見出し画像

主治医に「自分の寿命なんか、ホンマに知りたいと思う?」と言われた話。

私の主人は、私より弱虫です。怖がりだし、いくじなしです。(きっぱり)

愛した女に死ぬかもしれない病気が判明した時、主人は泣き崩れました。その後も三日三晩泣き続け、仕事もままならかったのです。それは今でも続いていて、私よりも私の病気に詳しいし、私よりも私の身体を心配しております。(現在訳あって超絶すれ違いの末別居中ですがそれはまた別の機会に……)

検査や検診、抗がん剤治療の時など事あるごとに病院に付き添っては主治医にあれやこれや質問するのがお決まりとなっていたある日の診察日、仕事のため付き添いが叶わなかった日がありました。主人は「心配やから、3ヶ月後予定の術後半年検診を早めてもらう事が可能かどうか先生に聞いておいてくれ。」と私に言付けました。

診察室で主治医との会話

医「あれ?今日旦那は?おらんやん(笑)どないしてんの?」

私「今日は仕事なんですが、相変わらず私より私の病気の心配してます。」

と言った後、主人に言付けられていた話を伝えてみると…

医「好きやなー!日本人はホンマに検査が好き!あのな、だけどな、ホンマに自分の寿命なんか知りたいと思う?

私「いや…私は絶対に嫌です。」

医「せやろ?アメリカではな、辛い治療や手術が終わってからの検診で、医者が再発を伝えたら本気で患者と家族に怒られるねん。『やっと今ハッピーに暮らしてるのにどうしてそんな事わざわざ教えるの!?』って。
やっと悪いもんなくなった!ハッピーに生きれる!』と思って前向きに生活すんのと、『ガーンまた再発転移したかもしれへん…』ってお通夜みたいに生活すんのと、どっちがいい?どっちが身体にも心にもいいと思う?」

私「…」

医「これだけ教えとくわ、心配やからって何回も何回も検査受ける人と、1年に決められた検査だけ受ける人の生存率は一緒やねん。それなら僕はむやみやたらにあなたに放射線は浴びてほしくない。あんだけきつい抗がん剤やってのけたあなたには、今は笑っていて欲しい。今が幸せやったらな、それだけでいいねん。」

私「なるほど…」

医「もちろん、調子悪かったりしこりがあるとか不安があればしっかり診るよ!だけど乳がんは生活習慣と深い関係があるからな、アメリカの研究では、ハワイに移住したら再発率が下がったって結果が出てるぐらいやねんで!」

私「それは…納得かも(笑)」

医「人の寿命なんか分からん。僕もあなたもいつ死ぬかなんか分からんやろ?だけど人間やもん、いつかは必ず死ぬねん。
まあ、帰ったら旦那に言うとき!『明日死ぬかもしれんから、今日目いっぱい愛して!』って。」


うまく説明はできなけど、その先生の言葉を聞いた私の心には虹がかかったような気がしました。

さすが先生やで。いつもこうしてサラッと私の心を助けてくださるんよなぁ。

会計を終え病院を出ると雨が上がっていました。車から病院を見ると……

画像1



うそやろ……ホンマに虹出てるやん。
先生のパワー、ハンパない……

そうか……
なるほどこれがいわゆるクオリティオブライフの向上ってやつなんやなぁ。

クオリティ・オブ・ライフとは、一般に、ひとりひとりの人生の内容の質や社会的にみた『生活の質』のことを指し、ある人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているか、ということを尺度としてとらえる概念である。【Wikipediaより抜粋】

その目の前の大きな虹に、私に前を向く勇気をありがとう。と心の中でつぶやくと、その姿は薄くなり、やがて消えていきました。

雨上がりの空には虹がかかる。
雨が降らなければ虹は見えない。

私の幸せ、ちゃんと自分で見つけて行こう。

サポートいただいた支援金は、がん患者さんのための事業準備とがん支援の資金に大切に使わせていただきます。ありがとうございます。