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「死刑制度」って何? ディベートを通じてまとめました

どうもアコニチンです。

今までの「死刑制度」①~⑦の総まとめです。⑤だけは全文載せてません。「死刑制度」について詳しくなりましょう!リンクは一部省略してあるので、本当にそうなの?根拠は?と思ったら私の過去のnoteのリンクを参考にしてみてください。

【要約】死刑は、複数人人を殺した殺人犯が受ける刑罰で、残虐なものだが、憲法のいう「残虐な刑罰」ではない。日本は死刑賛成派の方が圧倒的に多いが、国際的には死刑は廃止すべきものである。死刑の賛成反対の問題となる論点は被害者の感情、お金、犯罪抑止力、憲法、冤罪、死刑する人の感情、犯罪者の更生、人道、国際的な流れがあげられる。犯罪者に死ねっていうな。死刑に限らず、刑罰は加害者の再犯を防ぐ・加害者に報復する目的を持つ。18歳未満は少年法により死刑判決を下されない。死刑制度の論理的な整合性はイマイチ。

「死刑」ってそもそも何?

さてさて、これから死刑制度についてディベートをしていきますが、その前に死刑制度って何なのか、前提として必要な知識の確認からしていきたいと思います。

ざっくり簡単なことを言ってしまうと、死刑は「殺人などの罪を犯した凶悪犯が受ける刑罰」です。主に日本の死刑制度について取り上げて、説明していきます。

 ・どんなことをすると死刑になるの?

死刑になる罪は全部で18個あります。結構ありますね。主に殺人が関係しているものが多いです。生存権は憲法で定められた大切な権利ですから、他者の生存権を侵害するのは、皆さんも知っての通り、重罪なのです。

内乱罪(ないらんざい)
外患誘致罪(がいかんゆうちざい)
外患援助罪(がいかんえんじょざい)
現住建造物等放火罪(げんじゅうけんぞうぶつとうほうかざい)
激発物破裂罪(げきはつぶつはれつざい)
現住建造物等浸害罪(げんじゅうけんぞうぶつとうしんがいざい)
汽車転覆等致死罪(きしゃてんぷくとうちしざい)
水道毒物等混入致死罪(すいどうどくぶつとうこんにゅうちしざい)
殺人罪(さつじんざい)
決闘殺人罪(けっとうさつじんざい)
組織的な殺人罪
強盗致死罪(ごうとうちしざい)
強盗強制性交等致死罪(ごうとうきょうせいせいこうとうちしざい)
爆発物使用罪(ばくはつぶつしようざい)
航空機強取等致死罪(こうくうききょうしゅとうちしざい)
航空機墜落等致死罪(こうくうきついらくとうちしざい)
海賊行為致死罪(かいぞくこういちしざい)
人質殺害罪(ひとじちさつがいざい)

これからのディベートでは話を簡単にするために、「複数人を殺害をすると死刑になる」という前提にのっとります。18個の罪それぞれについて述べると正確な議論ができるのですが、割愛!

詳しくはこのサイトでそれぞれの罪についての説明をお読みください。

・どうやって死刑になるの?

死刑については、刑法で詳しく定められています。例えば、絞首にて死刑を執行するとか、法務大臣の命令によって執行するとかですね。日本は行刑密行主義(ぎょうけいみっこうしゅぎ)といって、死刑の全貌を隠したがるので詳しいことは分かりません。

死刑について、菊田幸一「死刑廃止を考える」から抜粋します。

(3)死刑の執行はどのようにおこなわれるか 死刑の執行方法は世界的には電気殺、ガス殺、絞首刑、薬物注射などがありますが、日本では死刑は監獄内で絞首して執行することになっています。現在執行の行われているのは、大阪、名古屋、宮城、福岡、広島、東京、札幌の7か所の拘置所です。じつは処刑が実際にどのようにして行われるかについては、われわれ国民の多くには必ずしも十分に明らかではありません。……それでも死刑執行に立ち会った人などの話から、処刑の酷さについては多くのことがわかっています。たとえば仏式の場合は、教誨師の読経のあと、仏前で焼香し保安課長の手で目隠しと手錠がかけられます。下着などは脱がされ、大人用のおむつが当てがわれます。それは首吊りによる失禁用のものだと思われます。また目隠しをするのは、首を吊った瞬間、頸動脈が切断され、口からも血が吹き出るのを防ぐためであり、また首吊りと同時に眼球が飛び出るので、その恐ろしい形相を見たくないためだともいわれています。さて目隠しをされてカーテンが開けられると、二三歩進んだところが刑壇場です。刑壇場の真ん中に1メートル四方の板があり、これがはずされて宙づりになるのです。そのため天井からは太さ2センチ、長さ7.5メートルのマニラ麻ロープがぶら下がっていて喉にかけられます。そして合図とともに足場の板が落とされるのです。地階は死体搬出部屋になっていて、刑務官と死を確認する医務官が待機しています。……死刑囚の遺体は、……火葬の後で遺骨だけが渡されるのです。

なかなか凄惨な内容でしたね。裁判を経て、死刑判決が下された死刑囚はこのようにして死刑執行されるのです。1948年に最高裁判所は、死刑(絞首刑)は憲法第36条が禁止する「残虐な刑罰」に値しない、つまり死刑は合憲だという判決を下しています。絞首刑では、ボタンが押されて床が開き、首が閉まってから数秒で死に至るらしいですが、死後の様子を見ると残虐な様子が伺えます。

憲法とその解釈について、「日本国憲法を対話で学ぼう」というサイトから引用しておきます。とても分かりやすいサイトなので、憲法について学びたいときにオススメです。サルでも読めます。

憲法第36条「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」「残虐な刑罰」とは、「不必要な精神的、肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰」と解釈しています。例えば、火あぶりやはりつけなどです。


・死刑の歴史

死刑の歴史についてWikipediaから引用してきました。前近代の死刑に思いを馳せると、「受刑者の死亡」自体が刑の目的ではなく、受刑者が死なないこともあったので、死刑を「殺人などの罪を犯した凶悪犯が受ける刑罰」と定義した次第であります。

死刑は、身体刑と並び、前近代(おおむね18世紀以前)には一般的な刑罰であった。また、「死刑」という刑罰があったわけではなく、多くの「死に至る(ことが多い)刑罰」が並行して用いられていた。たとえば壁に埋め込めたりして餓死させる方法もあった。
犯罪行為に対するものにかぎらず社会規範を破った事に対する制裁として死刑が行われていた時代もあった。苦痛の多い「重罪用の死刑」や苦痛が少ない「軽犯罪用の死刑」、あるいは「名誉ある死刑」「不名誉な死刑」などが使い分けられており、処刑方法ごとに別種の刑罰と受け止められていた。
「生き残った場合には『刑は執行済』として放免される」という現象が見られた。「受刑者の死亡」自体が刑の目的となり、現代的な意味での「死刑」という概念が確立されるのは、のちの時代になってからである。
死刑が多様な犯罪への処罰として用いられてきたこと、また多様な死刑が存在していたことの理由としては、自由刑が普及するまでは「犯罪者を長期にわたって拘束・収容する」という発想・制度が存在しなかったことが挙げられる。結果として、再犯を防ぎ社会的な秩序を守るために死刑が適用されることが多かった。 近代に至って、西洋で人権という新しい概念が開発され、民主主義・資本主義への移行に伴い統治機構の整備・改革が行われるにつれ、死刑の扱いは変更された。まず、啓蒙時代のカントやロックが、刑罰を「人権侵害に対する国家による報復である」と位置付け、死刑はあくまで生命権を侵害したもの、懲役は自由権を侵害したものに科せられるべきと論じた。 そのため死刑は「重大犯罪に対する特別な刑罰」と位置づけられるようになり、祭事性が否定され、非公開とされる傾向が強まった。 さらに、身体刑の要素が削減されて刑罰内容が「生命を奪う」ことに純化され、方法は「強い苦痛を与える方法」を避けて「ギロチン」「絞首刑」「電気椅子」「毒物注射」「銃殺刑」などの比較的短時間にあまり苦痛を伴わずに死ぬようなものに変わっていった。

・凶悪な犯罪が増えているって本当?

最近の若者はとか、また凶悪な事件がとか、いわれることもある昨今の現状を踏まえると、凶悪な犯罪が増えているように感じるかもしれません。凶悪犯には、殺人、放火、強姦などが含まれますが、特に殺人罪について取り上げます。私は生まれて間もないので、最近の事件しか知りませんけど、殺人罪の件数が増えているというのは嘘です。殺人罪の検挙数は減っています。

2009年に日本弁護士連合会が作成した「裁判員の皆さまへ 知ってほしい刑罰のこと」という冊子にのっていたグラフ2つと考察です。

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殺人事件の被害者数は1960年代からなだらかに減少しつづける一方 で,逆に死刑判決の数は2000年以降,急激に増加しています。 つまり,最近の傾向として,死刑判決が言い渡される範囲が広がっているの です。10年前ならば無期懲役が言い渡されたような事例でも,最近では死刑 が言い渡されることが増えているということです。 


なぜ、これらのグラフを示したかというと、殺人罪の検挙数は減っているのに死刑は増えているからです。警察庁によると、殺人認知件数は右肩下がりで、2015年からは1000人をきっています。統計が2006年までと古かったので2016年までの統計を調べましたが、傾向は変わらず、殺人認知件数は年々減っていっています。ちなみに、殺人認知件数に限らず、凶悪犯全体を見ても、件数は減っています。

2014年に内閣府が行った世論調査では「死刑もやむを得ない」と答えた人が80.3%にのぼりました。日本国内では死刑賛成派の方が多いようです。アムネスティインターナショナルより、死刑執行者数などを表すグラフです。2018年はオウム真理教事件の被告人が一斉に死刑されたので、例年より執行者数が多くなっています。

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・諸外国の死刑制度

日本では死刑に関して前向きというか、死刑賛成派が多く、死刑判決を言い渡される範囲が広まっていることが分かりました。では、諸外国の死刑はどのようになっているのでしょうか。

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国際的に、死刑は廃止の動きを見せています。2018年10月米国では、ワシントン州の死刑法令に対し違憲であるという判断が下され、20州目の死刑廃止州となりました。アメリカは州によって死刑の捉え方が異なりますが、世界でもアメリカ国内でも死刑は過去のものであることが「合意」となりつつあります。

・「死刑」ってそもそも何?まとめ

死刑は「殺人などの罪を犯した凶悪犯が受ける刑罰」で、複数人を殺害をすると死刑になることが多い。絞首刑で首を吊った死体はグロテスクなものだが、最高裁判所によると絞首刑は残虐ではなく合憲である。日本では死刑賛成派が多く、死刑判決を言い渡される範囲が広まっているが、国際的には死刑廃止の方向へ進んでいる。


ディベート

皆さんお待ちかね、ディベートです。死刑制度に関する論点の、意見と反論を明らかにしていきます。

死刑「賛成」派ではなく死刑「存置」派というのが正確なんですが、「賛成」で通します。日本では死刑制度が存在するので、死刑あった方がいい(賛成)、無い方がいい(反対)、制度を変えないでよい(そのまま)の三つが考えられますが、賛成派とそのまま派を合わせて「存置」派というのが正確なのです。ついでに、死刑「反対」派は死刑「廃止」派の方が正確なんですが、これも変更なしです。プロフェッショナルな貴方は「存置」「廃止」に読み替えてみてください。

【用語解説】犯人…被害者(複数)を殺した人。死刑制度アリの世界では死刑になる。死刑制度ナシの世界では刑務所で無期懲役する。

意見のタイトル 死刑賛成(反対)派の意見

 (反論) 死刑反対(賛成)派からの反論

この形式で進めていきます。

・死刑賛成派の意見

被害者や遺族の感情 コスト(+コラム) 抑止力 憲法

被害者や遺族の感情。遺族は大切な人を殺されたのだから犯人を許せない。被害者は亡くなってしまい戻ってこないのに、なぜ犯人はのうのうと生きているのか。被害者は自分と同じように犯人が死ぬことを望んでいる。

(反論)刑罰は被害者や遺族のためのものではない。被害者や遺族を慰めるために、他者の死を望むのは野蛮な考えだ。そもそも、被害者は犯人が死ぬことを本当に望んでいるのか?犯人が死んだら喜ぶのか? 犯人が死んで何が変わるのか、いや誰かの死によって何も進展することはない。


コスト。死刑囚を生かしておくコスト。死刑判決がでた犯人に血税を使うな。死刑する方が犯人のために使うお金が少なくて済む。死刑確定者は120人と多く、コストもかなりかかる。

(反論)死刑執行をするコスト。紐や死体の清掃、死刑執行人の金銭的手当など、死刑には高い金がかかる。死刑囚は一年に5人執行される程度で、そんなに数いないから、そこまでの支出はない。

コラム~死刑と無期懲役、どっちが高い?~

ここで、死刑と無期懲役(終身刑)ではどちらが高価なのか、死刑とお金について調べてみました。

まずは、死刑する方が高いというエビデンス(資料)を紹介します。1つ目は死刑囚は刑務所で働くことはなく、拘置所で無為な時間を過ごしているというもの。これはアムネスティも同じことを言っています。最後は、死刑囚にかかる食事代などを計算したものです。このエビデンス(参考サイト消滅)では、年間6360万円と試算していますが、年間2300億円の税金が使われているとするものもあります。

死刑囚は「死ぬ」ことが課せられた刑罰なので、刑務所には入らないんです。刑務作業をさせようとすると、二重刑罰になってしまいます。死刑制度が廃止されれば、どの囚人も拘置所ではなく、刑務所で刑務作業するようになるので、この違いは金銭的に大きいでしょう。

死刑囚は刑務所(刑が確定した囚人を収容)ではなく、拘置所(刑確定前の刑事被告人を収容)に入っている。一日30分の運動と面会のみが認められる。死刑の事前告知は1960年ごろから廃止され、当日の朝に告知されるようになった。
アメリカのカリフォルニア州では、2012年11月に死刑制度について住民投票を行う予定です。その理由には、死刑判決は慎重を期すため、再審等の裁判費用が大変かかるという財政的理由も含まれています。死刑囚は、死を待つ間、労役もさせられず生産もできません。死刑制度を維持するのは、終身刑よりもお金がかかるというのです。
法務省矯正局によると、死刑確定者だけの収監費用は出していないが、死刑確定者や懲役受刑者などを含む、すべての被収容者の1日当たりの収監費用は1452円で、年間で約53万円。これをもとに、死刑確定者120人分の総収監費用を単純計算すると、年間約6360万円となる。死刑確定者の場合、刑務作業などは一切なく、食事代や部屋代、被服費、水道光熱費、医療費も無料で、国民の税金で支払われている。


次に、死刑と無期懲役、どちらの方がコストがかかるのか不明というエビデンスです。

ちなみに米国では、死刑のほうが終身刑より高コストであると試算されているらしいです。

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死刑・無期懲役刑のコストには、大きく分けて、刑の確定前に要するものと、確定後に要するものとがある。それを調査・推定してまとめたのが、上の図表だ。見ての通り、確定後のコストで比べると、在所期間の長い無期懲役刑のほうが、死刑よりはるかに高くなっている。しかし、確定前のコストにははっきりしない点が多いため、日本において、トータルでどちらが高コストといえるのかは判然としない。


無期懲役の方がお金がかかるというエビデンスは見つかりませんでした。

【結論】死刑執行する方が無期懲役よりコストがかかる。

コストは死刑賛成側の意見として取り上げられることが多いのですが、実際に調べてみると、死刑反対側に有利なエビデンスばかりが見つかりました。「死刑確定者の場合、刑務所に収容されていないので、刑務作業などは一切なく、食事代や部屋代、被服費、水道光熱費、医療費も無料で、国民の税金で支払われている。」ことを覚えておきましょう。


抑止力。捕まった犯人が刑務所から出てくれば、また殺人などの犯罪を犯す。例えば、女子高生コンクリート詰め殺人事件の加害者は再犯で捕まった。死刑にしてしまえば、犯人は再犯することがない。また、死刑があるから殺人をしない人がいる。死は誰もが恐れるもので、窃盗など他の犯罪では抑止力が認められており、死刑も同じく犯罪抑止力がある。

(反論)国連によると、死刑に抑止力はない。他国の死刑廃止後の殺人発生率は変わっていない(フランスや韓国など)。終身刑でも、刑務所からほぼ出てこられないから犯人は終身刑になれば再犯しない。死刑があろうがなかろうが、人を殺すものはいるし、殺さないものは殺さない。死刑になりたいがために人を殺した犯人もいるから死刑が無い方が殺人の抑止につながる。



憲法。1948年に最高裁判所は、死刑は憲法が禁止する「残虐な刑罰」には当たらず、合憲であると判断している。

(反論)絞首刑は残虐。自分の全体重が首にかかり、眼球は飛び出し体液を垂れ流しながら死ぬ。死刑という行為そのものが残虐。


・死刑反対派の意見

冤罪 死刑執行人(+コラム) 更生の可能性 人道 国際的潮流 


冤罪。死んでしまったら取り返しがつかない。実際に冤罪で死刑判決を出された人もいる。ヒューマンエラーや裁判官の恣意もあるから、どんなに頑張っても冤罪はゼロにならない。どんな賠償金を払ったとしても、亡くなってしまった人の命は帰ってこない。

(反論)冤罪はどの事件にも当てはまる。現在の捜査技術で防げる。過去の冤罪は正確性の低いDNA鑑定をしていたからで、現在のDNA鑑定は正確なので問題ない。



死刑執行人。死刑執行をする人、国家の殺人に加担する人、合法的に人殺しをする人。死刑が廃止されない限り、死刑執行をする人が必要。人を殺す心的負担は重く、精神を病む人も多い。自殺した人やうつ病になった人もいる。

(反論)死刑執行人は刑務官から選ばれる。ケアする制度ある。自分で仕事の内容がわかってて選んだ。

コラム~死刑執行人ってどんな人?~

この意見は、死刑執行人の心理的負担をなくすために、死刑そのものをなくしましょう、という話です。実際には、死刑執行のボタン(ボタンが押されると床が落ち、死刑囚が落ち、首がしまる)を押す人(死刑執行人)のほかにも、死刑を言い渡す裁判員や裁判官、紐を用意する人、死体をかたずける人、揺れる死体を受け止める人、医者、教誨師、死刑執行命令書に署名する法務大臣など多くの人が関わっています。

ここで、いやいや心理的負担を軽減するか、手当をだすかすれば、死刑そのものを廃止する必要なくない?と思う人もいるでしょう。これは妥当な代案だと思います。ですが、今現在、死刑執行に関わる人にあるのは、3つのボタンの用意と3000円とも20000円ともいわれる微々たる手当だけなのです。詳しくは下の引用を読んでください。

3つのボタンというのは、死刑執行のボタンが3つ用意されていて、選ばれた刑務官3人が同時にボタンを押す。そのうちの1つのボタンが押されると死刑囚の足元の床が開き、首にかけられた紐によって首がしまることから抜粋しました。3人いるので、自分が確実に人を殺したと思わせない配慮だそうです。

死刑執行は普通の刑務官が行う。死刑執行には、執行手当が支給されているが、その支給額は酒代にもならないようなわずかな金額で刑務官たちには相応のケアも補償もない。死刑執行の際の担当刑務官は以前は、勤務成績の悪い者が罰として担当する事だったそうだが確実に死刑執行が行えるように真面目な刑務官が担当者として選ばれている。首吊りの状態になってから12分吊るしたままにして、医師によって死亡が確認されるとボタンをおした刑務官たちは遺体の回収をする。


このように、死刑執行人もとい普通の刑務官は死刑執行を強いられています。ちなみに、反論で職業選択の自由に触れたが、法務省の刑務官採用試験ページには「死刑」の文字は一切ないことを追記しておきます。


更生の可能性。誰でも更生する可能性はある。罪を悔いている人まで国が殺す必要もない。

(反論)人殺しに更生の可能性などない。あったとしても、死刑執行まで裁判などにより長期間生かされている(オウムの場合は22年間)うちに勝手にする。死刑囚が更生した理由は、死刑判決を下されたからでは?



人道。死刑は非人間的で野蛮。死刑は国家による殺人。殺されたから殺し返す、この理論では憎しみしか生まない。

(反論)目には目を歯には歯を、人を殺したのなら自らの命をもって償うべき。死んだ方が社会のため、死を望まれている人もいる。人を殺すようなサイコパスに人道は通用しない。犯人が人を殺す、という非人道的行為を働いたオトシマエはどうつけるのか。



国際的潮流。国際的な流れにのっとるべき。死刑廃止国が年々増えている。死刑はもう時代にそぐわない。

(反論)日本国内では死刑賛成派が8割(2014年)。世界の状況に流されず、自国で判断することが大切。


これで簡易ディベート終了です!お疲れ様でした。ディベートの反論は、理性的かつ論理的にすることが大切です。「犯罪者は死んだほうがまし」ではなく「死んだ方がいい犯罪者もいる」くらいの優しい気持ちを忘れないようにしましょう。あと、相手のディベーターをけなすのもNGです。「お前が言っているから間違い」「死ね」とか人間として言わないようにしましょうね。

後は死刑関連の話題とディベートで使えそうな知識、哲学者にきいた死刑の是非をまとめていきます。

刑罰の目的

日本弁護士連合会によると、刑罰とは,有罪の判決を受けた人に対して,その人の 生命や自由,財産を強制的に奪うことです。その種類と しては,死刑,懲役(無期懲役と最長で30年までの有 期懲役があります),禁錮,罰金などがあります。(中略)裁判員制度は, 市民の皆さんの常識と良識を裁判に反映させ,えん罪を 防止し,適正な刑事司法を実現するための制度で、司法をより身近な ものにするという意味もあります。(中略)「刑罰の目的」についての考え方があります。 その一つは,その人が再び罪を犯すことのないように教育する目的(教育刑の考え方), もう一つは,罪に対して報復をする目的(応報刑の考え方)を重視する立場です。


刑罰は生命や自由、財産を奪うこと。この生命刑(生命を奪う刑罰)は死刑のみです。だからこそ、死刑は刑の中では特別で、賛否を問われるものなのです。

途中で、裁判員制度が導入された理由も書いてあったので、抜粋しておきました。「えん罪を防止し、適正な刑事司法を実現するため」というと、裁判官だけの裁判では冤罪があった、裁判のヒューマンエラー(もしくは恣意的な冤罪)を肯定する意味にとれますね。これはディベートの意見、冤罪で使えそうです。あと、殺人事件では裁判員制度が適用されるので、反論にも使えます。

刑は、加害者が再び罪を犯さないようにする、罪に対して報復する、目的を持っているんですね。刑は加害者が反省するためにある、とは言えそうですね。再び罪を犯さないようにするには、反省が一番ですから。刑は犯罪を抑制するという目的は持っていないんですね。刑罰の目的に関しては、なかなか奥深さを感じ取ったので、ここらへんで終わりにしておきます。詳しくは、応報刑論や目的刑論で検索するといいでしょう。

少年法

日本では、どんなに人を殺したとしても死刑にならない人がいます。それは未成年者です。ということで、少年法についてまとめてみました。以下はWikipediaから抜粋。

少年法では未成年者には成人同様の刑事処分を下すのではなく、原則として家庭裁判所により保護更生のための処置を下すことを規定する。ただし、家庭裁判所の判断により検察に逆送し刑事裁判に付さしめることもできるが、その場合においても不定期刑や量刑の緩和など様々な配慮を規定している(51条、52条、58条、59条、60条等。少年保護手続の項目も参照)。なお、少年に対してこのような規定をおくのは、未成年者の人格の可塑性に着目しているためとされている。 (中略)なお18歳未満の死刑は、国際法である児童の権利に関する条約37条によって禁止と定められており、日本はこれを批准しているため少年法の規定がないとしても死刑の判決を下すことはできない。


18歳未満は人格の可塑性があるため、国際法により守られており、死刑にすることはできない、ということです。ちなみに少年法は20歳まで適応されますが、犯行時18歳及び19歳の場合、死刑事犯の犯罪を犯した被告人に対して死刑判決を言い渡すことが可能となっています。

ここで、人格の「可塑性」の可塑性ってどういう意味かご存知ですか? 可塑性とは「固体に外力を加えて変形させ、力を取り去ってももとに戻らない性質。」(デジタル大辞泉)のことです。わかりやすい説明がネットになかったので図解してみました。

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子どもは可塑性が高く、悪影響(外力)を受けても、元の善い状態に戻りやすいということです。逆に言えば、成人は可塑性が低く、更生の可能性が低いととれますね。ちなみに、少年への甘さ、容赦、寛容さ(英語でトレランス)をなくそうとするゼロ・トレランス方式という考えもあります。

哲学者に聞いた、死刑反対の理由とは?

今回話を伺った「らりるれろ。」さんのブログ↓↓↓↓

さて、死刑制度に対する哲学者の考えを拝聴してきました!

死刑制度について話すにあたって、死刑が奪うもの=「生命」を守っている権利、生存権とはどのようなものか明らかにします。生存権は下のような円環のような形で守られていると私は考えています。

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この円環の中にいることで、生存権や私たちの社会生活の安全は守られています。

円環の中=生存権が守られた社会、円環の外=生存権が守られない社会

では、殺人を犯した場合はどうなるのでしょうか。

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殺人は、他者の生存権を侵害することですから、「生存権を冒さない」を破ること見なります。ゆえに、殺人犯(黒い人)は円環の外に出ることになります

ここで、「殺人犯だ!よーし、死刑だ!死刑だ!」とはなりません。殺人犯は生存権が守られる社会の外に出ただけで、すなわち死刑にはなりません。では、殺人犯を死刑にしていきましょう(にっこり)。

殺人犯を死刑にするのは誰か、という問題が出てきます。裁判長?死刑執行人?法務大臣?民意? うーん、いったい誰なんでしょうか。この中の誰かまたはその他の人(円環の中の人・円環を取り仕切る人)が殺人犯を死刑にするとしましょう。

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円環の中の誰かが殺人犯を死刑にしました。円環の中の人が殺人犯を「殺し」ました。ということは、、、

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殺人犯を死刑した人も円環の外に出てしまいました。これでは、殺人犯を死刑して、殺人犯を死刑した人を死刑して、殺人犯を死刑した人を死刑したひとを死刑……と死刑の連鎖が止まりません

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では、死刑する人が円環の外の人だったらどうなるでしょう?円環の外、、そうだ!国家はこの円環の外にあるとしましょう。国家または国家の代理人が死刑をするとします。

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国家が死刑をする。うん、うまくいきましたね。と思いきや、この考えにも穴があります。それは、死刑が「罰」として何らかの秩序を持つことはいかにして可能になるのか?という点です。このままだと、死刑は単なる(秩序を持たない)「暴力」になってしまうのです。国家があるのは、円環の外=生存権の守られない社会ですから、秩序もへったくれもないわけです。

確かに、何らか理由で死刑に秩序があるとすれば、死刑になる殺人犯と死刑にならない殺人犯を分けることがで来ます。しかし、死刑に秩序がないならば、年間約1000件もある殺人事件の犯人はもれなく全員死刑になります。日本の死刑執行は年に5件程度ですから、5件と1000件は雲泥の差です。

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これもまた死刑失敗、です。死刑制度はどうやっても論理的な整合性が見えないので、死刑反対とおっしゃっていました。

まとめ

死刑は、複数人人を殺した殺人犯が受ける刑罰で、残虐なものだが、憲法のいう「残虐な刑罰」ではない。日本は死刑賛成派の方が圧倒的に多いが、国際的には死刑は廃止すべきものである。死刑の賛成反対の問題となる論点は被害者の感情、お金、犯罪抑止力、憲法、冤罪、死刑する人の感情、犯罪者の更生、人道、国際的な流れがあげられる。犯罪者に死ねっていうな。死刑に限らず、刑罰は加害者の再犯を防ぐ・加害者に報復する目的を持つ。18歳未満は少年法により死刑判決を下されない。死刑制度の論理的な整合性はイマイチ。

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