帰ってきた。半分寝ていた僕は父に叩き起こされ、無理やりテレビの前に連れていかれる。母のぼやきを尻目に電気がつき、ぼやけた世界のピントが徐々に合っていく。

目の前にはファミコンがあった。どうやら父がパチンコで勝ったらしい。

発泡スチロールの擦れあう音を聞きながら箱を開け、ビニールに包まれた本体を取り

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ドデカい白い建物

ドデカい白い建物

※この記事は特定の宗教や思想を否定するものではありません。まただいぶ昔のことなのでうろ覚えで書いていますが、一部の記憶はハッキリしています。

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今から約20年ほど前の話である。

「今度一緒にご飯行かない?」

大学を卒業してから半年後、在学中に想いを寄せていた女性からメールが来た。

彼女とは教職を目指すグループで一緒になった。明朗快活で男女分け隔てなく友人がいるタイプで、夜遅くま

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『声』

「お疲れ様でした〜また撮影お願いします」

エロ本の付録DVD撮影が終わった。
現場に残っていたお菓子を咥えたまま慌ててお辞儀をすると彼女はフフッと笑った。

そういう設定の役とはいえ、さっきまでストーカーに追いかけまわされ、組み伏せられて色々なことをされたというのに。その指示をしていたのは自分なのに。

「またよろしくお願いします!」

その声が聞こえたのか、タクシーに乗り込んだ彼女は窓を開けて

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『最初の記憶』

AV新法が可決された日の夜だったと思う。

高田馬場にある怪しげな場所(めちゃくちゃ失礼な言い方)で二村ヒトシさんに「君は自分の人生を文章化したほうがいい」と言われた。

mixiで二村さんにファンメを送ったときに返ってきたメッセージが、「君は男優できるかい?」だったことを思い出した。AVの世界に足を踏み入れるきっかけになった言葉だ。

今回も唐突なきっかけに従ってみようと思う。
簡単に言えば自分

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