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称賛は人を弱くする。勝って兜の緒を締めよ。


 
先日、社内のプロジェクトに選らばれたことを私淑する先輩にメールで報告したところ、こんな返信をいただいた。

 選抜おめでとう♪♪♪
称賛は人を弱くするから、才能に溺れず、そのパッションを大切に。
 
「神明は唯平素の鍛錬に力め、戦はずして既に勝てる者に勝利の栄冠を授くると同時に、一勝に満足して治平に安ずる者より直に之を奪ふ。古人曰く勝て兜の緒を締めよと。」 


一読して前半は分かるとして後半のやたら古風な文章はいったいなんだと思ってググってみると、どうやら日露戦争終戦時に読まれた「聯合艦隊解散之辞」の一節*1の引用らしい。
 
現代語訳は以下の通り。*2

神は平素ひたすら鍛錬につとめ、戦う前に既に戦勝を約束された者に、勝利の栄冠を授けると共に、一勝に満足し、太平に安閑としている者からは、ただちにその栄冠を取上げてしまうであろう。
 
昔のことわざにも「勝って兜の緒を締めよ」とある。


「称賛は人を弱くする」というメッセージの主旨は耳が痛いけれど、とてもありがたいと思った。
 
SNSの登場によっていまはどんな時代よりも称賛を受けやすい時代ではないだろうか。誰もが日ごろからFacebookやInstagram、Twitterで誰かからの「いいね」や”LIKE”をもらっている。つい油断すると、こうした称賛で満足してしまう。これは避けなければならないと思っている。
 
SNSで「いいね」をもらえること自体は決して悪いことではない。ただ、「いいね」をもらうことが目的になってしまったり、それで満足してしまうことは避けなければならない。

なぜなら、SNSの「いいね」はあなたを強くはしてくれないからだ。
 
こんなとき、中学校の部活顧問(バスケ部コーチ、女性の先生)の言葉を思い出す。

わたしが「シュート入れ」と百万回叫んで入るようになるならわたしは叫ぶよ。でも、シュート決めるのはお前たちなんだよ。


そうなのだ。誰かからの称賛やSNSのいいねをいくらもらっても、何か自分の能力が伸びるわけではない。

誰かからエールをもらえることはとてつもなく有り難いことだけれども、それ自体は何もあなたを成長させてはくれない。
 
どんなに声を枯らした応援をもらっても、圧倒的な実力差の前に勝つことはできない。試合に勝つには、あらゆる手段を使って実力を高めていかなければならない。
 
スポーツと比べて、たしかに社会(主に会社)では実力というのがずっと把握しづらい。自分の見せ方や他人からの評判、ポジショニングの取り方、タイミング(当然これらも実力の内だが)、さまざまな外的要因が重なり合う。その結果、個人が投入した努力と積み上げた地力が仕事の成果に必ずしも正比例で反映されるわけではない。

しかし、それでも地力の差というのは確実に存在する。その人が積み重ねた経験や知識、人脈などの差が勝負を分ける瞬間が必ずある。あなたの地力が試される時は必ず訪れるのだ。
 
あなたを強くするのはあくまで行動だ。
シュートを入れたければシュートの練習をしなければならない。
 
だから、称賛はご褒美であるが、それに満足して日々の歩み(努力)を止めてはならない。

うちから湧き上がる気力(パッション)に駆られて、思考し行動し続けていきたい。
 

締める兜の緒はないけれど、気が引き締まる一週間のはじまりでした。
 
 
*1 聯合艦隊解散之辞の詳しい解説はウィキペディア参照。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%81%AF%E5%90%88%E8%89%A6%E9%9A%8A%E8%A7%A3%E6%95%A3%E4%B9%8B%E8%BE%9E
 

日露戦争は日本にとっての総力戦であり、各所で苦戦しつつも最終的にはロシア軍に勝利を収めることができた。日本海軍は、ロシア海軍に対抗するために、開戦時に常備艦隊を再編成し、連合艦隊を編成した。連合艦隊は旅順や日本海海戦でロシア艦隊を撃破し、日本の勝利に大きく貢献した。
 
終戦後、戦時編成の連合艦隊を解散し、平時編成に戻すこととなり、解散式が1905年12月21日に行われた。その解散式において連合艦隊司令長官の東郷により「聯合艦隊解散之辞」が読まれることとなった[1]。訓示は東郷の筆であるが、文面の起草は参謀秋山真之と言われている。
 
訓示の骨子は、日露戦争と歴史を紐解きつつ国家における海軍の大事を説き、平時における海軍や海軍軍人のあり方について指し示し、有事に備える心構えの重要さを示している。
 
なお、当時のアメリカ合衆国大統領セオドア・ルーズベルトはこの訓示に感銘を受け、その英訳文を軍の将兵に配布している[2][3]。
 
原文は神奈川県横須賀市の記念艦三笠に所蔵されている。

 
*2 現代語訳は右記サイトから引用 http://meigennooukoku.net/blog-entry-320.html

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