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「居眠り運転防止啓蒙広告」の考察


1. なぜアイデアとして優れているか?

「まぶたが接触する」=「人と車が接触する」という、眠ることと車の事故を「接触」という共通点で捉え、形にされたアイデア。


眠るためには目を閉じる動作は必ず起こることである。
この「目を閉じる」ことを閉じるという認知ではなく、「上まぶたと下まぶたが接触する行為」という視点に切り替えることによって、事故と居眠りの共通ワードができている。

「居眠りによって人の命を奪ってしまう」
という意味が、瞬間的に理解できる、とてもよくできた広告。


2. ビジュアル表現のよさは何か

1つ目は「虚ろな目」である。これによって、居眠り直前のウトウトしている状態が表現され、事故が起きる直前の人間のリアルな表情を想像させる。
2つ目は「写実寄りの絵」である。
今回は事故防止の啓蒙という目的があるため、ポップな絵や可愛い絵になると緊張感が伝わらない可能性がある。
写実寄りペンで描いたような絵タッチにすることで、まぶたに描かれていても違和感がなく、かつリアルな事故を連想させることができている。


3. 構図の妙は?

虚ろな目が中央に来ているシンメトリーな構図。
絵を見せるためにまぶたにフォーカスしたビジュアルが、通常の啓蒙ポスターを一線を画しており、差別化を図れている。
絵の部分は、車は俯瞰して上から見たような描き方であるが、人は若干カメラ位置を真上より少し下に落としたような視点になっている。
人は真上からだと「歩いている親子」という情景作りづらかったものと思われる。
しかし、下まぶたの膨らみに沿って頭から足までが描かれているため、遠近感の違いは気にならない。


4. 批判的視点

親子を入れたことによって、「幸せそうな家族」が巻き込まれてしまうという、残忍性を助長するための人選だと思うが、情報の特性上、不快に思う人も一定数いることを考慮し、人ではなく、車同士でもよかったかもしれない。


5. 個人的な感想

今回は眠るということだったが、人間の普段行う動作を、視点を変えることで違う見え方が提案できるのだということがよくわかる例だった。

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