ドラペ


 善しき、お日にちだねえ。やることやっていい、完璧な、日曜日だね。ぼくとしては、こんな日は、はたけを耕すにうってつけの、日だと思うんだなあ。うつ伏せに這い、つくばって、手足とこかん節を連動させる、動きをするよ。それはかつて、草食動物を、どうもうに凶食した爬虫類、コモドドラゴンのようだ。ぼくの龍頭を、土に突き立てて、下腹部に力を入れて、ががご、と進む。うん、くっ削しているんだろうが。龍頭からにじんだ体液が、土に湿り気をおびさせているねえ。ぼくは、なんども、往復する。土を掘り返し、はたけを成す。
 ぺろぺろと舌先が、土のうまみを感じたんだね、ここだと教えてくれたねえ。ぼくはこかん節を折りたたみ、龍頭をどうもうに、動かすぞ。つちのつぶつぶが、のどすじに擦れて、善しきだねえ。龍頭はドラペをはきだした。どらどら、脈が打っちゃてら。土がはたけになっちゃった。これこそが、すべきことなんだろうが。
 精を出したから、じかんが立つ。さもすれば、外が暗くなってくる。これはね、分かんないよ。なんで、こんなことが、起きるのか。こんなことが毎日起きるから、ぼくはとうとう、怯えてしまうんだろうが。明るくあるべきだろうが。こわくて、家が分からず、さまよう。おうちからずいぶんはなれた、あすこで、何かしらのお子を見つけた。お子はうずくまり、ふるえており、まいっているね。くらいなか、ぼくは首をもちあげ、龍頭にせいいっぱい力を込める。
「スュッてするから……」
 ぼくはそのお子の、するどき曳航股の下、もじゃもじゃの産毛をどかし、龍頭を収納した。はたけづくりと同じだね。そののち、ドラペがぼくから、出ていった。お子ちゃんにはいっていった。お子たそは、みるみる元気なり、ぼくを持ち上げて、抱きしめた。胸いっぱいのいい匂いで、前が視えない。これが、夜か。
 ぼくはちゃんたそに連れて帰られ、おうちで、ごはんをたべるなどするよ。なんとか、はたけに実ったじゃがいもとか、人参をゆでたりしてね。ちゃんたそは胸をさいて、ぽいぽい、ほうりこんだ。ね、できるでしょ、って見せてくる。ぼくにはそれ、できないんだ。できないことを、見せ合うために、一緒にいるんじゃないんだぞ。
 はたけを毎日たがやす。ほんじつは、もっとも善しき、日曜日。これがぼくの、やることなんだろうが。ちゃんたそが、曳航股をふりふりしながら、ぼくのあとをつける。さもすれば、するどき御御足が、つちをすっかりほじくり返す。ぼくの龍頭より、ずっと速いじゃないか。ちゃんたそに、耕しを、申し付ける。よろこんでつちをほっくり返す。ぼくが、なにもできずに、ぼーっと暗くなるやつを見ていると、ちゃんたそが何かを言った。龍頭をひんやり握る。ドラペがどるどる湧き上がる。はたけには、おおきな穴が、できていたね。そこにドラペがだく流となって、注ぎ込まれる。からだが前後に揺れて、なにかしかに、支配されているかのようだね。なにもでなくなった龍頭は、ちゃんたそにつかまれ、土にその全部をねじ込まれる。うつ伏せになったぼくと龍頭の上で、ちゃんたそは、むれた腹をさらけだし、ちょろちょろと、いらない体液を流した。
「うん! うん!」
 ちゃんたそのいらない体液はぬくもりがあって、ぼくたちごしに、地面に染み込む。土があったかい。これは、すごいことだよ。龍頭もふるえ、特にせんたんが、土におおくこすれるんだが今までとは違って、冷えていなくて暖かいものだから、まるでいだいているみたいだ、善しき臭いをねえ。
「うん! うん!」
 ぼくははたけに、龍頭を打ち込む。そうすべきだろうが。お子ちゃんたそ、腕を組んで、つっぷすぼくに、何やら注いでくる。それはまた、冷たくて冷たくて、びっくりするものだった。きっと、はたけが冷えないように、ぼくに預けてくれたんだろうね……。
 暗いやつが、すっかり、訪れている。だがね、ぼくは何をしているのかわかっている、そのつもり。ぼくとお子ちゃんたそは、かつてない規模のはたけを囲んで、おたがいに耳打ちする。
「赤ちゃんがほしいね……」
 龍頭はぴくりとうなずき、ドラペをもっと、作り出す。ぼくは自分の指を絡ませて、ちゃんたそに、それを見せる。ちゃんたそもその真似をして、たくさんの指を、絡ませる。絡ませること以外に、何もする必要、ないだろうが? 赤ちゃんについて、ぼくは何も情報を持たないが、はたけで取れるものの中で、もっと善しきなものだと、龍頭が知っている。

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