春が来た(#旅する日本語「催花雨」)

「催花雨」は「菜花雨」とも書き、菜の花が咲く春に、植物の開花を促すように降る雨のことだそうだ。 

私が、福岡県飯塚市に暮らしていた小学生の頃のこと。通っていた学校は子供の足で1時間近くかかり、通学路の途中には、車が通れない細くて長い道があった。その道の周りは野原のようになっていて、春にはつくしが生えたり、タンポポや菜の花が咲くのどかな道であった。

小学4~5年生の頃だろうか、春の新学期になり、少しポカポカした陽気のなかその道を登校していた。

すると、今思えば催花雨の後だったのだろう、周りの野原から草花や土の匂いが私に「もあっ」と迫ってきたのだ。それは、命が萌え出る時の匂いとでもいったらいいのだろうか、言い過ぎかもしれないが、息がむせぶような感じがした。

そして子供心に、「春が来たなあ」と感じたことを強く覚えている。

私にとって、「自然」と心が触れ合った貴重な思い出のひとつである。

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