note_織姫彦星ちゅっちゅ_20190707

織姫の願い事

【お題】

織姫が彦星に会う話

【イラスト】

緑川_桃 @Greeeeeenpeach

【10行プロット】

 地上の学校で、そうきが短冊に書く願い事を決めかねている。隣の席にはそうきが好意を寄せている女の子・みずき。外では雨が降っている。

 天界でみんなが書いた短冊の願い事を見つめ、愚痴をこぼす織姫。召使が織姫をなだめる。地上では洗車雨が降っていることを伝え、彦星も織姫に会えるように準備しているのだから……となだめる。それを聞いて、真面目に短冊を読む織姫。

 翌日、織姫が起きて支度をしていると、召使から天の川が反乱を起こしていると聞かされる。天の川が氾濫していると、年に一度、織姫と彦星のために橋を作ってくれるカササギが橋を作ることができない。

 天の川の近くに行くと、遠くに牛車が見える。彦星だ。どうにかして渡ろうとするが、召使に止められる。姿が見えるのに触れられないことを悲しんだ織姫は、涙を流す。

 すると、地上に催涙雨が降る。

 雨が降って来たのを見て、願いを決めかねていた地上のそうきは、織姫と彦星が会えないのでは? と心配をする。父親にそのことを相談すると大丈夫だろうと返答が帰ってくる。それでも心配に思った早期は年に一度のお願いを2人のために使う。

 その短冊が織姫の元へと届いて、その短冊に判を押す。すると天の川の反乱は止み、カササギが橋を作った。喜びをかみしめて、織姫は彦星の元へと行く。2人は年に一度の再開を果たす。お礼に、2人はそうきに『こいごころ』を授ける。

【登場人物】
そうき(9):地上の小学生・男の子
みずき(9):地上の小学生・女の子
織姫(24)
彦星(26)
召使(32):織姫の召使
カササギ::鳥

【本文】

〇 地上・小学校・図書室
  外では雨が降っている。
  七夕の短冊が机に並べられて、大きな笹が
  立っている。
  黒板に七夕イベントの文字。右下には7月6日
  と記されている。
  短冊をじっと見つめる、そうき(9)
  そうきに駆け寄る、みずき(9)
  ドキリとする、そうき。
みずき「そうきくん、願い事決まった?」
そうき「……いや、まだ。みずきさんは?」
みずき「私はねー、次のテストが――」

〇 (夜)天界・織姫の家
  織姫の目の前に一枚の短冊が現れる。
  みずきの声に被って織姫の声。
織姫「次のテストで良い点が取れますように? 
 ふざけんじゃないわよ。自分で頑張りなさい」
  織姫が短冊にデコピンをする。短冊燃え去る。
織姫「大体ね、最近の短冊くだらなすぎ。あと、
 山崎賢人の恋人になれますようにって多すぎな
 のよ。ほら、これも」
  短冊をにデコピンをする。短冊燃え去る。
  部屋の隅に立っている召使。
召使「よいではありませんか」
織姫「良くない! 1年に一度の願い事がそんな
 のでいいわけ? ねぇ?」
召使「(困った顔)人それぞれですし……」
織姫「退屈。もっと面白いこと書きなさいよ」
召使「そんなことおっしゃらないでください」
織姫「だって……」
召使「地上では洗車雨が降っております故」
織姫「(目を輝かせて)ほんとに!? あなた、
 私に会うために――」
召使「パラパラとですけどね」
織姫「おい、頑張りなさいよ彦星!」
  笑みを浮かべながら短冊を手に取る。

〇 (夕)天界・織姫の家
  西日が差す部屋。ゆっくりと目を覚ます、
  喪女のような織姫。
  眼鏡をかけ、時計を見る。
織姫「(目を見開いて)やば、遅刻だわ」
  寝ぐせだらけの髪を結う。
  化けるようにメイクをする。
織姫「よし、完璧」
  誰もが羨む織姫の姿になる。
  部屋のドアに手をかける。大きな足音が近づ
  いてくるのに気づいて後ろへ下がる。
召使「姫様!」
織姫「危なっ。ノックしてから開けなさいな。
 召使としてどうなのよ」
召使「大変なんです」
織姫「そうよ、大変よ。私のこの綺麗な顔に
 傷でもついたら」
召使「天の川が――」
織姫「(目を見開く)……え」
  部屋を飛び出す織姫。後を追う、召使。

〇 天の川・前
  天の川が大氾濫を起こしている。
  天の川に駆け寄る、織姫。
召使「姫様! それ以上近づいては危険です」
織姫「だって! だって!」
  織姫の頭上をカササギたちが飛んでいる。
カササギA「織姫様」
カササギB「織姫様」
カササギC「これでは」
カササギD「橋」
カササギE「作れなーい」
織姫「(見上げながら)どうしても?!」
  飛び去る、カササギたち。
  織姫、崩れ落ちる。
召使「今年は地上の願い事が多いようで、
 川の堤防が……。とにかく、安全なところへ」
  召使を振りほどこうとする、織姫。
織姫「嫌よ。年に一度なのよ!」
  天の川の反対岸に牛車が見える。
織姫「(指さして)あそこに、愛する人が見えて
 るのに会うなというの?」
召使「しかし、この状態でカササギに橋を造らせ
 ては……」
  召使を泣きそうな目でじっと見つめる織姫。
召使「……カササギが死んでしまいます」
  首を横に振りながら、肩を落とす織姫。
織姫「嫌よ。そんなの嫌」
召使「でしたら……」
織姫「どうして! どうして、みんなの願いは
 叶えられるのに、私の願いは誰も叶えてはくれ
 ないの?!」
  織姫、一粒の涙を落とす。

〇 (夜)地上・学校・図書室・窓際
  短冊をじっと見つめるそうき。
みずき「まだ学校にいるんだ」
  みずきに驚く、そうき。
  まっすぐ、そうきを見つめるみずきにそう
  き、目をそらす。
そうき「……今日は、先生と天体観測をする予定
 なんだ」
みずき「ふーん、それ。私も行っていい?」
そうき「え、あ、うん。も、もちろんだよ」
みずき「あー!」
  目の前にいたみずきがいつの間にか、小さな
  本棚に登り、外を見てる。
そうき「危ないよ。そんなところに登ったら」
みずき「だって、雨! 織姫と彦星会えるのかな」
そうき「会えるよ。雲の上は雨は降らないから」
みずき「そっかー」
  不安そうに空を見上げるみずき。
  みずきを見つめるそうき。

〇 天界・天の川・前
  織姫、召使の手を振り切って天の川へ入る。
召使「姫様!」
  召使、織姫を必死に止める。天の川の向こう
  で牛車も川に入ったのが見える。
  唇をかみしめる、織姫。
織姫「ちゃんとまた1年仕事をするから、1年間
 会えなくても我慢するから! だから……
 だから、今日だけは会わせてよ!」
  申し訳なさそうにする、召使。
  何かの輝きを織姫のほうに感じ、見上げる。
  織姫の前に、一つの短冊が現れる。
  短冊の『織姫と彦星が会えますように』に
  目を見開く織姫。
織姫「1年に一度の願い事……なのに」
召使「姫様! 短冊に早く承諾を!!」
  少し考えて、短冊にキスをする織姫。
  キラキラと消える。
  天の川にあふれた願いごと達が、織姫と彦星
  の間をあける。
  織姫、彦星共に駆けて近寄る。
織姫「あなた! あなた!!」
  固く抱き合う。
彦星「よかった……無茶しやがって」
織姫「会いたかったの、あなたもでしょう」
  織姫にキスをしようとする彦星。
  彦星の唇に人差し指を立てる、織姫。
織姫「まって」
  望遠鏡を取り出し、地上を見る織姫。
  目線の先に、笹の短冊を見上げるそうき。
  短冊には『織姫と彦星が会えますように』
  の文字。
  彦星にも望遠鏡を貸し、見せる織姫。
織姫「お礼が先よ」
  自分の手にキスを落とし、息を吹きかけ、
  そうきの元へ届ける織姫。
彦星「なにを叶えたの?」
  織姫、彦星の首に手を周りキスをする。

〇 (夜)地上・学校・屋上
  望遠鏡を覗く先生。ブルーシートの上で寝る
  そうきとみずき
  そうきとみずき、寝ながら手を繋いでいる。
織姫off「恋心」

               (おわり)

【あとがき】

 『こんにちは、小柳菜ノ花です。七夕ですね。

 皆さんはなにかお願い事されましたか? 私は一つに絞ることができなくて、4つお願い事を書きました。叶えるのが大変だろうなと思い、物語にも天の川の氾濫として盛り込んでみました。

 人のお願いごとって面白いもので、財布が戻ってきますように。定時で帰れますように。部署を移動できますように。など、神に祈るべきではないものも多かったです。各言う私も人の事を言えた身ではないのですが……

 物語に出てくる、前日と当日の雨。あれには名前があるようで、

 前日に降る雨は『洗車雨』と言って、彦星が織姫に会うために牛車を洗っている雨。

 当日に降る雨は『催涙雨』と言って、彦星と会えなかった織姫が流した涙の雨。

 と言われているようです。

 昨日は雨がぽつぽつとだけ降っていたので、イラスト担当の桃と

「ちゃんと牛車洗えよ、彦星ぃ」

 何て言いながら作業をしていました。少し、知識が加わるだけで、イベントって2倍も3倍も面白く感じられるものですね。

 長くなりましたが、読んでいただきありがとうございました。

 今夜は雨が降りませんように……』


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