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5/8放送分「薬師寺」

奈良にある薬師寺は、法相宗の本山で、天武9年(680年)に天武天皇が皇后である、のちの持統天皇の病気回復を願って建てられました。しかし、天武天皇は薬師寺の完成を見ずに崩御してしまいます。その遺志をついで、持統天皇や子供たちに引き継がれ、697年、持統天皇の時代に完成しました。

法相宗は奈良時代に中国からもたらされた宗派のひとつで、日本における現存最古の宗派です。なので薬師寺には、建物や装飾などに中国を思わせる部分がたくさんあります。

創建当時その大伽藍は、わが国随一の壮大な美しさを誇り、金堂や塔のたたずまいは「龍宮造り」と呼ばれるほどの美しさでした。その後、718年に飛鳥の藤原京から平城京に移されました。幾多の災害により東塔以外は失なわれましたが、現在は復興されつつあり、1998年ユネスコ世界遺産に登録されました。

昭和から平成にかけて復興事業が始まり、金堂や大講堂など次々と再建されていて、今も再建途中なのだそうです。

境内には金堂や講堂、食堂(じきどう)などのお堂がありますが、長い歴史の中でほとんどが焼失しており、創建当時の1300年前から残っているのが東塔です。この東塔、ぱっと見では六重の塔に見えますが、実際には三重の塔で、大きい屋根と小さい屋根とで一重、それが3段重なり、三重の塔となっています。

薬師寺には9件の国宝と26件の重要文化財があり、本堂である金堂にはご本尊である「薬師三尊」が祀られています。真ん中に薬師如来、その脇を固めるように右側には日光菩薩、左側にはがっこう(月光)菩薩がいらっしゃいます。

藥師如来は人びとの病気や災難を除き、健康と幸福を与えてくださる仏様として信仰を集めています。今は漆黒の姿ですが、当初は金が施され、きんいろに輝いていたそうです。

「薬師三尊」は高さ3mほどあり、めっちゃ存在感があります。ちょっとふくよかで優しい顔の薬師如来と、特徴的な腰のひねりをしている日光菩薩・月光菩薩は、今見てもセクシーで美しいです。日本の仏像彫刻の最高傑作のひとつと言われるのがよくわかります。

訪問時、お坊さんの説法があり聞いていたんですが、わかりやすい例えをされていました。薬師如来は薬の師なので、今でいうお医者さん、日光菩薩は日勤の看護師、月光菩薩は夜勤の看護師だと表現されていたのですが、そう聞くとなるほど〜てなりました。お医者さん役と看護師さん役の菩薩さんが24時間体制で日夜、たみ(民)の健康のために働いてらっしゃったんですね。ありがたや〜です

またお坊さんはこんな話もされていました。「薬師寺には3つのものがありません。それは何だと思いますか?」そう言われても想像つかないですよね。答えは檀家を持たない、葬儀がない、お墓がない、なんだそうです。

法相宗は、日本における現存最古の宗派と話しましたが、奈良仏教系の これらしゅうは(宗派)が生まれた飛鳥時代~奈良時代にかけては檀家制度が誕生しておらず、葬儀を行うという風習はありませんでした。

また法相宗は学問を究めることに重きを置いてきた歴史があり、葬礼は行わないと言う確固たる意志があって、檀家制度を持たなかったとも言われています。葬儀も檀家もないのだから、お墓がないのも当然ですよね。

では檀家を持たないとなれば、お寺の維持管理費用はどうするのか。それは写経を収める費用でまかなっているそうです。昭和43年より復興のために行なわれています。

写経は一般的にはお焚き上げされることが多いそうですが、薬師寺では復興されたお堂の中に永代供養されるそうです。ということは、国宝や重要文化財の建物の中に、収められるということです。一度収めた写経を取り出すことはできないそうですが、自分が書いた写経が永久的にお寺に保存されるって他にはないですし、なんかご利益がありそうですよね。

写経は薬師寺の道場で書く以外に、自宅に写経セットを一式郵送してもらい、完成次第薬師寺に返送する方法もあります。仕上がった写経は、お経をあげた後安置されるそうですよ。

本来写経は、仏教の修行のひとつですが、お経を一文字一文字丁寧に書き写すことで心を落ち着け、自らの心のあり方を見つめられるそうです。
パソコンやスマホが発達して、文字を描く機会が減っていると思います。ド忘れして、簡単な漢字なのに読み書きできないことありませんか?写経をすることで字忘れを完全に防ぐことはできませんが、文字を書くことで記憶を呼び起こせるかもしれません。そんな機会を作ってみてはいかがでしょうか。

そんなこんなで、約30分法話をされていたんですが、時には笑いもあって最後まで興味深く聴けました。法話は定期的に開かれいて、おもしろくわかりやすいので、タイミングが合えばぜひ聞いてください。

で、なんで薬師寺に行ったか、これも冒頭で話した通り、アニメ「薬屋のひとりごと」のイベントがあったからなんですね。JR東海「推し旅」のコラボ企画「薬屋、奈良のたび」で展開している企画なんですが、『薬屋のひとりごと画集』の発売を記念して、カバー画や口絵のデジタルカラーが30点以上展示されていました。

展示はGW期間中のみで現在は終了していますが、どれもキレイでしたし、見応えありました。事前予約制だったので、混雑せずゆったり見られたのもよかったです。

このコラボ企画は、新幹線で奈良へ行く人向けではあるんですが、謎解きボイス付きスタンプラリーやオリジナルグッズの購入は、新幹線を利用せずとも参加できます。スタンプラリーはコンプリートすると、書き下ろしオリジナルデザインのポストカートがもらえます。スタンプラリーの参加は無料ですし、奈良を巡る良い機会でもありますので、興味ある方はぜひ参加してみてください。ポストカードは2種類あるんですが、親子二人で回ったので、デザイン違いがもらえてラッキーでした!

期間は6/30までとなっています。詳しくは下記サイトをご覧ください

余談ですが、薬師寺でアニメとのコラボイベントは今回が初だそうです。作品のファンのお坊さんが、関係各所にかけあい実現できたと話されていました。法相宗が中国からもたらされた仏教なこと、薬師如来は薬の師で薬屋と関連性が深いなどで、ならばとコラボができたそうですよ。

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