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劇中歌として

✳️以下の記事は、緊急事態宣言が発令され、職場が無期限で休業となった四月に綴りました。現状と少しタイムラグがある内容です。今は職場復帰しています✴️


自粛生活は続いているものの、ずっと篭っていてもよくないので外へ出て運動するようにしている。いつもの広場に着いたら準備体操をして、イヤホンを装着。今日はアルバム「A night at the Opera」を聴いた

最後から二番目に収録されているのは、フレディが作詞作曲したBohemian Rhapsody。アルバムを通してこの歌を聴くと、改めて異質なものを感じる

異質さの正体はなにか。何度聴いても私にはこの歌が、フレディ自身が長く生きられないことを予期している内容に聴こえるのだ。遺書めいている。後に彼が迎えた結末を知っているから、そう思ってしまうのかもしれない

どこかで聞いた話だが、名曲とは、かなしみが強い時代に誕生しやすいそうだ。そうだとすれば名曲を産む当事者もまた、かなしみの渦で救いを求め、もがいているはずだ。フレディは自ら背負った十字架の重さを創作意欲に傾け、楽曲へと昇華させたのではないだろうか

そんなことを、閑散とした広場で走ったり休んだりしながら考えていた。フレディはインタビューが苦手で、特にBohemia Rhapsodyの歌詞については沈黙を貫いた。アルバムA night at the Operaのなかでもこの曲が異彩を放っているのは、そんな謎めきもあるからだと思う

さて。自粛生活を利用して、私はQueenのアルバムを集中的に聴いている。運動中に聴くには不向きにも思えたBohemian Rhapsodyの歌が、息切れしながら走る私をなぜか鼓舞する

「名曲とは、かなしみが強い時代に誕生する」

世界中にかなしみが充満している今、新たな名曲は誕生するのだろうか。もし今、フレディが健在だったら.....

外出が制限されているため、想像力だけがたくましくなってしまう。戦後初となる緊急事態宣言が発令され、誰にとってもそうであるように、私もまた、先行き不透明な状況にいる。私は今、 音楽になにを求めているのだろう。なぜ今、まるで数式の答えを求めるようにQueenを聴いているのだろう

希望とか支えとか、そういうものではない。どんな表現が適切かわからないけれど、何年か経って今を振り返ったとき、私はきっと、Queenの音楽とともに2020年を思い出すであろう

Stay Homeによって静まり返った景色を彩った、劇中歌として。

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