おっさんブリア

 すべての繁殖可能なおまんこの深さと繁殖不可の童貞ちん宝の長さをかけた数字は、一年間に生産されるラーメンの総麺長と常に一定であるという『おまんこ=ラーメン等配分の法則』を発見したわたくし。

 本日は、打ち上げ、ですわ。

 わたくしがいつも、お世話になっております、お麺屋さんに来ました。

 ハイ、みなさん、今日はわたくしの奢りですわ、助手のしみったれたおっさんたち、うん、チャーシュー麺を、たのんでも、構いませんわ。ここのチャーシュー麺は、特別ですわよ。今日は、ことさらそれでも、かまいませんわ。

 ……アラ、わたくしのおラーメンが、食べれませんこと? わたくしの、すすめた、このお店が気に入らないとおっしゃるの? そんなこと、許されませんことよ。

 このおメン屋さんはたしかに、風流ではないかもしれません。時流にそぐわない、田舎っぽさがあるのやも。あなたたちは、加齢臭で歯槽のうろう、早漏童貞なのに、妙に、洗練されたラーメンを好みますからね。あまりにも野暮ですわ。田舎っぽい、ボヤッとしたこの味が、いいんじゃありませんの。洗練された味が、おいしいとは、限りませんの。あなた方はいつも、いかにも野暮ったいオフィスレディこそ、奮が興ると仰っているじゃないの。奮は麺に、通じますわ。

 ホラ、そこの高菜をお取りになって、第九助手レミントン。あっ、コラッ、まだその高菜は入れてはいけません。大抵の高菜は、烈しい辛さを、身に纏っておられるの。いきなり投入したら、味が壊れてしまいますわ。だからあなたは童貞なの。床オナでしか達せないの。あなたの裏スジは、今や、擦れて果てて、古寺の木床みたいになってるのを、知っていますわ。あらあら、第五助手、ガウス。最初にごまを擦るのはいけませんわ。ごまはね、替え玉してからなの。そのように、決まっておりますわ。

 ハァ、ちょっと、おまんこが、痒くなってきましたわ。今日は五月雨で、いささか、蒸れますので。みなさんも、ちん宝を、お掻きになって? ズボンをおろすことを、許可します。その粗珍を、あらわにしても、よろしくてよ。……うわぁ、ひどい匂いですわ。アッ、でも、みなさんチームカラーの黄色いブリーフを、履いてらっしゃるのね。偉いですわ、よしよし。

 第十七助手ゲーデル。わたくしが、麺を啜っている口元を、凝視するのは後にしなさい。誰がマス掻いてよろしいと、許可を、出しましたか。見抜きを、許した覚えは、ありませんの。見啜りにとどめなさいな。わたくしの、麺を啜ってすぼまる頬が、そんなにも良いの? わたくしがあなたのちん宝を、咥えているように、見えるって? おやめなさいな、ブリーフ越しから、汚臭が、匂い立ってきますわ。

 マスター、今日は貸し切り、でしたわね?

 ですわね。よし、そしたら誰か、歌いなさいな。

 第三十四助手ゲーデル、ほら、ハミ毛してないで、なにか歌いなさい。マスター、ここジョイサウンドある? UGAしかない? 想定内ですわ。

 みなさん、前奏のうちに、替え玉を注文しておくのよ。おっさんブリアの団結力を、今こそ、見せる時。

 アアッ、ゲーデル。この曲、Karma Policeじゃありませんの。打ち上げでKarma Policeなんて、どういう神経してますの。メランコリック、過ぎますわ。童貞め。やめやめ。恥を知りなさい。演奏中止、ハイ、中止ですわ。第八十四助手エリオット、あなたが代わりに、歌いなさい。

 ……エリオット、そのビートルズを、やめなさい。ラバーソールから、歌おうとするのを、おやめなさい。わたくしはね、おっさんが、ビートルズを歌うことが、この世でいちばん、ゆるせないことですの。おっさんが、ビートルズを聴くことも、ゆるせませんの。わたくしは、ラーメンには、寛容ですが、ビートルズを歌うおっさんに、ゆるす領域はありませんの。わたくしは、おっさんが、ビートルズではしゃぐことがきらいなの。ビートルズを、面映そうに、うたわれることがいやなの。おやめになって。その台からすぐにおりなさい、エリオット。今すぐ、ヘイジュー言うのをやめなさい。その情けない、ベラベラアーッを、やめなさい。

 そう、だから、わたくしは、このチャーシュー麺が、好きであるのよ。

 このチャーシュー麺のいいところは、まず、お醤油味なところ。

 そして、少し柔らかいワカメが、ちょうどヨイ量入っていること。

 メンマは黒っぽく発酵していて、コーヒーのような苦くて、爽やかな清涼感があること。

 地元の古い製麺所に特注した、イェロウの、細縮れ麺を使っていること。

 それで、チャーシューが、モモ肉であること。

 今の時代、柔らかければうまい、と持て囃され。とろっとしていれば上等だと賛美され。バラ肉を使うお店が多いですわ。

 ですが、私は、このミシミシっと肉質を感ずれる、濡れた枯木のようなモモチャーが、大好きであるのよ。ラーメンの上に、ただ乗っかった、固いチャーシュー。このチャーシュー麺は、元はラーメンでしたの。そこに掛け算でもなく、相乗効果もなく、ただの足し算が加えられた。その事実が、わたくしにとっては、詩なのですわ。詩なんて、読んだことはないけれど、そういうことだと分かります。ただのラーメンに、固いチャーシューが乗っけられて、何も特別なことはないのに。それが、ことさらに、よいのですわ。

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